アパレルEC市場は、スマートフォンの普及とSNSの発展により急速に成長を続けています。かつては「試着できないから不安」と敬遠されていたオンラインでの服購入も、今や当たり前の消費行動となりました。
しかし、市場の成長とともに競争も激化しています。大手アパレルブランドのEC強化、ZOZOTOWNなどのファッションモールの存在感、そしてD2Cブランドの台頭——この競争環境の中で自社ECの売上を伸ばすためには、戦略的な広告運用が不可欠です。
本記事では、アパレルECがWeb広告を活用して売上を最大化するための具体的な戦略と実践ノウハウを、ファッション業界特有の特性を踏まえて詳しく解説していきます。
アパレルEC市場の現状と広告活用の重要性
拡大するアパレルEC市場
アパレル業界のEC化率は年々上昇しており、特に若年層を中心にオンラインでの購入が一般化しています。InstagramやTikTokで気になるアイテムを見つけ、そのまま購入するという消費行動が定着しました。
また、コロナ禍を経て、実店舗を持つブランドもEC強化に本腰を入れるようになり、オンラインとオフラインの垣根はますます低くなっています。
多様化するアパレルECのプレイヤー
アパレルEC市場には、様々なプレイヤーが存在します。
【ファッションモール】
- ZOZOTOWN、楽天ファッション、マガシーク
- 圧倒的な集客力と認知度
- 出店料・手数料がかかる
【ブランド直営EC】
- UNIQLO、GU、H&M、ZARAなど大手ブランド
- 自社ECとアプリを強化
- ブランド体験の一貫性を重視
【D2Cブランド】
- 中間業者を介さず直接販売
- SNSを活用したブランディング
- 独自の世界観とコミュニティ形成
【セレクトショップEC】
- 複数ブランドをキュレーション
- 独自のセレクト眼が価値
- 実店舗との連携
【古着・リユースEC】
- サステナビリティ志向の高まりで成長
- 一点モノの希少性
- 価格の手頃さ
なぜアパレルECに広告が重要なのか
アパレルEC市場は競争が激しく、「良い商品を作れば売れる」時代は終わりました。消費者に見つけてもらい、興味を持ってもらい、購入してもらうためには、積極的な広告・マーケティング活動が不可欠です。
特にD2Cブランドやセレクトショップなど、大手ブランドほどの認知度がない事業者にとって、Web広告は効率的に新規顧客を獲得する強力なツールとなります。
アパレルECの広告運用における特有の課題

課題1:「試着できない」という最大の障壁
アパレルECにおける最大の課題は、「試着できない」ことです。サイズが合うか、自分に似合うか、素材感はどうか——実店舗では確認できることが、オンラインではわかりません。
対策:
- 詳細なサイズ表記:着丈、身幅、肩幅、袖丈など具体的な数値
- モデルの体型情報:「モデル身長170cm、着用サイズM」
- 複数サイズの着用画像:S/M/Lそれぞれの着用イメージ
- 素材感がわかる写真:生地のアップ、透け感、シワ感
- 動画での着用イメージ:動いたときのシルエット、揺れ感
- サイズレコメンド機能:AIによるサイズ提案
- 返品・交換保証:「サイズが合わなければ無料交換」
広告でもこれらの「安心感」を訴求することが重要です。
課題2:季節性・トレンドの変化への対応
ファッションは季節性が強く、トレンドの変化も早い業界です。
季節の商品サイクル:
- 春物(2月〜4月)
- 夏物(5月〜7月)
- 秋物(8月〜10月)
- 冬物(11月〜1月)
セールのサイクル:
- 夏のセール(6月下旬〜8月)
- 冬のセール(12月下旬〜2月)
- ブラックフライデー、サイバーマンデー(11月)
広告も、この季節・トレンドサイクルに合わせて柔軟に運用する必要があります。新作の立ち上げ時期には認知拡大を重視し、セール時期には在庫消化を意識した訴求に切り替えるなど、メリハリのある運用が求められます。
課題3:返品率の高さ
アパレルECは、他のEC商材と比較して返品率が高い傾向があります。サイズが合わない、イメージと違った、といった理由での返品が発生します。
広告で過度に期待を煽りすぎると返品率が上昇し、結果的に利益を圧迫します。商品の魅力を伝えつつも、正確な情報提供を心がけることが重要です。
課題4:クリエイティブの消耗が早い
ファッション広告は、同じクリエイティブを長期間使い続けると効果が低下しやすい傾向があります。トレンドの変化、季節の変化、そしてユーザーの「見飽きた」感覚により、クリエイティブは常にリフレッシュが必要です。
対策:
- 複数パターンのクリエイティブを用意
- 新作投入に合わせたクリエイティブ更新
- 季節・トレンドに合わせたビジュアル変更
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用
- ABテストによる継続的な検証
課題5:ブランドの世界観の伝達
ファッションは「モノ」だけでなく「世界観」「ライフスタイル」を売る側面があります。広告においても、単に商品を見せるだけでなく、ブランドの世界観を伝えることが重要です。
アパレル・古着屋のホームページ制作で解説している「世界観を売る」考え方は、広告クリエイティブにも当てはまります。
Instagram広告の活用戦略
アパレルECにおいて、Instagram広告は最も重要な広告チャネルです。ビジュアル中心のプラットフォームであり、ファッションとの相性が抜群です。
Instagram広告がアパレルに効果的な理由
- ビジュアル訴求との相性:ファッションの魅力は写真・動画で直接伝わる
- ファッション感度の高いユーザー層:トレンドに敏感なユーザーが多い
- ショッピング機能の充実:投稿から直接商品ページへ誘導可能
- 発見タブでの露出:新しいブランドとの出会いの場
- ハッシュタグ文化:「#ootd」「#今日のコーデ」などで情報収集
Instagram広告のクリエイティブ戦略
SNS広告のクリエイティブ制作において、アパレルブランドが押さえるべきポイントを解説します。
【フィード広告】
- 推奨サイズ:1080×1080px(正方形)または1080×1350px(縦長)
- モデル着用のスタイリング写真が効果的
- 複数アイテムのコーディネート提案
- ブランドの世界観を感じさせる背景・ロケーション
- 自然光を活かした明るいトーン
【ストーリーズ広告】
- 推奨サイズ:1080×1920px(9:16の縦長フルスクリーン)
- 最初の3秒で注意を引く
- 着用動画、コーディネート動画
- 「NEW ARRIVAL」「SALE」などの告知に効果的
- スワイプアップで商品ページへ直接誘導
【リール広告】
- 推奨時間:15〜30秒
- トレンドの音楽を活用
- 着回しコーデ、1週間コーデ
- 開封動画(購入品紹介)
- ビフォーアフター的な変身動画
- 舞台裏、撮影風景
【コレクション広告】
- 複数商品をまとめて表示
- カタログ形式でブラウジング体験
- 「春の新作コレクション」「セールアイテム」など
【カルーセル広告】
- 1つのアイテムを複数アングルで紹介
- コーディネートの組み合わせ提案
- カラーバリエーションの紹介
Meta広告のターゲティング設定
Meta広告のターゲティングを最適化することで、購買意欲の高いユーザーに効率的にリーチできます。
【基本ターゲティング】
- 年齢:ブランドのターゲット層に合わせて設定
- 性別:商品カテゴリに応じて
- 地域:配送可能エリア
【興味関心ターゲティング】
- ファッション、アパレル、洋服
- 特定のスタイル(ストリート、モード、ナチュラル、韓国系など)
- ファッション雑誌、ファッションインフルエンサー
- 競合ブランド
- オンラインショッピング
【行動ターゲティング】
- オンラインショッピング利用者
- ファッション・アパレル購入者
【カスタムオーディエンス】
- サイト訪問者(リマーケティング)
- 購入者リスト
- Instagramアカウントにエンゲージしたユーザー
- 動画視聴者
【類似オーディエンス】
- 購入者に似たユーザー
- 高LTV顧客に似たユーザー
- カート追加者に似たユーザー
Instagramショッピング機能との連携
Instagramショッピング機能を活用することで、投稿や広告から直接商品ページへ誘導できます。
- 商品タグ付きの投稿を広告として配信
- ショップタブでの露出
- チェックアウト機能(対応している場合)
TikTok広告の活用
TikTok広告は、Z世代を中心とした若年層へのリーチに非常に効果的です。「TikTok売れ」という言葉が生まれるほど、TikTokは購買行動に大きな影響を与えています。
TikTok広告の特徴
- 若年層への圧倒的リーチ:10代〜20代の利用率が非常に高い
- バイラル効果:良いコンテンツは爆発的に拡散される可能性
- 「リアル」が求められる:作り込みすぎない自然体のコンテンツ
- トレンドの発信地:TikTokから新しいファッショントレンドが生まれることも
TikTok広告のクリエイティブポイント
- 最初の1〜2秒で惹きつける:スワイプされる前に注意を引く
- 「広告っぽさ」を排除:TikTokネイティブな動画フォーマット
- トレンドを取り入れる:流行りの音楽、チャレンジ形式
- 縦型動画(9:16):フルスクリーンで没入感を演出
- テンポの良い編集:飽きさせないカット割り
- 字幕の活用:音なしでも内容が伝わるように
効果的なTikTokコンテンツ例
- 「購入品紹介」「HAUL動画」
- 「1週間コーデ」「着回しコーデ」
- 「プチプラで作る〇〇コーデ」
- 「身長別の着こなし比較」
- 「ビフォーアフター変身」
- 「この服、〇〇円なんです」
- 「正直レビュー」
TikTok広告とインフルエンサー
TikTokでは、インフルエンサー(TikToker)を起用した広告が高い効果を発揮します。
- Spark Ads:インフルエンサーの投稿を広告として配信
- ブランドハッシュタグチャレンジ:参加型のキャンペーン
- ブランデッドエフェクト:オリジナルエフェクトの作成
Google広告の活用戦略
Google広告は、「今まさに購入を検討している」ユーザーにアプローチできる重要なチャネルです。
Googleショッピング広告の活用
アパレルECでは、Googleショッピング広告が非常に効果的です。商品画像と価格が検索結果に表示されるため、視覚的な訴求ができます。
商品フィードの最適化ポイント:
- タイトル:ブランド名、商品名、カラー、サイズ、特徴を含める
- 画像:白背景の商品画像、または着用画像
- 説明文:素材、サイズ感、着こなしのポイントを記載
- カテゴリ:正確なGoogle商品カテゴリを設定
- カラー・サイズ:バリエーションを正確に登録
- 在庫:リアルタイムの在庫情報を反映
ショッピング広告の運用ポイント:
- 売れ筋商品への予算集中
- 季節外れ商品の除外
- セール商品の価格更新
- 新作商品の優先配信
検索広告の設定
検索広告では、以下のようなキーワード戦略が効果的です。
【ブランド名キーワード】
- 自社ブランド名(指名検索)
- 取り扱いブランド名
【商品カテゴリキーワード】
- 「レディース ワンピース 通販」「メンズ ジャケット」
- 「ニット セーター おすすめ」「デニム パンツ」
【スタイル・トレンドキーワード】
- 「韓国ファッション 通販」「ストリート系 服」
- 「ミニマル ファッション」「古着系 コーデ」
【シーン・用途キーワード】
- 「結婚式 ドレス」「オフィスカジュアル」
- 「デート服 おすすめ」「通勤 コーデ」
【季節キーワード】
- 「春コーデ」「夏服 レディース」
- 「秋物 新作」「冬 アウター」
除外キーワードの設定
除外キーワードを設定し、無駄なクリックを防ぎましょう。
- 作り方・DIY関連:「服 作り方」「ワンピース 型紙」
- 求人関連:「アパレル 求人」「ファッション バイト」
- 店舗検索関連:「〇〇市 洋服屋」(EC専業の場合)
- 無料・格安関連:「無料」「タダ」(ブランドイメージに合わない場合)
- 対応外サイズ:「大きいサイズ」「小さいサイズ」(取り扱いがない場合)
リマーケティング広告の活用
リマーケティング広告は、アパレルECにおいて非常に重要です。ファッションアイテムは衝動買いだけでなく、比較検討して購入するケースも多いためです。
効果的なリマーケティングシナリオ:
シナリオ1:商品詳細ページ閲覧者
閲覧した商品の画像を使った動的リマーケティングで追跡。「まだ気になっていますか?」「残り在庫わずか」
シナリオ2:カート放棄者
カートに入れたが購入しなかったユーザーに、「お買い忘れはありませんか?」「今なら送料無料」
シナリオ3:カテゴリページ閲覧者
特定のカテゴリ(ワンピース、ジャケットなど)を閲覧したユーザーに、そのカテゴリの商品を訴求。
シナリオ4:過去購入者
過去に購入した顧客に、新作や関連アイテムを提案。「新作入荷しました」「このアイテムに合うコーデ」
シナリオ5:セール告知
サイト訪問者全般に、セール開始の告知。「SUMMER SALE 最大50%OFF」
P-MAXキャンペーンの活用
P-MAXキャンペーンは、検索、ディスプレイ、YouTube、Discover、Gmailなど複数の配信面に自動で広告を出稿できます。
アパレルECでは、以下のような活用が効果的です。
- 商品フィードと連携した自動クリエイティブ生成
- 新規顧客の開拓
- 季節の変わり目の認知拡大
その他のSNS広告

LINE広告の活用
LINE広告は、幅広い年齢層にリーチでき、特に30代以上の女性層への訴求に効果的です。
LINE広告の友だち追加広告を活用し、LINE公式アカウントの友だちを増やすことで、以下のようなコミュニケーションが可能になります。
- 新作入荷のお知らせ
- セール・キャンペーン情報
- 限定クーポンの配信
- コーディネート提案
- 再入荷通知
X(Twitter)広告の活用
X(Twitter)広告は、拡散力を活かしたキャンペーンに効果的です。
- セール情報の拡散
- 新作発表のティザー
- コラボアイテムの告知
- リポストキャンペーン
YouTube広告の活用
YouTube広告は、ブランドの世界観や商品の詳細を動画で伝えるのに適しています。
効果的なYouTube広告コンテンツ:
- ルックブック、コレクション動画
- 着こなし、コーディネート提案
- ブランドストーリー、舞台裏
- 素材・製法のこだわり紹介
動画広告の制作についても参考にしてください。
インフルエンサーマーケティング
アパレル業界において、インフルエンサーマーケティングは非常に効果的な施策です。
インフルエンサーの種類と活用方法
【メガインフルエンサー(100万フォロワー以上)】
- 圧倒的なリーチ力
- ブランド認知拡大に効果的
- 費用は高額
【マクロインフルエンサー(10万〜100万フォロワー)】
- 十分なリーチ力と影響力
- 特定のスタイルでの専門性
- 費用対効果のバランスが良い
【マイクロインフルエンサー(1万〜10万フォロワー)】
- 高いエンゲージメント率
- フォロワーとの密な関係
- 特定のニッチ層へのリーチ
- D2Cブランドに最適
【ナノインフルエンサー(1000〜1万フォロワー)】
- 非常に高いエンゲージメント率
- リアルな口コミ効果
- 低コストで多数起用可能
- UGC創出に効果的
インフルエンサー施策と広告の連携
インフルエンサーの投稿を広告として活用することで、効果を最大化できます。
- Spark Ads(TikTok):インフルエンサーの投稿をそのまま広告として配信
- ブランドコンテンツ広告(Instagram):インフルエンサーの投稿を広告として配信
- ホワイトリスト広告:インフルエンサーのアカウントから直接広告を配信
UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用
実際の購入者が投稿したコンテンツを広告クリエイティブに活用することで、信頼性と共感性を高められます。
UGC収集の方法:
- ブランドハッシュタグキャンペーン
- 購入者へのレビュー・着画投稿依頼
- コーディネート投稿キャンペーン
ランディングページ(LP)と商品ページの最適化

広告の効果を最大化するためには、誘導先となるページの最適化が重要です。広告用LPの作り方と構成の基本を踏まえつつ、アパレルEC特有のポイントを解説します。
商品ページの必須要素
【商品画像】
- 複数アングルの着用画像
- 異なる体型のモデルによる着用
- 商品単体の画像(白背景)
- ディテール・素材感がわかるアップ画像
- カラーバリエーションの画像
- コーディネート提案画像
【商品動画】
- 着用動画(歩く、動く、座るなど)
- 素材感がわかる動画
- 360度回転動画
【サイズ情報】
- 詳細な採寸表(着丈、身幅、肩幅、袖丈、ウエスト、ヒップなど)
- モデルの体型情報(身長、体重、着用サイズ)
- サイズ選びのアドバイス
- サイズレコメンド機能(あれば)
【素材・品質情報】
- 素材構成(綿100%、ポリエステル混など)
- 洗濯方法、ケア方法
- 透け感、伸縮性、厚み
- 裏地の有無
【レビュー・口コミ】
- 購入者のレビュー
- 着画付きレビュー
- サイズ感についてのコメント
【関連商品】
- コーディネートアイテム
- 同じカテゴリの別商品
- 最近チェックした商品
サイズ不安を解消する工夫
アパレルECにおける最大の離脱要因は「サイズ不安」です。広告からの流入者が安心して購入できるよう、以下の工夫が効果的です。
- サイズガイドの充実:測り方の説明、サイズ比較表
- 複数モデルの着用:異なる体型・身長のモデルで見せる
- スタッフの着用コメント:「普段Mサイズ着用のスタッフがMを着用」
- サイズレコメンド機能:AI・過去の購入データに基づく提案
- 返品・交換保証:「サイズが合わなければ無料交換」を明示
- チャットサポート:サイズ選びの相談対応
LPの改善
LPのCVR改善を継続的に行うことで、広告効果を最大化できます。ヒートマップを活用したLP改善も効果的です。
季節・イベントに合わせた広告運用
アパレルECは季節性が強いため、年間を通じた戦略的な広告運用が重要です。
季節ごとの広告戦略
【春(2月〜4月)】
- 2月:春物の先行発売、予約開始
- 3月:春物本格展開、卒業・入学シーズン
- 4月:新生活需要、GW準備
- 訴求ポイント:軽やかさ、明るい色、新生活
【夏(5月〜7月)】
- 5月:夏物先行、GW需要
- 6月:梅雨対策アイテム、夏本番準備
- 7月上旬:夏物ピーク、夏のセール開始
- 訴求ポイント:涼しさ、リゾート感、セール
【秋(8月〜10月)】
- 8月:秋物先行発売(セールと並行)
- 9月:秋物本格展開
- 10月:重衣料(アウター)の立ち上げ
- 訴求ポイント:トレンド、レイヤード、温かみ
【冬(11月〜1月)】
- 11月:冬物ピーク、ブラックフライデー
- 12月:ホリデーシーズン、冬のセール開始
- 1月:初売り、福袋、冬のセール
- 訴求ポイント:防寒、ギフト、セール
セール時期の広告戦略
セール時期は売上を大きく伸ばすチャンスですが、競合も広告を強化するため戦略的な運用が必要です。
【セール前】
- セール開始の告知(ティザー)
- リマーケティングリストの拡充
- LINE・メール会員への先行告知
【セール中】
- 予算を通常の1.5〜2倍に増加
- 「最大〇〇%OFF」「期間限定」の緊急性訴求
- 売れ筋商品、お得な商品を前面に
- カート放棄者へのリマーケティング強化
【セール終盤】
- 「残りわずか」「ラストチャンス」の訴求
- 追加値下げの告知
ブラックフライデー・サイバーマンデーの活用
近年、日本でも定着してきたブラックフライデー・サイバーマンデーは、アパレルECにとって重要な商戦です。
- 11月初旬から告知を開始
- 期間限定の特別オファーを用意
- 広告予算を集中投下
- リマーケティングを強化
年間予算配分の例
例:年間広告予算600万円の場合(レディースアパレルEC)
- 1月:50万円(冬セール)
- 2月:40万円
- 3月:50万円(春物立ち上げ)
- 4月:50万円
- 5月:45万円
- 6月:40万円
- 7月:55万円(夏セール)
- 8月:35万円
- 9月:50万円(秋物立ち上げ)
- 10月:55万円
- 11月:70万円(ブラックフライデー、冬物)
- 12月:60万円(冬セール)
広告効果測定とKPI設定
追うべきKPI
広告効果測定の基本指標を理解したうえで、アパレルEC特有のKPIを設定しましょう。
【売上系KPI】
- 売上高:広告経由の売上
- ROAS:広告費に対する売上の比率
- 注文数(CV数):広告経由の注文件数
- 平均注文単価(AOV):1回の注文あたりの平均金額
【獲得系KPI】
- CPA:1件の注文を獲得するためのコスト
- CVR:クリック数に対する注文数の割合
- 新規顧客獲得数:初めて購入した顧客の数
- 新規顧客比率:全購入者に占める新規の割合
【顧客価値系KPI】
- LTV(顧客生涯価値):1人の顧客から得られる総売上
- リピート率:再購入する顧客の割合
- 購入頻度:顧客あたりの年間購入回数
【その他のKPI】
- 返品率:返品された注文の割合(広告の質の指標にも)
- カート追加率:商品ページ閲覧者のカート追加率
- カート放棄率:カート追加後に購入しなかった割合
コンバージョントラッキングの設定
コンバージョン設定を正しく行い、広告効果を正確に測定しましょう。
設定すべきコンバージョン:
- 購入完了(売上金額も含めて計測)
- カート追加
- 会員登録
- お気に入り登録
- メールマガジン登録
- LINE友だち追加
Meta広告のピクセル設定も忘れずに行いましょう。
広告予算の決め方
予算の目安
Web広告の費用相場は業種によって異なりますが、アパレルECでは以下が目安となります。
月間予算の目安:
- 小規模EC(テスト運用):10万円〜30万円/月
- 中規模EC:30万円〜100万円/月
- 大規模EC:100万円〜数百万円/月
チャネル別予算配分
広告予算の配分について、アパレルECの例を紹介します。
例:月間予算50万円の場合
- Instagram広告:20万円(40%)
- Googleショッピング広告:12万円(24%)
- TikTok広告:8万円(16%)
- リマーケティング:7万円(14%)
- Google検索広告:3万円(6%)
Instagram広告を中心に、視覚的な訴求ができるチャネルに予算を配分するのがアパレルECの基本戦略です。
ROIの考え方
アパレルECでは、返品を考慮したROI計算が重要です。
計算例:
広告経由売上:300万円
返品率:15%
実売上:255万円
広告費:50万円
実質ROAS:510%
返品率が高いと、見かけのROASよりも実質的な効果は低くなります。広告クリエイティブやLPでサイズ情報を充実させ、返品率を下げる努力も重要です。
他のEC業種との違いと参考情報
美容・コスメECとの違い
美容・コスメECと比較すると、アパレルECには以下の特徴があります。
- サイズ問題:アパレルはサイズ選びが重要、コスメは肌質との相性
- 返品率:アパレルは返品率が高い傾向
- 定期購入:コスメは定期購入が多い、アパレルは単発購入が中心
- トレンドサイクル:アパレルは季節ごとにトレンドが変化
食品ECとの違い
食品ECと比較すると、以下の違いがあります。
- 返品:アパレルは返品可能、食品は衛生上返品不可が多い
- 消費サイクル:食品は消耗品でリピート率が高い、アパレルは長期使用
- ギフト需要:食品はギフト需要が高い、アパレルは自己購入が中心
家具・インテリアECとの違い
家具・インテリアECと比較すると、以下の違いがあります。
- 単価:家具は高単価、アパレルは中〜低単価
- 購入頻度:家具は稀、アパレルは比較的頻繁
- 検討期間:家具は長い、アパレルは比較的短い
- トレンド:アパレルはトレンドの変化が早い
共通するEC広告の基本
ECサイトの広告運用戦略で解説している基本的な考え方は、アパレルECにも共通して適用できます。
成功事例と失敗事例
成功事例1:Instagram広告で売上3倍を達成したD2Cブランド
背景:
20代女性向けのD2Cアパレルブランド。品質とデザインには自信があったが、認知度が低く売上が伸び悩んでいた。
実施した施策:
- Instagram広告に予算の70%を投下
- モデル着用のスタイリング写真を中心としたクリエイティブ
- リール広告で着回しコーデを紹介
- マイクロインフルエンサー10名と継続的にタイアップ
- インフルエンサーの投稿をブランドコンテンツ広告として配信
- UGCを収集し、広告クリエイティブに活用
結果:
- 売上が前年比300%に
- Instagramフォロワーが5万人を突破
- ROAS:450%を達成
- ブランド検索数が大幅増加
成功のポイント:
Instagram広告とインフルエンサーマーケティングを連携させ、「憧れ」と「リアル」の両方を訴求。UGCの活用で広告感を減らし、共感を獲得した。
成功事例2:リマーケティング強化でCVR2倍を達成したセレクトショップ
背景:
複数ブランドを扱うセレクトショップEC。サイト訪問は多いが、購入につながらないことが課題だった。
実施した施策:
- 動的リマーケティングを導入(閲覧した商品を自動で広告に)
- カート放棄者への専用キャンペーン(送料無料クーポン付与)
- カテゴリ別のリマーケティング設計
- リマーケティング期間を7日、14日、30日で細分化
- 予算の25%をリマーケティングに配分
結果:
- リマーケティング経由のCVRが2倍に
- カート放棄からの購入完了率が向上
- 全体のROASが30%改善
成功のポイント:
「検討中」のユーザーに対して、適切なタイミングで適切な商品を訴求。カート放棄者への送料無料クーポンが購入の後押しに効果的だった。
成功事例3:TikTokでバズり新規顧客を大量獲得したブランド
背景:
Z世代向けのストリート系ブランド。Instagramでは一定の成果を出していたが、さらなる成長のために新しいチャネルを模索。
実施した施策:
- TikTok広告への参入
- TikToker(ファッション系)との複数タイアップ
- 「〇〇円で作るコーデ」企画
- Spark Adsでインフルエンサー投稿を広告として拡散
- TikTokネイティブなクリエイティブ(広告っぽさを排除)
結果:
- 複数の投稿がバズり、累計再生数1億回超え
- TikTok経由の新規顧客が大幅増加
- 10代〜20代前半の顧客層が拡大
- 「TikTokで見た」という購入理由が増加
成功のポイント:
TikTokの文化を理解し、「広告」ではなく「コンテンツ」として楽しめる動画を作成。インフルエンサーの起用で自然な形で商品を紹介できた。
失敗事例:返品率を考慮せず赤字になったD社
背景:
海外から仕入れたファストファッションを扱うEC。低価格を武器に広告を大量出稿。
問題点:
- 「激安」「破格」を強調した広告で大量の注文を獲得
- しかし、サイズ感や素材感が広告のイメージと異なり返品が続出
- 返品率が30%を超え、返品処理コストが利益を圧迫
- ネガティブなレビューが増加
結果:
- 見かけの売上は増えたが、返品を考慮すると赤字
- 顧客満足度の低下でリピート率も悪化
- 広告を止めざるを得ない状況に
学び:
広告で過度な期待を煽ると、返品率の上昇につながる。サイズ情報、素材感、実際の着用イメージを正確に伝えることが重要。返品率を考慮したROI計算が必要。
よくある質問(FAQ)

Q1. アパレルECで最初に始めるべき広告は何ですか?
Instagram広告から始めることをおすすめします。ファッションとの相性が抜群で、ビジュアル訴求ができ、ターゲティングも精度が高いためです。予算が限られている場合は、まずInstagram広告で効果を検証し、成果が出たらGoogleショッピング広告やTikTok広告に展開するのがよいでしょう。
Q2. サイズ不安を解消するための広告での訴求ポイントは?
以下のポイントを広告やLPで訴求しましょう。
- 「サイズ交換無料」「返品無料」の明示
- 「モデル身長〇cm、着用サイズM」の情報
- 「詳細なサイズ表記あり」のアピール
- 着用動画でのサイズ感の伝達
- 「チャットでサイズ相談OK」のサポート訴求
Q3. セール時期の広告予算はどのくらい増やすべきですか?
通常月の1.5〜2倍程度を目安にすることをおすすめします。ただし、競合も広告を強化するため、単に予算を増やすだけでなく、クリエイティブの工夫(「最大〇〇%OFF」「残りわずか」などの緊急性訴求)も重要です。セール前からリマーケティングリストを拡充しておくことも効果的です。
Q4. 新作と定番商品、どちらを広告で訴求すべきですか?
両方を使い分けることが重要です。
- 新作:認知拡大、トレンド訴求、ブランドの鮮度維持
- 定番・人気商品:確実な売上確保、高いCVR
予算配分としては、定番商品で安定した売上を確保しつつ、新作で新規顧客の獲得とブランド価値の維持を図るバランスがよいでしょう。
Q5. インフルエンサーを起用する際の注意点は?
以下の点に注意しましょう。
- フォロワー数だけでなくエンゲージメント率を確認
- ブランドの世界観と合致しているか
- 過去のPR実績(他ブランドとのタイアップ内容)
- フォロワーの属性(年齢層、性別、興味関心)
- 契約内容の明確化(二次利用、報酬、期間)
Q6. 広告代理店を使うべきですか?
以下の場合は代理店の活用を検討しましょう。
- 広告運用に充てるリソース(時間・人員)がない
- 専門知識を持ったスタッフがいない
- 月間予算が50万円以上ある
- 複数の広告チャネルを並行運用したい
- クリエイティブ制作も含めて依頼したい
広告代理店の選び方を参考に、アパレル業界の運用実績がある代理店を選びましょう。
まとめ
アパレルECのWeb広告運用について、ファッション業界特有の特性を踏まえて詳しく解説してきました。
本記事のポイント:
- Instagram広告を中心に展開:ビジュアル訴求との相性が抜群。スタイリング写真、リール動画、インフルエンサー活用で効果を最大化。
- TikTok広告でZ世代にリーチ:「TikTok売れ」を狙える可能性。広告感を排除したTikTokネイティブなコンテンツが重要。
- サイズ不安の解消が鍵:詳細なサイズ情報、モデル体型の明示、返品・交換保証の訴求で購入ハードルを下げる。
- 季節・トレンドに合わせた運用:春夏秋冬のサイクル、セール時期に合わせて予算とクリエイティブを調整。
- リマーケティングで取りこぼしを防ぐ:動的リマーケティング、カート放棄者への訴求で購入率を向上。
- UGC・インフルエンサーの活用:「広告感」を減らし、リアルな着用イメージで共感を獲得。
- 返品率を考慮したROI計算:見かけの売上だけでなく、返品を考慮した実質的な効果を測定。
アパレルEC市場は競争が激しいですが、ファッションの魅力を正しく伝え、消費者の不安を解消する広告運用を行うことで、大きな成果を上げることができます。
広告運用に関するご相談や、アパレル・古着屋のホームページ制作についてお悩みの方は、ぜひオムニウェブにお問い合わせください。ファッション業界の特性を理解した専門スタッフが、最適なWeb戦略をご提案いたします。
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