店舗の「デジタル資産」を守り抜け!
Googleビジネスプロフィール乗っ取り・改ざん対策
「気づいたら営業時間がデタラメに書き換えられていた…」
「元従業員のアカウントが残っていて、勝手に情報を消されてしまった…」
Googleマップ上の店舗情報は、今や看板や名刺以上に価値のある資産です。しかし、その重要性に反して、管理画面のセキュリティは驚くほど軽視されがちです。悪意のある第三者や、知識のないユーザーによる「改ざん」は、毎日どこかの店舗で起きています。
本記事では、多店舗展開における「オーナー確認」の正しい管理法から、乗っ取りを未然に防ぐセキュリティ設定までを徹底解説します。一度失うと取り戻すのが難しい「店舗の信頼」を、仕組みで守り抜きましょう。
【本記事の構成(Part 1)】
- 第1章:なぜあなたの店が狙われる?「改ざん」と「乗っ取り」の主な手口
- ユーザーによる「情報の修正案」が悪用される仕組み
- オーナー権限のリクエストを放置するリスク
- 第2章:権限管理の鉄則:「メインオーナー」を絶対に個人の手に渡さない
- 退職者がアカウントを抱えたまま消える「管理者不在」の恐怖
- 本部一括管理用アカウントと、店舗用「管理者」権限の使い分け
- 第3章:二段階認証(2FA)の徹底:パスワードだけでは守れない
- 管理用Googleアカウントに多要素認証を必須化する
- 共用PCやスマホでのログイン時に守るべきセキュリティルール
第1章:なぜあなたの店が狙われる?「改ざん」と「乗っ取り」の主な手口
Googleマップは「みんなで地図を良くする」という思想で作られているため、実はオーナーでなくても情報を修正できてしまいます。
1-1. 「情報の修正案」による改ざん
競合他社や悪意のあるユーザーが「この店は閉業している」「電話番号はこれだ」とGoogleに申請し、それが承認されてしまうケースです。GoogleのAIが「正しい」と判断すると、オーナーの許可なく情報が書き換えられます。
1-2. オーナー権限のなりすまし請求
「このビジネスのオーナーですか?」というリンクから、第三者が管理権限をリクエストしてくることがあります。これを誤って承認したり、確認メールを放置したりすると、アカウントを丸ごと乗っ取られる引き金になります。
第2章:権限管理の鉄則:「メインオーナー」を絶対に個人の手に渡さない
多店舗展開において、セキュリティの最大の穴は「人の入れ替わり」です。
店長や担当者の「個人のGoogleアカウント」で店舗登録をさせてはいけません。退職時に連絡が取れなくなると、その店舗のアカウントは永久に「他人のもの」として残り続けます。
必ず「本部が管理する法人用ドメインのGoogleアカウント」をメインオーナーに据えてください。
2-1. 権限の整理:メインオーナー・オーナー・管理者
メインオーナー(本部の共有アカウント)は1つ。各店の店長には「管理者(Manager)」権限のみを付与し、店舗情報の削除や、他のユーザーの追加・削除ができないように制限をかけるのが基本です。
第3章:二段階認証(2FA)の徹底:パスワードだけでは守れない
どれほど強固なパスワードを設定しても、流出のリスクはゼロではありません。多店舗を統括するメインアカウントには、必ず二段階認証を導入してください。
3-1. 認証用スマホの管理
二段階認証のコードを受け取るデバイス(スマホ)は、個人の端末ではなく、本部の「管理用端末」として固定しましょう。特定の個人に依存しない体制を作ることが、長期的なセキュリティに繋がります。

【本記事の構成(Part 2)】
- 第4章:改ざんを「自動でブロック・復元」する設定とツール
- Googleからの「情報の修正」通知をリアルタイムでキャッチする
- 一括管理SaaSによる「自動同期・上書き」機能の活用
- 第5章:フィッシング詐欺への警戒:Googleを装った偽メールの見分け方
- 「オーナー権限のリクエスト」が届いた際の初動対応
- 偽のログイン画面に誘導する「警告メール」の正体
- 第6章:定期的な「ユーザー権限監査」の実施フロー
- 3ヶ月に一度、不要な権限(退職者・外部業者)を棚卸しする
- 外部のMEO業者に権限を渡す際の「期間」と「範囲」の限定
- 第7章:サイバー攻撃の標的:店舗の「ウェブサイト」との連動
- サイトが改ざんされるとGoogleビジネスプロフィールのURLも書き換わる
- ドメインの更新忘れが引き起こすアカウント乗っ取りの仕組み
第4章:改ざんを「自動でブロック・復元」する設定とツール
Googleは、ユーザーの修正提案を勝手に反映させてしまうことがあります。これに対抗するには「監視の自動化」が必要です。
4-1. 通知設定の最適化
管理画面の「設定」から、情報の修正に関する通知をすべてオンにします。これにより、第三者が情報を書き換えた瞬間にメールが届くため、即座に「破棄(元に戻す)」の判断ができます。
4-2. SaaSツールによる「情報の自動上書き」
CanlyやYextなどの一括管理ツールには、「マスターデータ保護機能」があります。Google側で勝手に情報が書き換えられても、ツール側で保持している「正しいデータ」で即座に上書きし直すため、実質的に改ざんを無効化できます。多店舗管理においては、これが最強の防衛策となります。
第5章:フィッシング詐欺への警戒:Googleを装った偽メールの見分け方
アカウントを乗っ取ろうとする者は、Googleのふりをしてあなたに接触してきます。
知らない人物から「オーナー権限のリクエスト」が届いた場合、放置してはいけません。放置し続けると、Googleが「オーナーが不在である」と判断し、請求者に権限を与えてしまう可能性があるからです。必ず「拒否」を選択してください。
5-1. 送信元アドレスの確認
「アカウントが停止されました」「再認証が必要です」といったメールが届いたら、送信元が「google.com」ドメインであることを確認してください。不安な場合はメール内のリンクを踏まず、直接Googleビジネスプロフィールの管理画面にアクセスして状況を確認するのが鉄則です。
第6章:定期的な「ユーザー権限監査」の実施フロー
「かつての取引業者」や「元エリアマネージャー」に権限が残ったままになっていることは、セキュリティ上の大きな脆弱性です。
6-1. 四半期に一度のクリーンアップ
スプレッドシート等で「誰にどの権限を与えているか」を管理し、3ヶ月に一度はリストを更新します。退職者だけでなく、契約が終了した広告代理店の権限も速やかに削除しましょう。必要最小限の人数で運用することが、内部不正や誤操作を防ぐ鍵です。
第7章:サイバー攻撃の標的:店舗の「ウェブサイト」との連動
意外な盲点が、Googleビジネスプロフィールに紐づけている「公式サイト」のセキュリティです。
7-1. ウェブサイト改ざんの波及
店舗の公式サイトがハッキングされ、別のURLにリダイレクトされるようになると、Googleは「ビジネスプロフィールに登録されているURLが間違っている」と判断し、勝手に不正なURLへと書き換えてしまうことがあります。MEOのセキュリティは、ウェブサイトのセキュリティ(SSL化やプラグインの更新)とセットで考える必要があります。

【本記事の構成(Part 3・完結)】
- 第8章:万が一「乗っ取られた」際の緊急復旧ロードマップ
- Googleサポートへの通報と本人確認書類の準備
- 被害を最小限に抑えるための「一時閉業」措置
- 第9章:不当な改ざんを繰り返す「悪質ユーザー」への法的対処
- 嫌がらせの証拠(スクリーンショット)の保存方法
- 業務妨害罪としての法的手段の検討
- 第10章:セキュリティを「現場の習慣」にする組織づくり
- 店長会議での注意喚起と事例共有
- 「便利さ」よりも「安全性」を優先する文化の構築
- よくある質問(Q&A)と総括
第8章:万が一「乗っ取られた」際の緊急復旧ロードマップ
もし、管理画面にログインできなくなったり、オーナー権限が第三者に移ってしまった場合は、1分1秒を争う対応が必要です。
8-1. Googleビジネスプロフィール・サポートへの連絡
まずは「ヘルプセンター」からサポートへ問い合わせます。その際、以下の情報を手元に用意しておくとスムーズです。
- ビジネスの正式名称と住所
- メインオーナーだったGoogleアカウントのアドレス
- そのビジネスの正当な所有者であることを証明する書類(営業許可証や公共料金の領収書など)
8-2. 第三者による情報の書き換えを監視
復旧までの間、乗っ取った者が虚偽の情報を発信し続ける可能性があります。別のサブアカウントからマップ上の情報をチェックし、誤った電話番号やURLへユーザーが誘導されないよう、SNS等で注意喚起を行うことも検討してください。
第9章:不当な改ざんを繰り返す「悪質ユーザー」への法的対処
特定の人物が執拗に営業時間を書き換えたり、閉業申請を繰り返したりする場合、それは単なる「悪ふざけ」を超えた犯罪行為です。
9-1. 証拠の保全
Googleから届く「情報の修正」通知メールはすべて保存してください。また、改ざんされた画面のスクリーンショットを時刻と共に残します。これらの証拠は、Googleへの通報時だけでなく、警察や弁護士に相談する際の有力な武器になります。
9-2. 業務妨害としての法的措置
悪質な改ざんによって実損害(来客減など)が出ている場合、偽計業務妨害罪として刑事告訴や、損害賠償請求が認められるケースもあります。あまりに執拗な場合は、企業の法務部や顧問弁護士と連携して毅然とした対応をとることが、将来的な抑止力に繋がります。
第10章:セキュリティを「現場の習慣」にする組織づくり
強固なシステムを導入しても、現場のスタッフが「怪しいメールのリンク」を踏んでしまえば元も子もありません。
10-1. リテラシー教育の継続
「Googleから電話がかかってきてもパスワードやコードは教えない」「管理画面のスクショをSNSに上げない」といった基本的なルールを、定期的に店長会議などで周知します。 「自分たちの店(資産)を守るのは自分たちである」という意識を組織全体に浸透させることが、最大の防御壁となります。
アカウントセキュリティ よくある質問(Q&A)
A. いいえ、原則として「管理者(Manager)」権限のみを付与してください。 オーナー権限(特にメインオーナー)を外部に渡すと、契約トラブル時にアカウントを「人質」にされるリスクがあります。信頼できる業者であっても、権限範囲は最小限に留めるのが鉄則です。
A. はい。 使用していない古いアカウントが残っていると、そのアカウントが乗っ取られた際に気づくのが遅れます。定期的な監査を行い、不要なアカウントは随時削除してください。
【総括】 守りは、最高の攻めである。
Googleビジネスプロフィールは、お客様との「最初の接点」です。ここが汚染されたり乗っ取られたりすることは、お店の看板を泥で塗りつぶされるのと同義です。
「うちは大丈夫だろう」という過信を捨て、権限のガバナンスを整え、二段階認証という鍵をかけ、不審な動きに目を光らせる。一見地味なこれらの積み重ねこそが、多店舗経営のデジタル資産を守り、ブランドの価値を次世代へと繋いでいく唯一の方法です。
鉄壁の守りを固めた上で、自信を持って「攻め」の集客施策に取り組んでいきましょう。