はじめに:Googleが見ているのは「コード」か「画面」か
最近のWebサイトは、ReactやVue.jsといった技術を使い、アプリのようにサクサク動くものが増えています。
しかし、ここで一つの大きな問題が浮上します。
「人間には見えている画面が、Google(検索エンジン)には見えていないかもしれない」
この現象のカギを握るのが「レンダリング(描画)」という工程です。この記事では、Web担当者が必ず知っておくべきレンダリング方式とSEOの関係について、全5回でわかりやすく解説します。
1章:レンダリングとは何か?
レンダリングとは、簡単に言うと「プログラムのコードを、人間が読める『画面(ページ)』に組み立てること」を指します。
Webサイトは、HTMLやCSS、JavaScriptという材料でできています。これを「誰が・いつ・どこで」組み立てるかによって、SEOへの影響が180度変わります。
2章:SEOにおける「中身が空っぽ」問題
一昔前のSEOは、サーバーから送られてくる「HTML」という設計図の中に、最初から全ての文章(キーワード)が書き込まれていました。Googleはそのテキストを読んで、内容を判断していました。
しかし、近年のJavaScriptを多用したサイト(CSR:クライアントサイド・レンダリング)では、サーバーから届くのは「枠組みだけの空っぽなHTML」です。
「後から描画」の罠
ブラウザ(Chromeなど)がJavaScriptを実行して初めて、中身の文章や画像が画面上に現れます。
ここでGoogleのクローラー(巡回ロボット)が直面するのが、以下のジレンマです。
- JavaScriptを実行する前に帰ってしまうと、サイトの内容が「空っぽ」だと判断される。
- JavaScriptを実行して中身が出るのを待つには、莫大なコスト(時間)がかかる。
(参考:インデックスされない原因と対処法)
3章:主要な3つのレンダリング方式
これからのSEOを考える上で、避けて通れないのが以下の3つの用語です。
- CSR(Client Side Rendering):ユーザーのブラウザ上で画面を組み立てる方式。
- SSR(Server Side Rendering):サーバー側で画面を完成させてから届ける方式。
- SSG(Static Site Generation):あらかじめ画面を作っておき、それを配る方式。
方式によっては、Googleに正しく中身が伝わらず、検索順位が全く上がらないという事態も起こり得ます。
次回の第2部では、最もSEO的にリスクが高いと言われる「CSR(クライアントサイド・レンダリング)」を深掘りします。
GooglebotがJavaScriptをどのように処理しているのか、そしてなぜ「二段階インデックス」という仕組みがSEOの遅延を引き起こすのかを詳しく解説します。
4章:CSR(クライアントサイド・レンダリング)とは?
CSRは、React、Vue.js、AngularといったモダンなJavaScriptフレームワークで標準的に使われる方式です。
サーバーからは「空っぽのHTML」と「巨大なJavaScriptファイル」だけが送られてきて、ユーザーのブラウザ(クライアント)側でJavaScriptを実行して画面を組み立てます。
CSRのメリット
- 操作がサクサク:一度読み込めば、ページ遷移時に画面全体をリロードする必要がないため、アプリのような操作感を実現できます。
- サーバー負荷の軽減:画面を組み立てる計算をユーザーのデバイスに任せるため、サーバーの負担が少なくなります。
5章:SEOを阻む「二段階インデックス」の壁
人間にとって便利なCSRですが、Googleのクローラー(Googlebot)にとっては非常に厄介な存在です。
GoogleはJavaScriptを実行するために、「二段階インデックス(Two-wave indexing)」という特殊なプロセスを通ります。
- 第1波(Crawl):HTMLだけを読み込み、すぐにインデックスしようとします。しかし、この時点では中身が「空っぽ」のため、何も評価されません。
- レンダリング待ち:JavaScriptを実行するためのリソースが空くまで、待機リストに入れられます。
- 第2波(Render):リソースが空いたら、ようやくブラウザと同じようにJavaScriptを実行し、完成した画面を読み込みます。
最大の懸念:インデックスの遅延
この「待ち時間」が問題です。通常のHTMLサイトなら数分で検索結果に反映されるところ、CSRのサイトでは数日から数週間も、中身がない「空っぽ」の状態で放置されるリスクがあるのです。
6章:JavaScriptが読み飛ばされるリスク
さらに恐ろしいのが、Googlebotには「時間制限」があることです。
JavaScriptの処理が重すぎたり、エラーが含まれていたりすると、Googlebotはレンダリングを諦めて途中で帰ってしまいます。
その結果、以下のようなSEO上のトラブルが発生します。
- 重要なテキストやキーワードが認識されない。
- 内部リンクが発見されず、サイト全体の評価が回らない。
- 検索結果の「スニペット(説明文)」が意味不明なものになる。
(参考:モバイルファーストインデックスの重要性)
次回の第3部では、これらの問題を根本から解決し、Googleに「完成品」を届けるための技術「SSR(サーバーサイド・レンダリング)」と「SSG(静的サイト生成)」について解説します。
なぜ最新のSEO戦略では、これらの技術が「標準」となっているのか、その理由がわかります。
7章:Googlebotを待たせない「SSR」と「SSG」
前回の第2部で解説した通り、ブラウザ側に画面構築を任せる「CSR」はSEOにおいて大きなリスクを伴います。
この問題を解決するためには、Googlebotがサイトに訪れた瞬間に、すでに文字も画像も揃った「完成品のHTML」を渡してあげる必要があります。
そのための主要な手法が、SSR(サーバーサイド・レンダリング)とSSG(静的サイト生成)です。
8章:SSR(サーバーサイド・レンダリング)とは?
SSRは、ユーザーやクローラーからリクエストがあった瞬間に、サーバー側でJavaScriptを実行してHTMLを組み立て、完成品を返送する方式です。
SSRのSEOメリット
- 即座にインデックス:GooglebotがJavaScriptを実行するのを待つ必要がないため、CSRのような「インデックスのタイムラグ」が発生しません。
- SNSシェアに強い:Twitter(X)やFacebookのボットもHTMLを正しく読み取れるため、OGP(シェア時の画像や説明文)が正確に表示されます。
ただし、アクセスがあるたびにサーバーが画面を作るため、サーバーのスペックが低いと応答時間(TTFB)が遅くなるデメリットがあります。
9章:SSG(静的サイト生成)とは?
SSGは、サイトの公開・更新ボタンを押した瞬間に、あらかじめ全てのページのHTMLを先に作っておく方式です。
SSGのSEOメリット
- 世界最速の表示速度:すでに完成しているファイルを配るだけなので、表示速度が極めて速くなります。Googleの評価指標「Core Web Vitals」で満点を狙いやすい方式です。
- セキュリティと安定性:データベースと直接通信しないため、ハッキングのリスクが低く、アクセス集中にも強いのが特徴です。
(参考:最新のSEO対策の基本)
10章:SSRとSSG、どちらがSEOに有利?
結論から言うと、「情報の鮮度」によって使い分けます。
- SSGが向いている:ブログ、コーポレートサイト、ニュース記事など、一度公開したら頻繁に内容が変わらないページ。
- SSRが向いている:株価チャート、検索条件で中身が変わるECサイトの検索結果、マイページなど、常に最新情報を出す必要があるページ。
どちらの方式も、インデックス登録されない問題を回避するための強力な武器となります。
次回の第4部では、このSSRとSSGの「いいとこ取り」をした最新手法、「ISR(インクリメンタル静的再生成)」について解説します。
「速いけれど更新が面倒」というSSGの弱点を克服し、モダンなSEO戦略で主流となっている技術の正体に迫ります。
11章:SSGの進化系「ISR」とは?
第3部で解説した「SSG(静的サイト生成)」は、表示速度が極めて速くSEOに有利ですが、一つ大きな弱点がありました。それは、「一度サイトをビルド(生成)した後に記事を更新しても、再度ビルドし直さない限り反映されない」という点です。
数万ページある大規模サイトでは、一つの修正のために全ページを再生成するのは現実的ではありません。そこで登場したのがISR(Incremental Static Regeneration)です。
ISRの仕組み
ISRは、簡単に言うと「バックグラウンドで、必要なページだけをこっそり作り直す」技術です。
- ユーザーがアクセスした際、まずは保存されている「古い静的ページ」を即座に表示(爆速)。
- 同時にサーバー側で「新しいデータがあるか」を確認し、あればバックグラウンドでそのページだけを再生成。
- 次のユーザーがアクセスした時には、新しくなったページが表示される。
これにより、SSGの「爆速」というメリットを維持したまま、ブログやニュースのような「更新頻度の高いサイト」でも運用が可能になりました。
12章:ページごとに使い分ける「ハイブリッド構成」
現代の高度なSEO戦略では、サイト全体を一つの方式で固めることはしません。Next.jsなどのフレームワークを使い、ページの種類(役割)に合わせて最適なレンダリング方式を使い分けるのが主流です。
ハイブリッド構成の例
- ブログ記事・お知らせ:「SSG」または「ISR」で、読み込み速度とSEO評価を最優先。
- ユーザー専用マイページ:SEOの必要がなく、個別のデータ表示が必要なため「CSR」。
- 在庫が常に変動する商品一覧:常に最新情報をGoogleにインデックスさせるため「SSR」。
この使い分けにより、ホームページ集客に必要な「速度」と、サービスとして必要な「機能性」を完璧に両立させることができます。
13章:SEO担当者がエンジニアと話すべきこと
「どの方式にするか」はエンジニアが決めることが多いですが、SEO担当者(または経営者)は以下の2点を必ず確認してください。
- 「Googlebotがサイトを開いた時、中身(テキスト)はHTMLに含まれていますか?」
- 「PageSpeed InsightsのLCP(最大コンテンツの表示時間)は緑色を維持できていますか?」
もし答えがNOなら、レンダリング方式の見直しが必要かもしれません。
次回の最終回(第5部)では、これまでの内容を踏まえ、「結局、自分のプロジェクトにはどの方式がベストなのか?」を判断するためのチェックリストと、全5回の総まとめをお届けします。
14章:レンダリング方式・選定フローチャート
「技術のことはわかったけれど、結局うちはどうすればいいの?」と迷っている方へ。
以下のチャートに沿って、自社のプロジェクトに最適な方式を見つけてください。
🚦 レンダリング方式の選び方
Q1. 検索エンジンからの集客(SEO)が最優先ですか?
- NO ➡ CSR(管理画面や社内ツール、SNS連携アプリなど)
- YES ➡ Q2へ
Q2. ページ数はどれくらいありますか?
- 数百ページ以下 ➡ SSG(コーポレートサイト、小規模ブログなど)
- 数千ページ以上 ➡ Q3へ
Q3. コンテンツの更新頻度はどれくらいですか?
- 1日に数回程度 ➡ ISR(大規模メディア、ポータルサイトなど)
- リアルタイム(常に変動) ➡ SSR(ECサイトの在庫、マッチングサイトなど)
15章:SEOを成功させるための「技術選定」の心得
モダンなWeb開発(ReactやNext.jsなど)への移行は、正しく行えば「爆速サイト」という最強のSEO武器になります。
しかし、安易に「流行っているから」という理由でCSR(クライアントサイドのみ)を選択してしまうと、検索順位が壊滅する恐れがあります。
技術選定の際は、必ず以下の3点を開発チームと共有してください。
- 「View Source(ソースを表示)」した際に中身があるか:Googlebotが最初に見る景色を確認すること。
- Core Web Vitalsを測定する:方式によってLCPやFIDの数値が大きく変わります。
- インデックス状況を注視する:公開後、Search Consoleで正しくページが認識されているか監視を怠らないこと。
(参考:SEO対策の基本概念)
16章:まとめ|技術とSEOの調和
全5回にわたり、レンダリング方式とSEOの関係について解説してきました。
かつてのWebサイトは「ただの文書」でしたが、今のWebサイトは「高度なプログラム」です。
Googleも日々進化し、JavaScriptを理解しようと努力していますが、サイト側でも「Googleが理解しやすい形(SSR/SSG/ISR)」で提供することが、2026年以降のSEO戦略には欠かせません。
ユーザーには最高の体験(速度)を、Googleには確実な情報(HTML)を。
この両立こそが、これからのWebマーケティングにおける勝利の鍵となります。
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「今のJavaScriptサイトが正しくインデックスされていない気がする」
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