閉業と移転のMEO実務:
口コミ資産を捨てずに新店舗へ引き継ぐ方法
「店を移転することになったが、今の良い評価は消えてしまうのか?」
「ビルが取り壊しで閉業したが、プロフィールの消し方がわからない…」
Googleビジネスプロフィールの「閉業」と「移転」は似て非なるものです。最もやってはいけないミスは、移転なのに旧店舗を『削除』し、新店舗を『新規登録』してしまうこと。これでは、これまで獲得した口コミや検索順位をすべてドブに捨てることになります。
本記事では、多店舗展開における店舗のライフサイクル(開店・移転・閉業)に合わせ、Googleマップ上の情報をどうコントロールすべきか、その「正解」をステップバイステップで解説します。
【本記事の構成(Part 1)】
- 第1章:その店舗は「閉業」か「移転」か?判断基準を整理する
- 口コミを引き継げるケースと、新しく作り直すべきケース
- 業態変更(リニューアル)を伴う場合の注意点
- 第2章:【移転の手順】住所変更だけで口コミを引き継ぐ「住所書き換え」術
- 管理画面で住所を更新するタイミング
- Googleによる「移転」の再審査(ハガキ・動画確認)への備え
- 第3章:移転後の「重複(二重登録)」を防ぐためのチェック体制
- 新住所で勝手に生成されたプロフィールとの統合(マージ)
- 旧住所にピンが残っていないか目視で確認する
第1章:その店舗は「閉業」か「移転」か?判断基準
基本的には、**「同じブランド・同じサービス」を継続するのであれば、住所が変わっても「移転(住所更新)」**として処理します。
資産を引き継げるケース
- 近隣への移転(例:1Fから3Fへ、隣のビルへ)
- 少し離れた場所への移転(例:同じ市区町村内)
- 店名は同じまま、内装やメニューを一部リニューアル
新規作成すべきケース
- 業態が根本的に変わる(例:居酒屋からカフェへ)
- オーナーが変わり、ブランド名も一新される
第2章:【移転の手順】住所を書き換える
移転の場合、既存のアカウントをそのまま使い、住所だけを上書きします。これにより、これまでの口コミ、写真、評価(星の数)がすべて保持されます。
2-1. 実務上のタイミング
移転の2〜3日前、あるいはオープン直後に住所を書き換えます。あまり早く変えすぎると、旧店舗にいるお客様が混乱するため、数日前から「最新情報」の投稿機能を使って「〇月〇日からこちらの住所へ移転します」と告知しておくのが鉄則です。
第3章:移転後の「重複(二重登録)」を防ぐ
住所を変更すると、Googleが「新しい場所に新しい店ができた」と勘違いし、勝手に別のプロフィールを作ってしまうことがあります。
3-1. ビジネスの統合(マージ)
もし新住所に別のプロフィールが自動生成されてしまったら、「情報の修正を提案」から「重複」として自分の管理しているアカウントに統合するリクエストを送ります。二重登録を放置すると、順位の分散や、古い情報への口コミ投稿といったトラブルの原因になります。

【本記事の構成(Part 2)】
- 第4章:完全閉業時の「正しい削除」フロー:焦って削除してはいけない
- 「ビジネスプロフィールの削除」と「閉業マーク」の違い
- マップ上に「閉業」と赤字で表示させることの重要性
- 第5章:閉業後に「勝手に復活」する現象を阻止する方法
- 管理画面から消したはずなのに検索結果に残る理由
- Googleへの最終的な「削除リクエスト」の送り方
- 第6章:【移転の仕上げ】ネット上の「旧住所」を一掃するサイテーション対策
- 公式サイト、SNS、ポータルサイトの住所を同時に書き換える
- Googleに「移転が事実である」と確信させるためのデータ紐付け
- 第7章:移転前のお客様を新店舗へ!「旧ピン」からの誘導導線
- 旧店舗に届く口コミへの返信で新住所を案内する
- 「移転しました」看板の写真をビジネスプロフィールに掲載する
第4章:完全閉業時のフロー:焦って「削除」はNG
店舗を畳む際、すぐに管理画面から「ビジネスを削除」してはいけません。これをやると、オーナー権限だけが消え、マップ上には「営業中」のまま情報が残り続ける「野良プロフィール」化するリスクがあります。
4-1. まずは「永久的に閉業」を設定する
まず行うべきは、管理画面でステータスを「永久的に閉業」に変更することです。これにより、マップ上で「閉業」という赤いラベルが表示され、ユーザーが誤って来店するのを防げます。削除(管理解除)を行うのは、この閉業マークが定着してからです。
第5章:閉業後に「勝手に復活」する現象を阻止する
「閉業にしたはずなのに、数ヶ月後に勝手に営業中になっている」というトラブルは多々あります。これはGoogleが外部サイトから「まだ営業している」という情報を拾ってしまうためです。
5-1. 外部情報のクリーンアップ
食べログやホットペッパー、自社サイトの店舗情報が残っていると、GoogleのAIはそれを見て「営業再開」と誤認します。ビジネスプロフィールの設定変更と同時に、ネット上の全ての関連ページを閉鎖・更新することが、完全な削除には不可欠です。
第6章:移転を確信させる「サイテーション対策」
移転時にGoogleの再審査(ハガキ郵送など)で躓かないためには、Google以外の場所でも「移転後の住所」が正しいと証明する必要があります。
移転時に同時更新すべき項目
- 公式サイト内の店舗概要ページ
- 各種SNS(Instagram、X、Facebook)のプロフィール欄
- 業界ポータルサイト(美容室ならホットペッパー、飲食店なら食べログ等)
- 求人サイト(タウンワーク等)に掲載中の住所
第7章:旧ピンから新店舗への誘導導線
移転直後は、以前の場所を知っているお客様が旧住所で検索することがあります。
7-1. 「移転のお知らせ」投稿の固定
移転後の数ヶ月間は、ビジネスプロフィールの「投稿」機能で、新店舗の地図やアクセス方法を定期的にアップしましょう。また、旧店舗への感謝の口コミをいただいた際も、「ありがとうございます!現在は〇〇に移転し、より広い店内で皆様をお待ちしております」と返信にURLを添えることで、既存顧客をスムーズに新店舗へ誘導できます。

【本記事の構成(Part 3・完結)】
- 第8章:移転後に「検索順位」が落ちた場合のリカバリー施策
- エリア(地名)キーワードの関連性を再構築する
- 新店舗周辺での「ローカルインデックス」を加速させる方法
- 第9章:多店舗展開における「閉店マニュアル」の標準化
- 現場と本部で共有すべき「デジタル清掃」チェックリスト
- 電話番号の解約タイミングと転送設定の注意点
- 第10章:【総括】店舗の歴史を途絶えさせない「攻めの移転管理」
- 「古いピン」を放置することは、ブランドへの不信感に繋がる
- よくある質問(Q&A)と総括
第8章:移転後に「検索順位」が落ちた場合のリカバリー
移転により「地名」の関連性が変わるため、一時的に検索順位が不安定になることがあります。これを最短で回復させるには、Googleに「新しい場所での存在感」を示す必要があります。
8-1. 新住所での「ローカル投稿」の強化
移転後1ヶ月間は、通常よりも高い頻度で「最新情報」を投稿してください。その際、「〇〇駅徒歩3分」「〇〇通り沿い」といった新しいエリアのキーワードを意図的に含めることで、Googleのアルゴリズムに新住所との関連性を早く学習させることができます。
第9章:多店舗展開における「閉店マニュアル」の標準化
多店舗を運営している場合、1店舗の閉店処理が漏れると、ブランド全体のNAP情報の信頼性を損ないます。本部主導で以下のチェックリストを遂行しましょう。
閉店時のデジタルクリーンアップ・リスト
- Googleビジネスプロフィール: ステータスを「永久的に閉業」へ変更
- 公式サイト: 店舗一覧から削除し、必要であれば「近隣店への案内」を出す
- SNSアカウント: プロフィール欄に「〇月〇日をもって閉店いたしました」と明記し、更新を停止(または削除)
- 電話: 解約前に、可能であれば「移転先・近隣店への案内アナウンス」を1〜3ヶ月流す
第10章:【総括】店舗の歴史を途絶えさせない「攻めの移転管理」
店舗の移転や閉業は、単なる事務手続きではありません。それは、「これまでのお客様との絆をどう次へ繋げるか」というブランディングの極めて重要なプロセスです。
「古いピンがそのままになっている」「移転したのに口コミがゼロからになっている」といった不備は、お客様を迷わせるだけでなく、店舗の丁寧な姿勢を疑わせる原因にもなります。
正しく情報を引き継ぎ、過去の評価を背負って新しい場所でスタートを切る。このデジタル上の「引越し作業」を完璧にこなすことこそが、MEO担当者に求められる「資産を守り、育てる力」なのです。
移転・閉業に関する よくある質問(Q&A)
A. はい、多くの場合で再確認が求められます。 住所の変更保存後に「確認が必要」というステータスに変わることがあります。移転先で郵便物が受け取れる状態になってから、ハガキのリクエスト等を行いましょう。
A. 速やかに「重複」として統合(マージ)を申請してください。 放置すると、Googleからスパムと見なされたり、どちらかのプロフィールが停止されたりする恐れがあります。サポート窓口を通じて「移転に伴う統合」であることを伝えると、口コミの引き継ぎがスムーズにいく場合があります。
【結び】 正しい情報の継承は、信頼の証です。
店舗の形が変わっても、お客様が寄せてくれた「声」や「想い」は変わりません。
MEOにおける適切な移転・閉業処理は、その大切な資産を次なる成長へ繋げるための「架け橋」となります。手続きは少し煩雑に感じるかもしれませんが、その一つ一つの丁寧な対応が、Googleとユーザーの両方から選ばれ続ける「強いブランド」を形作ります。
新しい場所での第一歩が、最高のものになりますように。