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「AIによる自動字幕」の誤字脱字を最速でチェックする校正ワークフロー

「AIで自動生成した字幕、公開前にチェックしたいけど時間がかかりすぎる…」「どうやって効率よく誤字脱字を見つければいいの?」そんな悩みを抱える動画クリエイターやYouTuber、企業の動画担当者は少なくありません。

VrewやNotta、YouTube Studioなど、AI字幕生成ツールの精度は年々向上しています。しかし2025年現在でも、同音異義語の誤変換、専門用語の認識ミス、句読点の位置ずれなど、人間のチェックが必要な場面は依然として存在します。

本記事では、AI自動字幕の誤字脱字を「最速で」チェックするための実践的なワークフローを解説します。AIが苦手とするポイント、時短に役立つツールの組み合わせ、見落としを防ぐ最終確認の方法まで、すぐに実践できる内容をお届けします。

AI自動字幕の仕組みと誤認識が発生する理由

AI音声認識の基本的な仕組み

AI自動字幕ツールは、音声認識技術と自然言語処理を組み合わせて動作しています。音声データを音素に分解し、言語モデルを使って文脈から最も確率の高い単語を選択することで、自然な文章を生成しています。

近年のディープラーニング技術の進化により、フォーマルな会議や明瞭な発話であれば認識率90%以上を達成するツールも珍しくありません。しかし、日本語特有の課題により、完璧な精度を実現することは依然として困難です。

日本語の音声認識が難しい理由

日本語は世界の言語の中でも特に音声認識が難しいとされています。

第一に、同音異義語の多さです。「はし」が「橋」「端」「箸」のいずれにもなりえますし、「こうしょう」は「交渉」「考証」「高尚」など複数の漢字表記が存在します。話題が急に変わったり、複数の意味で解釈できる場面では誤変換が起きやすくなります。

第二に、分かち書きがないことです。英語など多くの言語では単語間にスペースが入りますが、日本語は単語が連続して書かれます。どこで単語を区切るかの判断が難しく、誤った分割が誤認識につながります。

第三に、方言やアクセントの多様性です。標準語以外の発音パターンは学習データが少なく、地方のアクセントや個人の発話の癖によって認識精度が下がることがあります。

AI字幕でよくある誤認識パターン

AI自動字幕で頻繁に発生する誤認識には、いくつかの典型的なパターンがあります。

同音異義語の誤変換は最も一般的な問題です。「会う」と「合う」、「買う」と「飼う」、「効果」と「降下」など、文脈によって判断が分かれる単語で誤りが発生しやすくなります。

専門用語や固有名詞の誤認識も頻発します。人名、地名、商品名、技術用語など、AIの学習データに含まれていない単語は正確に認識されにくい傾向があります。

句読点の位置ずれも見逃せません。AIは話者の息継ぎを句読点として認識する傾向がありますが、必ずしも意味の切れ目と一致するとは限りません。

フィラーワード(「えー」「あのー」など)の処理も課題です。言い淀みがそのままテキスト化されると、文章が読みにくくなります。

複数人の同時発話も誤認識の原因となります。話者が重なった部分では、文章の区切りが不適切になったり、発言が混ざったりすることがあります。

校正前の準備:効率を左右する事前設定

高精度な字幕生成のための録音・撮影のコツ

校正作業を最小限に抑えるためには、高精度な字幕が生成されるよう録音・撮影段階で工夫することが重要です。

録音環境の整備が最も効果的です。静かな環境で、話者とマイクの距離を近づけて録音することで、AIの認識精度は大幅に向上します。指向性マイクの使用も有効です。

発話の質も重要です。はっきりと、適度なスピードで話すことで認識精度が上がります。セミナーやプレゼンテーションなど、話者が意識して明瞭に話している音声は、カジュアルな会話よりも高精度で文字起こしされます。

AIツールの事前設定

多くのAI字幕ツールには、精度を向上させるための設定項目があります。

発話言語の正確な設定は必須です。日本語の動画なのに英語で設定されていると、全く異なる内容が出力されてしまいます。

単語辞書(カスタム辞書)への登録も効果的です。NottaやVrewなど多くのツールでは、よく使う専門用語や固有名詞を事前に登録することで認識精度を高められます。社内用語、商品名、人名など、一般的でない単語を辞書登録しておくことで校正作業が大幅に軽減されます。

字幕ファイル形式の理解

AI字幕ツールから出力されるファイル形式を理解しておくと、校正作業がスムーズになります。

SRT(SubRip Text)形式は最も一般的な字幕ファイル形式です。シンプルなテキスト形式で、メモ帳などのテキストエディタでも編集可能です。VTT(WebVTT)形式はWeb用に設計された字幕形式で、HTML5との親和性が高いです。

テキストエディタでSRTやVTTファイルを開き、検索・置換機能を使って誤字を一括修正する方法は、大量の字幕を効率よく校正する際に有効です。

最速校正ワークフロー:5つのステップ

ステップ1:全体の流れを把握する「通し確認」

いきなり細かいチェックに入る前に、まず動画を通して再生しながら字幕全体をざっと確認します。動画を1.25〜1.5倍速で再生しながら字幕を目で追い、「意味が通じない箇所」「明らかにおかしい箇所」にマークをつけていきます。

VrewやSubtitle Editなど多くの字幕編集ソフトでは、字幕リスト上でブックマークやハイライトをつける機能があります。この段階では修正せず、問題箇所の特定に集中することがポイントです。

通し確認により、全体のエラー傾向も把握できます。特定の専門用語が繰り返し誤認識されているなどのパターンが見えれば、後の工程で効率的に対処できます。

ステップ2:優先度の高い箇所から攻める「重点チェック」

通し確認が終わったら、誤りが発生しやすい箇所から重点的にチェックしていきます。すべての字幕を均等にチェックするのではなく、優先度をつけて効率化するのがポイントです。

最優先でチェックすべき箇所は以下の通りです。固有名詞(人名・地名・会社名・商品名)は誤認識の影響が大きいため最優先で確認します。数字・日時・金額も重要で、「30日」が「3日」になるなど数字の誤りは深刻な誤解を招きます。専門用語・業界用語は一般的な単語に誤変換されやすいため要注意です。否定表現も見落とせません。「できない」が「できる」になるなど、意味が正反対になる誤りは致命的です。

ステップ3:AIツールを活用した「自動校正」

重点チェックと並行して、AIの文章校正ツールを活用することで効率が上がります。

ChatGPTやClaudeなどの汎用AIに字幕テキストを貼り付け、「誤字脱字をチェックしてください」と依頼する方法があります。効果的なプロンプトの例として「以下は動画の字幕テキストです。誤字脱字、同音異義語の誤変換、不自然な表現を指摘してください。修正が必要な箇所のみ、修正前と修正後を対比して示してください」などが有効です。

専用のAI校正ツールも活用できます。Shodo、PRUV、User Local 文章校正AI、Ennoなどは、誤字脱字や表記ゆれ、文法ミスを検出する機能を備えています。

ただしAIによるチェックも完璧ではありません。最終判断は人間が行うことが重要です。

ステップ4:検索・置換による「一括修正」

同じ誤りが繰り返し出現している場合は、検索・置換機能を使った一括修正が効率的です。

VrewやSubtitle Editでは字幕全体を対象とした検索・置換が可能です。SRTファイルをテキストエディタで直接開いて編集する方法もあります。Visual Studio Codeなどを使えば、正規表現を使った高度な置換も可能です。

よくある一括修正のパターンとして、特定の固有名詞の誤変換を一括修正する、フィラーワードを一括削除する、表記ゆれを統一する、などがあります。一括置換を行う際は、意図しない箇所まで置換されないよう、プレビューで確認しながら進めましょう。

ステップ5:最終確認「音声との照合」

校正作業の最終段階では、字幕と音声を照合して最終確認を行います。重要なシーン、結論部分、CTA(行動喚起)など、特に重要な箇所は音声を再生しながら字幕を確認します。

タイムコード(字幕の表示タイミング)が音声とずれていないかも確認します。字幕が早すぎたり遅すぎたりすると、視聴者にとって見づらくなります。

主要なAI字幕ツール別の校正のコツ

Vrewでの校正ワークフロー

VrewはAI字幕生成と動画編集を一体化したツールで、無料版でも自動字幕生成と編集が可能です。字幕リストと動画プレビューが連動しており、字幕をクリックすると該当箇所の動画が再生されるため、音声と照合しながらの校正がスムーズに行えます。

効率的な校正手順は、動画を読み込んで自動字幕を生成し、字幕リスト上で誤りを目視チェック、テキストをクリックして直接修正、スペースキーで再生・停止しながら音声を確認して修正を進める、という流れです。表記ゆれを防ぐために同じ語句を検索しながら順番に修正していくことで、全体の統一感を保ちやすくなります。

Nottaでの校正ワークフロー

Nottaは日本語に強い文字起こしツールとして評価が高く、話者識別機能やリアルタイム文字起こし機能も備えています。文字起こし結果と音声データが紐付けられており、テキスト内の単語をクリックすると該当箇所の音声を再生できるため、不明瞭な箇所の確認が容易です。

校正のコツとしては、単語辞書に専門用語や固有名詞を登録しておくことで認識精度を事前に高めておくことが有効です。文字起こし後は、タイムスタンプ付きのテキストをエクスポートし、外部の校正ツールと併用することで効率を上げられます。

YouTube Studioでの校正ワークフロー

YouTube Studioには無料の自動字幕生成機能が内蔵されており、動画をアップロードするだけで自動的に字幕が生成されます。ただし精度は他の専用ツールと比較するとやや控えめな傾向があります。

YouTube Studioでの校正は、動画の詳細画面から「字幕」タブを開き、自動生成された字幕を編集します。より高精度な字幕が必要な場合は、VrewやNottaなど外部ツールで生成したSRTファイルをアップロードして使用する方法も有効です。

よくある誤認識パターンと対処法

同音異義語の誤変換への対処

日本語で最も頻発する誤認識が同音異義語の誤変換です。「以上」と「異常」、「今日」と「教」と「強」、「効果」と「降下」と「校歌」など、文脈を確認して適切な漢字を選びます。

対処法として有効なのは、動画のテーマに関連する同音異義語のリストを事前に作成しておくことです。校正時にそのリストの単語を検索し、正しい漢字が使われているか確認することで見落としを防げます。

専門用語・固有名詞の対処

専門用語や固有名詞は、AIの学習データに含まれていないことが多く、一般的な単語に誤変換されやすい傾向があります。

事前対策としては、AIツールの辞書機能に専門用語を登録しておくことが効果的です。動画で頻繁に登場する人名、社名、製品名、技術用語などを文字起こし前に登録しておきましょう。校正時は専門用語リストを手元に用意し、一括検索でそれらの単語が正しく表記されているか確認します。

句読点・改行の調整

AIが生成した字幕は、句読点の位置や1行あたりの文字数が最適でないことがあります。読点は息継ぎの位置ではなく意味の切れ目に打ち、長い文は適切な位置で分割します。

字幕の文字数は、一般的に1行あたり20〜25文字程度が読みやすいとされています。2行以上になる場合は、意味のまとまりで改行位置を調整します。

フィラーワードの処理

「えー」「あのー」「まあ」などのフィラーワードを残すか削除するかは、動画の目的によって判断します。一般的な動画字幕では削除して読みやすくすることが多いです。削除する場合は検索・置換機能で一括削除できますが、「まあ」のように文中で意味を持つ場合もあるため、前後の文脈を確認しながら処理しましょう。

チーム作業での校正ワークフロー

役割分担の考え方

大量の動画を扱う場合や複数人で校正作業を行う場合は、効率的な役割分担が重要です。

一次校正担当はAI生成字幕の通し確認と明らかな誤りの修正を担当します。専門校正担当は動画のテーマに精通した人が担当し、専門用語や固有名詞の確認、内容面での整合性チェックを行います。最終確認担当は修正済みの字幕と音声を照合し、見落としや修正ミスがないか最終チェックを行います。

スタイルガイドの作成

チームで一貫した品質の字幕を作成するためには、スタイルガイド(表記ルール集)を作成しておくことが有効です。数字の表記ルール、英単語の表記ルール、敬称の扱い、句読点のルール、1行あたりの最大文字数、よく使う専門用語の正式表記などを含めます。スタイルガイドを共有することで、担当者が変わっても一貫した品質を維持できます。

校正効率化に役立つツール

AI校正ツール

Shodo(ショドー)は日本語に特化したAI校正ツールで、文脈を踏まえた校正が特徴です。無料で使える校正機能があり、Word アドインやブラウザ拡張機能も提供されています。

User Local 文章校正AIは完全無料で利用できるAI校正ツールです。文章を入力して「校正」ボタンをクリックするだけで誤字脱字や不自然な表現を指摘してくれます。

PRUVは30年以上の編集・校閲経験に基づいて開発されたAI校正ツールで、複数の生成AIと独自ルールエンジンを組み合わせて高精度な校正を実現しています。

字幕編集ソフト

Subtitle Editはオープンソースの高機能字幕編集ソフトです。SRT、VTT、ASSなど多数のフォーマットに対応し、検索・置換、タイムコード調整など豊富な編集機能を備えています。無料で利用可能です。

Vrewは字幕の校正だけでなく、動画のカット編集やデザイン調整も行えるため、字幕付き動画の制作を一貫して行いたい場合に便利です。

テキストエディタの活用

SRTやVTTファイルはテキスト形式のため、テキストエディタでの編集も可能です。Visual Studio Code(VS Code)は強力な検索・置換機能や正規表現対応により、字幕ファイルの一括編集に適しています。フィラーワードの一括削除や全角数字の半角への統一などが効率的に行えます。

品質管理とチェックリスト

公開前の最終チェックリスト

字幕付き動画を公開する前に、以下の項目で最終確認を行いましょう。

基本チェック:誤字脱字がないか、同音異義語が正しく変換されているか、固有名詞が正確か、数字・日時・金額に誤りがないか、否定表現が正しいか。

読みやすさチェック:句読点の位置が適切か、1行あたりの文字数が適切か、フィラーワードが処理されているか、文の区切りが自然か。

タイミングチェック:字幕の表示タイミングが音声と合っているか、字幕の表示時間が短すぎないか、場面転換で字幕が途切れていないか。

整合性チェック:表記ゆれがないか、敬称の扱いが統一されているか、文体が統一されているか。

品質基準の設定

動画の用途によって求められる字幕の品質基準は異なります。商用動画や企業の公式コンテンツでは高い品質基準が求められ、誤字脱字ゼロを目指してダブルチェック体制を敷くことが望ましいです。教育コンテンツでは正確性が特に重要で、数字や専門用語の誤りは学習者に誤った知識を与えてしまいます。エンターテインメント系の動画では、ある程度の許容範囲を設けて校正作業の効率化を優先する判断もありえます。

今後の展望:AI字幕技術の進化

AI音声認識技術は急速に進化しており、今後さらなる精度向上が期待されています。大規模言語モデル(LLM)との統合により文脈理解能力が向上し、同音異義語の判別精度が上がることが見込まれます。また、話者の意図を汲み取った自然な表現への変換も可能になりつつあります。

AI校正ツールの進化により、人間の校正作業はより高度な判断に集中できるようになると考えられます。単純な誤字脱字の検出はAIに任せ、人間は文脈を踏まえた判断やクリエイティブな表現の調整に注力するという役割分担が進むでしょう。ただし完全な自動化には限界があり、専門性の高い内容の校正やブランドのトーン&マナーに合わせた調整など、人間ならではの判断が必要な領域は残り続けます。AIと人間が協業することで、効率と品質の両立を図ることが重要です。

まとめ

AI自動字幕の誤字脱字を最速でチェックするためのポイントをおさらいします。

事前準備が効率を左右します。高品質な録音、言語設定の確認、辞書への専門用語登録など、字幕生成前の準備で校正作業を大幅に軽減できます。

優先度をつけて校正することが時短のカギです。固有名詞、数字、専門用語、否定表現など、誤りの影響が大きい箇所から重点的にチェックすることで、限られた時間で効果的な校正が行えます。

ツールを組み合わせて活用しましょう。AI校正ツール、字幕編集ソフト、検索・置換機能を組み合わせることで、作業効率が大幅に向上します。

AI字幕の精度は年々向上していますが、完璧ではありません。人間によるチェックは引き続き必要であり、効率的な校正ワークフローを確立することが、高品質な字幕コンテンツを継続的に制作するための鍵となります。

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