SEO効果の測定方法|追うべき指標KPIとレポート作成のポイント【完全ガイド Part 1】
「SEO対策にお金をかけているが、本当に効果が出ているのか?」
「検索順位は1位になった。で、いくら儲かったの?」
もしあなたがSEO担当者なら、上司やクライアントからのこうした質問に冷や汗をかいた経験があるかもしれません。
SEO(検索エンジン最適化)は、広告のように「1円入れたら◯円返ってくる」という即時的なフィードバックが得にくいため、効果測定が曖昧になりがちです。多くの現場では「検索順位」だけをKPI(重要業績評価指標)にしがちですが、順位はあくまで手段であり、ゴールではありません。
本連載(全5回)では、SEOを「なんとなくの施策」から「データに基づいた投資」へと昇華させるための、正しい効果測定とレポート作成のメソッドを徹底解説します。
第1回となる今回は、分析ツールを開く前に必ず整理すべき「KGI・KPIの設計図」と「測定の階層構造」について定義します。
第1章:なぜSEOの効果測定は難しいのか?
まずは、なぜ多くの企業がSEOの評価を見誤るのか、その構造的な理由を理解しておきましょう。
1.1 「順位」と「売上」のタイムラグ
リスティング広告は出稿したその日から流入がありますが、SEOは施策を行ってから順位に反映されるまで数ヶ月、そこから流入が増えてCV(コンバージョン)が発生するまでさらに時間がかかります。
この「空白期間」に何を指標にして進捗を報告するか。ここが定義できていないと、プロジェクトは「効果が見えない」という理由で打ち切られてしまいます。
1.2 (not provided) と Cookie規制の壁
かつてはGoogleアナリティクスで「どのキーワードで流入してCVしたか」が全て見えていましたが、現在はSSL化により大部分が「(not provided)」となり、キーワードごとの直接的な売上貢献が見えにくくなっています。
そのため、Googleサーチコンソール(流入前)とGoogleアナリティクス(流入後)のデータを脳内で結合し、仮説を持って分析するスキルが求められています。
第2章:SEO指標の「3階層ピラミッド」
SEOの指標は、ごちゃ混ぜにするのではなく、以下の3つの階層に分けて管理する必要があります。
Layer 1:健全性指標(Technical SEO)
「土俵に立てているか?」を測る指標。
- インデックス数:作成したページがGoogleに認識されているか。
- クロールエラー:404エラーやサーバーエラーが出ていないか。
- ページ表示速度(Core Web Vitals):ユーザー体験を損ねていないか。
これらは売上に直結しませんが、ここがマイナスだと全ての施策が無駄になります。いわゆる「健康診断」の数値です。
Layer 2:集客指標(Pre-Click)
「ユーザーの目に触れているか?」を測る指標。
- 検索順位:狙ったキーワードでの位置。
- 表示回数(Impressions):検索結果画面に表示された回数。
- クリック率(CTR):タイトルやディスクリプションの魅力度。
- 自然検索流入数(Organic Sessions):サイトへの訪問数。
多くのSEO担当者がKPIにするのはここです。Googleサーチコンソール(GSC)が主戦場となります。
Layer 3:成果指標(Post-Click / Business)
「ビジネスに貢献したか?」を測る指標。
- コンバージョン数(CV):資料請求、購入、問い合わせ。
- コンバージョン率(CVR):流入の質。
- アシストコンバージョン:直接CVしなくても、検討のきっかけになった数。
- ROI(投資対効果):SEOにかかったコストに対する利益。
経営層が見たいのはここだけです。Layer 2の数値がいかに良くても、Layer 3が悪ければSEO施策は「失敗」とみなされます。
第3章:正しいKGI・KPIの設計図(ロジックツリー)
分析ツールを見る前に、以下のロジックツリーを作成し、関係者全員で合意形成を行ってください。
Step 1:KGI(最終ゴール)の確認
SEOのゴールは「順位」ではありません。「売上」や「リード獲得数」です。
例:月間のWeb経由リード獲得数を100件にする
Step 2:KPI(中間目標)への分解
KGIを達成するために必要な要素を分解します。
リード数 100件 = 自然検索流入数 × CVR(転換率)
現在のCVRが1.0%だと仮定すると、必要な自然検索流入数は「10,000セッション」となります。これがメインのKPIです。
Step 3:サブKPI(行動目標)の設定
10,000セッションを達成するために何が必要かをさらに分解します。
- 既存記事のリライト:順位が11位〜20位のキーワードをトップ10に入れる。
- 新規記事の作成:検索ボリューム1,000のキーワードで上位を取る記事を10本書く。
- CTRの改善:順位はそのままで、タイトルを魅力的にして流入を1.2倍にする。
ここまで分解して初めて、「今月は新規記事を5本書いたので、KPI達成率は50%です」といった意味のある報告が可能になります。
第4章:「虚栄の指標(Vanity Metrics)」に騙されるな
最後に、注意すべき指標について触れておきます。一見、数字が伸びていると嬉しくなりますが、ビジネスには寄与しない数字を「虚栄の指標」と呼びます。
ケース1:中身のないPV増加
「芸能人のゴシップに関連するキーワードでたまたま上位表示され、PVが爆増した」
これはSEO担当者としては快挙に見えますが、自社のサービス(例えばBtoBのSaaS)には全く関係のないユーザー層であれば、CVは0件です。これを成果として報告すると、翌月にアクセスが戻った際に「暴落した」と判断され、自分の首を絞めることになります。
ケース2:指名検索の増加を「SEOの実力」と勘違いする
全体の流入数が増えていても、その内訳が「社名」や「サービス名」などの指名検索ばかりだった場合、それはSEO施策の成果ではなく、CMやSNS、プレスの効果(認知拡大)です。
SEOの評価をする際は、必ず「指名検索(Brand)」と「一般検索(Non-Brand)」を切り分けて測定しなければなりません。
第1回では、ツールを触る前の「思考の整理」を行いました。
次回、【第2回】流入前指標(GSC)編からは、いよいよ実践編です。
「Googleサーチコンソールのどこを見ればいいのか?」
「順位は変わっていないのに、表示回数が減った原因は?」
「カニバリゼーション(共食い)の発見方法」
など、サイトにアクセスする「手前」の健康状態を診断し、具体的な改善アクションに繋げる分析術を解説します。SEO担当者の必須ツールを使い倒しましょう。
SEO効果の測定方法|追うべき指標KPIとレポート作成のポイント【完全ガイド Part 2】
「記事を書いたのに、アクセスが増えない」
「順位は1ページ目にあるのに、なぜかクリックされない」
このような悩みを持つSEO担当者が最初に見るべきは、Googleアナリティクスではなく、Googleサーチコンソール(GSC)です。
前回(第1回)では、SEO指標の階層構造について解説しました。第2回となる今回は、その中でも「Layer 2:集客指標(Pre-Click)」に焦点を当てます。
ユーザーがあなたのサイトに「入る前」に何が起きているのか。検索結果画面(SERPs)でのパフォーマンスを丸裸にし、「順位アップのチャンス(お宝キーワード)」や「見えない機会損失」を発見する分析テクニックを解説します。
第1章:GSCの「4つの数字」を正しく読む
GSCの「検索パフォーマンス」画面には、4つの主要な指標が表示されます。それぞれの数字が持つ「本当の意味」を理解していますか?
1.1 表示回数(Impressions)= 市場のニーズ
最も軽視されがちですが、実は最も重要な指標です。「検索結果画面にあなたのリンクが表示された回数」ですが、これは以下のことを意味します。
- 0回〜数回: そもそも検索されていない(キーワード選定ミス)か、50位以下などの圏外にいる(インデックスはされているが評価されていない)。
- 急増した: トレンドに乗ったか、Googleがテスト的に順位を上げて「様子見」をしているサイン(順位アップの前兆)。
クリックがゼロでも、表示回数が増えていれば「Googleに認識され始めた」というポジティブな評価としてレポートできます。
1.2 平均CTR(クリック率)= タイトルの魅力度
順位ごとの平均的なCTRは、一般的に以下のような水準(PC検索時)と言われています。
- 1位:約13%〜20%
- 2位:約7%〜10%
- 3位:約5%〜7%
もしあなたの記事が「3位なのにCTRが1%しかない」場合、それは「タイトルがつまらない」か「検索意図とディスクリプションがズレている」証拠です。ここは記事の中身をリライトしなくても、タイトルを変えるだけで改善できる「即効性のあるポイント」です。
第2章:お宝キーワード発掘の分析テクニック
漫然とデータを眺めていても改善点は見つかりません。GSCのフィルタ機能を使い、「改善すればすぐに成果が出るキーワード」をあぶり出します。
2.1 「惜しい(Oshii)キーワード」を探す|順位 11位〜20位
SEOで最もROI(費用対効果)が高い施策は、「2ページ目(11位〜20位)にある記事を1ページ目に押し上げること」です。
すでにGoogleから一定の評価を得ているため、少しのテコ入れで順位が跳ね上がる可能性があります。
【分析手順】
- 検索パフォーマンスで「掲載順位」にチェックを入れる。
- フィルタ機能で「掲載順位:次より大きい 10」かつ「掲載順位:次より小さい 21」を設定。
- 表示回数が多い順に並べ替える。
ここに表示されたキーワードが、今月の「最優先リライト対象」です。競合上位記事と比較して、不足している情報(見出し)を追加しましょう。
2.2 「CTR改善」候補を探す|高順位・低クリック
順位は良いのにクリックされていない「もったいない記事」を探します。
【分析手順】
- 「掲載順位:次より小さい 5」(TOP5入りしているもの)でフィルタ。
- CTRが極端に低い(例:3%未満)キーワードを見つける。
原因は「タイトルが魅力的でない」以外に、「強調スニペット(アンサーボックス)に答えが表示されて満足されている(ゼロクリック)」の可能性があります。実際に検索して確認し、タイトルに【2024年最新】などのフックを入れるか、スニペット対策を行うか判断します。
第3章:クエリとランディングページの照合
GSCでは「クエリ(キーワード)」と「ページ(URL)」を行き来して分析することが重要です。
3.1 カニバリゼーション(共食い)の発見
「順位が乱高下して安定しない」
そんな時は、1つのキーワードに対して複数のページが評価を奪い合っている「カニバリゼーション」を疑ってください。
【発見方法】
- 特定のキーワード(例:「SEOライティング」)をクリックして詳細に入る。
- 「ページ」タブに切り替える。
- ここに複数のURLが表示され、表示回数が分散している場合、共食いが起きています。
【対策】
どちらか一方のページに統合(301リダイレクト)するか、canonicalタグで正規化を行い、Googleに「メインのページ」を伝えます。
3.2 指名検索を除外して実力を測る
第1回で触れた「指名検索」の除外方法です。
フィルタ機能で「クエリ:次を含まない [自社社名]」を設定します。これにより、純粋なSEO施策(Non-Brandキーワード)でのパフォーマンス推移が可視化されます。レポートには、この除外後の数値を載せるのが誠実です。
第4章:サーチコンソールは「問い」を見つける場所
GSCは「何が起きたか(What)」を教えてくれますが、「なぜ(Why)」までは教えてくれません。
- 「なぜ、この記事の表示回数が急に増えたのか?」→ 世の中のトレンドが変わった?
- 「なぜ、1位なのにCTRが低いのか?」→ リスティング広告枠が増えた?
数字の変化に気づいたら、必ず実際の検索結果画面(SERPs)を目視で確認する癖をつけてください。ツールと現場(実際の検索画面)を行き来することで、初めて「生きた分析」が可能になります。
今回は、ユーザーがサイトに訪れる前の「GSC分析」について解説しました。
しかし、クリックされて終わりではありません。むしろ、クリックされてからが勝負です。
「アクセスはあるのに、記事が読まれていない(直帰率が高い)」
「どの記事がコンバージョン(売上)に貢献したのか?」
これらを解明するには、Googleアナリティクス4(GA4)の出番です。
次回、【第3回】流入後指標(GA4)編では、GA4を使った「エンゲージメント率」の分析や、コンバージョンに貢献した記事を特定する「アトリビューション分析」の手法について解説します。アクセス解析の迷子にならないための道標をお届けします。
SEO効果の測定方法|追うべき指標KPIとレポート作成のポイント【完全ガイド Part 3】
「アクセス数は増えたが、記事が本当に読まれているのか不安だ」
「どの記事がコンバージョン(問い合わせ)に貢献しているのか分からない」
Googleサーチコンソール(GSC)で集客状況を確認したら、次はGoogleアナリティクス4(GA4)の出番です。しかし、旧ユニバーサルアナリティクス(UA)からGA4に変わり、「直帰率がなくなった」「使い方が分からない」と困惑している担当者も多いのではないでしょうか。
第3回となる今回は、SEO指標の「Layer 3:成果指標(Post-Click)」に踏み込みます。
GA4の新しい概念である「エンゲージメント」を正しく理解し、検索ユーザーがサイト内で満足しているか、そしてどの記事が売上に貢献しているかを紐解く分析術を解説します。
第1章:さよなら直帰率。これからは「エンゲージメント率」
SEO記事の質を測る際、長年「直帰率(1ページだけ見て帰った率)」が使われてきました。しかし、ユーザーが記事を熟読して満足し、ブラウザを閉じた場合も「直帰」としてカウントされるため、記事の良し悪しを正確に反映していないという問題がありました。
そこでGA4では「エンゲージメント」という概念が導入されました。
1.1 エンゲージメントセッションの定義
GA4では、以下のいずれかを満たすと「エンゲージメントがあった(質の高い訪問)」と判定されます。
- 10秒以上継続したセッション
- コンバージョンイベントが発生した
- 2回以上のページビューが発生した
つまり、「エンゲージメント率」が高ければ高いほど、そのSEO記事はユーザーを満足させている(しっかり読まれている)と判断できます。
1.2 SEO担当者が見るべき「質の指標」
GA4のレポートでは、以下の3つを重点的にチェックしてください。
- エンゲージメント率: 記事の満足度。(目安:読み物なら40〜60%あれば優秀)
- 平均エンゲージメント時間: 画面が実際にアクティブだった時間。「滞在時間」よりも実態に近い数値が出ます。
- スクロール数: 記事のどこまで読まれたか(イベント設定が必要)。
もし「表示回数は多い(GSC)」のに「エンゲージメント時間が極端に短い(GA4)」場合、それは「タイトル釣り」になっているか、「導入文でユーザーの期待を裏切っている」可能性が高いです。
第2章:(not provided)時代のランディングページ分析
現在、GA4を見ても検索キーワードの多くは「(not provided)」と表示され、不明です。そのため、分析の単位を「キーワード」から「ランディングページ(入り口URL)」に切り替える必要があります。
2.1 「集客に強い記事」vs「成約に強い記事」
すべてのSEO記事がコンバージョン(CV)を目指す必要はありません。記事には役割があります。
| 記事タイプ | 役割 | 見るべき指標 |
|---|---|---|
| 集客記事 (ハウツー、用語解説) | アクセスを集め、認知を広げる。 内部リンクでキラーページへ送客する。 | ・流入数(Session) ・エンゲージメント率 |
| 成約記事(キラーページ) (比較、評判、事例) | 比較検討中のユーザーをCVさせる。 (アクセス数は少なくても良い) | ・コンバージョン数 ・コンバージョン率(CVR) |
GA4の「ページとスクリーン」レポートで、ランディングページごとの実績を出してみましょう。
「アクセスは少ないが、CVRが非常に高い記事」が見つかれば、その記事に内部リンクを集めたり、リライトで順位を上げたりすることで、全体のCV数を効率よく伸ばすことができます。
第3章:アトリビューション分析|「アシスト」を評価する
SEOの評価を難しくしているのが、「検索ユーザーはすぐには買わない」という点です。
例えば、あるユーザーが以下のような行動をとったとします。
- 「腰痛 原因」で検索し、あなたのブログ記事を読む。(認知)
- 1週間後、「腰痛 クッション おすすめ」で検索し、比較記事を読む。(検討)
- さらに3日後、社名で指名検索してトップページから購入する。(CV)
通常(ラストクリック評価)では、評価されるのは「3. 指名検索」だけです。しかし、きっかけを作った「1. ブログ記事」がなければ、このCVは生まれていません。
3.1 コンバージョン経路レポートを活用する
GA4の「広告」セクション(※広告を出していなくても使えます)にある「アトリビューション > コンバージョン経路」を確認しましょう。
ここで「Organic Search」が「初期のタッチポイント」としてどれだけ機能しているかを見ることができます。直接CVが少なくても、ここでの貢献度が高ければ、SEO施策は「認知獲得」として大成功しています。
第4章:SEO専用「探索レポート」の作り方
GA4の標準レポートは見にくいと感じる人が多いでしょう。SEO分析に必要なデータだけを抽出した「探索レポート」を自作することをおすすめします。
4.1 自由形式レポートの設定レシピ
以下の設定で、ランディングページごとのSEO効果一覧表が作れます。
- 手法: 自由形式
- ディメンション(行):
- ランディング ページ + クエリ文字列
- 指標(値):
- セッション
- エンゲージメント率
- 平均エンゲージメント時間
- キーイベント(コンバージョン数)
- フィルタ:
- セッションの参照元 / メディア を
google / organicに設定
- セッションの参照元 / メディア を
これで「Google検索から来たユーザー」に限定した、ページごとの成績表が完成します。これを毎月チェックし、「アクセスの多いページ」と「成果の出ているページ」の相関を見ながら、リライトの優先順位を決定します。
今回は、サイト流入後の分析指標である「GA4」の活用法について解説しました。
ここまでで、
・GSCによる「集客の分析」
・GA4による「行動と成果の分析」
が揃いました。
しかし、経営層が最も聞きたいのは「で、いくら儲かったの?」という金額の話です。CV数だけでは、事業への貢献額が見えません。
次回、【第4回】ROI・収益編では、SEOの費用対効果(ROI)を算出するための計算式と、目に見えないコストの考え方について解説します。
「SEO記事1本あたりのコストはどう計算する?」
「LTV(顧客生涯価値)をSEO評価にどう組み込むか?」
マーケティング投資としてのSEOを評価するための、ファイナンス視点を取り入れた内容をお届けします。
SEO効果の測定方法|追うべき指標KPIとレポート作成のポイント【完全ガイド Part 4】
「SEOは広告費がかからないから、無料の集客手段だ」
もし経営者がこのように考えているなら、それは大きな誤解です。SEOは無料ではありません。時間と労力という莫大なリソースを投下する「投資活動」です。
前回(第3回)までは、Googleアナリティクスを使った成果指標(CV数など)の分析を行いました。第4回となる今回は、さらに視座を高め、ファイナンスの視点を取り入れた「ROI(投資対効果)と収益性」の算出方法について解説します。
SEOの価値を金額換算し、「これだけ利益が出ている」と論理的に証明できるようになれば、予算獲得や人員増強の交渉がスムーズになります。
第1章:SEOのROI(投資対効果)算出の方程式
ROI(Return On Investment)とは、投資した費用に対してどれだけの利益が得られたかを表す指標です。SEOにおける基本計算式は以下の通りです。
【SEOのROI計算式】
(SEO経由の粗利 − SEO投資コスト)÷ SEO投資コスト × 100(%)
例えば、SEOに月50万円を投資し、そこから月150万円の粗利が生まれた場合、
(150万 – 50万) ÷ 50万 × 100 = 200%
となり、投資額の2倍の利益を生んでいる優秀な施策であると言えます。
この計算を正確に行うためには、「コスト(分母)」と「リターン(分子)」を正しく定義する必要があります。
第2章:「見えないコスト」を可視化する
多くの担当者が計算を間違えるのは、コストの定義です。外注費だけをコストとして計上し、社内のリソースを無視してしまうケースが後を絶ちません。
2.1 SEOにかかるコストの全容
SEOのコストは大きく分けて「外部コスト」と「内部コスト」があります。
| コストの種類 | 内訳例 |
|---|---|
| 外部コスト (支払った現金) | ・SEOコンサルティング費用 ・外部ライターへの記事発注費 ・分析ツール代(Ahrefs, Semrushなど) ・サーバー、ドメイン費用 |
| 内部コスト (社内人件費) | ・担当者が記事執筆にかかった時間 ・エンジニアがサイト改修にかかった時間 ・定例会議の時間 |
特に重要なのが「内部人件費」です。例えば、時給換算3,000円の社員が1記事書くのに10時間かけたなら、その記事の原価は30,000円です。
これを無視して「0円で集客できた」と報告するのは危険です。正しく人件費を計算に入れることで、「社内で書くべきか、外注すべきか」の経営判断が可能になります。
第3章:リターン(成果)を金額換算する3つの方法
次に、分子となる「リターン」の算出です。ECサイトなら「売上」が明確ですが、BtoBやリード獲得型サイトの場合、どう金額換算すべきでしょうか。
方法1:LTV(顧客生涯価値)から逆算する
リード(問い合わせ)1件あたりの価値を算出する方法です。
【1リードの価値算出式】
平均LTV × 成約率(受注率)例:
・顧客1人あたりの平均生涯利益(LTV):100万円
・リードからの成約率:5%
→ 1リードの価値 = 5万円
この場合、SEOで月間20件のリードが取れたなら、「20件 × 5万円 = 100万円」の価値を生み出したと換算できます。
方法2:広告換算価値(Advertising Value)
「もしこのアクセスをリスティング広告で買ったらいくらかかるか?」という視点です。
SEOツールのAhrefsなどでも表示される指標ですが、自力で計算も可能です。
流入キーワードの平均CPC(クリック単価) × SEO流入数
例:
「システム開発」のCPC相場が1,000円。
そのキーワードでSEO経由で1,000アクセスあった。
→ 1,000円 × 1,000クリック = 100万円分の広告費削減効果
実際に売上が発生していなくても、「広告費をこれだけ浮かせた」という実績は、管理部門に対して強い説得力を持ちます。
第4章:SEO特有の「Jカーブ」を理解させる
SEOのROI評価で最も揉めるのが「時間軸」です。
広告は初月から一定のCPA(獲得単価)で推移しますが、SEOは最初の数ヶ月〜半年はコストばかりかかり、リターンはほぼゼロです。ROIはマイナスになります。
4.1 損益分岐点を超える瞬間
しかし、ある時点(順位が上がり、トラフィックが増える地点)で急激にリターンが伸び、コストラインを追い抜きます。これを「Jカーブ」と呼びます。
さらに、広告は予算を止めれば流入もゼロになりますが、SEO記事は一度上位表示されれば、メンテナンスコストだけで長期間流入を生み続けます。
4.2 ストック資産としての評価
したがって、SEOの評価は単月のPL(損益計算書)だけでなく、「資産価値(BS:貸借対照表)」の視点を持つべきです。
「今月作った記事は、来月以降も、向こう2年間は集客し続ける資産である」と説明することで、初期のマイナスROIを「必要な投資期間」として正当化できます。
今回は、お金の視点からSEOを評価する「ROI・収益編」をお届けしました。
ここまでの第1回〜第4回で、指標の設計から、GSC・GA4の実務分析、そして収益計算まで、必要なパーツはすべて揃いました。
あとは、これらを一枚の「分かりやすいレポート」にまとめるだけです。
次回、いよいよ最終回となる【第5回】レポート・報告編です。
上司やクライアントが一目で状況を理解し、「よし、このまま続けよう」と承認印を押してくれるレポートとは?
Googleの無料BIツール「Looker Studio」を使った自動レポートの作成イメージや、報告時のプレゼンテーションのコツについて総括します。
SEO効果の測定方法|追うべき指標KPIとレポート作成のポイント【完全ガイド Part 5】
「毎月のレポート作成に3日もかかっている」
「分厚いレポートを提出したが、上司は最初の1ページしか見ていない」
全5回にわたる本連載も、今回でフィナーレです。最後にお伝えしたいのは、集めたデータをどう「伝わる形」にするかという「レポーティング(報告)」の技術です。
SEO担当者の仕事は、順位を上げることだけではありません。「SEOという分かりにくい施策の価値を、社内に翻訳して伝えること」も重要な任務です。ここが下手だと、どんなに成果が出ていても「効果が見えない」と言われて予算を削られてしまいます。
最終回となる今回は、Excel地獄から抜け出すための「Looker Studio活用術」と、経営層を唸らせるレポート構成の黄金パターンを解説し、本連載を総括します。
第1章:ダメなレポート vs 良いレポート
まず、「レポートの目的」を再定義しましょう。レポートは「データを共有すること」が目的ではありません。「次のアクション(意思決定)を合意すること」が目的です。
1.1 相手(決裁者)が見たいものだけを見せる
経営層と現場担当者では、見ている景色が違います。GSCのキーワード別順位を100個並べたエクセルシートを社長に見せても、「で?」と言われるだけです。
| 相手 | 関心事(問い) | レポートすべき指標 |
|---|---|---|
| 経営層・クライアント (決裁者) | 「投資は成功しているか?」 「事業は成長しているか?」 | ・売上 / コンバージョン数(昨対比) ・ROI(投資対効果) ・市場シェア(Share of Search) |
| マーケティング部長 (管理者) | 「進捗に遅れはないか?」 「課題は何か?」 | ・KPI達成率 ・施策の実行状況 ・主要キーワードの順位変動 |
| 現場担当者 (実務者) | 「何を改善すべきか?」 | ・記事ごとのPV / CTR / エンゲージメント ・具体的なクエリ分析データ |
良いレポートとは、相手の階層に合わせて情報を削ぎ落とし、「一目で状況がわかる(サマリーされている)」ものです。
第2章:意思決定を促す「レポート構成案」
月次報告会などで使用するレポートは、以下の4部構成にするのが鉄板です。
1. エグゼクティブサマリー(総括)
冒頭の1枚スライドですべてを語ります。
- 結論:今月は好調だったのか、不調だったのか(晴れ・曇り・雨などのアイコンを使うと直感的)。
- ハイライト:「昨対比で流入が120%成長」「目標CV数まであと5件」など。
- トピックス:「Googleのコアアップデートの影響を受けた」「テレビ露出により指名検索が急増した」など、数字の背景にある要因。
2. 重要KPIの推移(トレンド)
「点(今月の数字)」ではなく「線(過去からの推移)」で見せます。
- 自然検索流入数の推移グラフ(過去12ヶ月分)
- コンバージョン数の推移グラフ
SEOは季節要因(トレンド)を受けやすいため、必ず「前月比(MoM)」だけでなく「前年同月比(YoY)」を併記するのが誠実なレポートです。
3. 施策の実施結果とインサイト
「やったこと」と「わかったこと」です。
「記事Aのリライトを行った結果、順位が15位→4位に上昇し、流入が月間3,000増えました。これにより、○○というニーズがあることが判明しました」
4. ネクストアクション(提案)
ここが最も重要です。報告だけで終わらず、次の承認を取りに行きます。
「記事Aの成功事例を横展開するため、来月は同様の構成で記事B、Cのリライトを行いたいです。ついては、ライター外注費として追加で5万円の予算を承認してください」
第3章:Looker Studioによる「レポート自動化」
毎月、GSCやGA4からデータをCSVでダウンロードし、Excelに貼り付けてグラフを作る作業はやめましょう。その時間は「分析」と「改善策の考案」に使うべきです。
Googleが無料で提供しているBIツール「Looker Studio(ルッカースタジオ)」を使えば、リアルタイムで更新されるダッシュボードが簡単に作れます。
3.1 Looker Studioで可視化すべきダッシュボード例
1枚の画面(キャンバス)に以下の要素を配置します。
- スコアカード(上部):
今月の「セッション数」「CV数」「CVR」を大きな数字で表示し、その下に小さく「前月比」を表示する。 - 時系列グラフ(中部):
過去1年間の流入推移グラフ。GA4とGSCのデータを重ねて表示することも可能。 - 表形式データ(下部):
「ランディングページごとの実績」や「クエリごとの順位変動」ランキング。
一度作ってしまえば、あとは毎月URLを共有するだけです。日付を変更すれば過去のデータも瞬時に見られます。「データ集計作業」をゼロにし、「データを見る時間」を最大化しましょう。
第4章:総括|データドリブンなSEO文化を作る
全5回にわたり、「SEO効果の測定方法」について解説してきました。
SEOは「魔法」ではありません。地道な積み上げと、データに基づいた修正の繰り返し(PDCA)だけが成果を生みます。
- Part 1: KGI/KPIを設計し、ビジネスゴールを明確にする。
- Part 2: GSCで「入り口(検索画面)」のチャンスを探す。
- Part 3: GA4で「中身(エンゲージメント)」と「成果」を測る。
- Part 4: ROIを算出し、投資としての価値を証明する。
- Part 5: 伝わるレポートで、組織を動かす。
データは嘘をつきませんが、データをどう解釈し、どう次のアクションに変えるかは、担当者であるあなたの腕にかかっています。
数字に強くなれば、SEOはもっと面白くなります。
本連載が、あなたのサイトの成長と、あなた自身のマーケターとしてのキャリアアップの一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。