年末年始の営業時間をミスなく一括変更!
多店舗MEO担当者のための「鉄壁ワークフロー」
「せっかくの休日に、営業時間の表示ミスでクレームの電話が入る…」
「全店舗分のデータを手動で修正していたら、一晩かかっても終わらない…」
多店舗展開をしている企業にとって、年末年始や大型連休の営業時間変更は、MEO運用における最大の山場です。Googleマップ上の情報が1日でもズレれば、ユーザーの信頼を失うだけでなく、店舗スタッフへの負担も増大します。
本記事では、Googleビジネスプロフィールの「特別営業設定」を軸に、人的ミスを物理的に排除し、最短時間で全店の一括変更を完了させるワークフローを伝授します。これさえあれば、もう連休前の深夜作業に怯える必要はありません。
【本記事の構成(Part 1)】
- 第1章:絶対にやってはいけない「通常営業時間の書き換え」
- なぜ「特別営業時間」機能を使わなければならないのか?
- 元に戻す作業で発生する「致命的なミス」の正体
- 第2章:スケジュール逆算:いつから準備し、いつ実行すべきか
- 1ヶ月前:現場への営業時間ヒアリングとデッドライン設定
- 2週間前:Googleビジネスプロフィールへのデータ反映
- 第3章:ミスを根絶する「ヒアリングシート」のフォーマット
- 「店長任せ」を卒業し、選択式で回答を集める
- CSVインポートにそのまま使えるデータ構造の作り方
第1章:絶対にやってはいけない「通常営業時間の書き換え」
多店舗管理の初心者が最も陥りやすい罠が、通常の営業時間を直接書き換えてしまうことです。これは極めてリスクの高い手法です。
1-1. 書き換えが「二度手間」と「ミス」を生む
通常の営業時間を「12/31〜1/3は休業」と書き換えると、連休が終わった後に「全店舗を元の営業時間に手動で戻す」という膨大な作業が発生します。ここで戻し忘れが発生すると、1月中旬になっても「休業中」と表示され続け、機会損失が止まらなくなります。
1-2. 「特別営業時間」機能の徹底活用
Googleには「特別営業時間(Special hours)」という項目があります。これは特定の日時だけ営業時間を上書きする機能で、期間が過ぎれば自動的に通常の営業表示に戻ります。一括変更の鉄則は、この機能以外を使わないことです。
第2章:スケジュール逆算:いつから準備し、いつ実行すべきか
直前になって慌てると必ずミスが起きます。本部は1ヶ月前から動く必要があります。
推奨スケジュール(年末年始の場合)
- 11月第4週: 各店・各エリアへの営業時間調査開始
- 12月第2週: ヒアリング完了・マスターデータ作成
- 12月第3週: Googleへの一括インポート実施(反映に時間がかかる場合があるため)
- 12月25日前後: マップ上での最終目視確認
2-1. 反映のタイムラグを考慮する
特に多店舗の一括更新は、Google側の審査や反映に数日かかるケースがあります。25日までには設定を完了させておくのが、精神衛生的にも安全です。
第3章:ミスを根絶する「ヒアリングシート」のフォーマット
現場からの報告が「12/31は18時まで、三が日は休み」といったメールやチャットの文章だと、本部の集計時に必ず解釈のミスが起きます。
3-1. 入力形式を制限する
スプレッドシートやGoogleフォームを使い、以下のように回答を制限します。
- 選択肢: 「通常営業」「短縮営業」「定休日」「臨時休業」から選択
- 時間入力: 「09:00-18:00」のように、Googleが推奨する形式で入力させる(全角はASC関数で強制半角化)
3-2. インポート用CSVとの連動
ヒアリングシートの列を、Googleビジネスプロフィールの「一括アップロード用CSV」の形式に合わせておけば、コピー&ペーストだけで準備が完了します。この「手入力の排除」こそが、ミスを根絶する最大のポイントです。

【本記事の構成(Part 2)】
- 第4章:Google公式ツールを活用した「CSV一括インポート」の実践
- 一括アップロード用テンプレートの正しい作り方
- 「閉業」と「休業」を間違えないためのフラグ設定
- 第5章:一括管理SaaSを利用している場合の最短ルート
- 複数店舗の特別営業時間を1クリックで同期するメリット
- API連携による反映速度の向上とエラー検知
- 第6章:「最新情報」の投稿機能を併用して周知を完璧にする
- 営業時間変更の「バナー画像」を全店一斉に投稿する
- 投稿内に「予約ボタン」や「メニュー」を配置して導線を確保
- 第7章:サイテーションの整合性:公式サイト・他媒体との同時修正
- Googleマップだけ直して他を忘れる「情報の不一致」を防ぐ
- 修正漏れを防ぐための「媒体別チェックリスト」運用
第4章:Google公式ツールを活用した「CSV一括インポート」の実践
10店舗以上を管理している場合、一つ一つの管理画面を開くのは非効率です。Googleビジネスプロフィールの「一括アップロード」機能を使い、CSVファイルで一気に流し込みます。
4-1. 特別営業時間の入力ルール(CSV版)
CSVファイルでは、特別営業時間は「日付: 開始時間-終了時間」の形式で記述します。
例:2024-12-31: 09:00-18:00, 2025-01-01: x
「x」は終日休業を意味します。この書式を1文字でも間違うとエラーになるため、スプレッドシートの関数で自動生成した文字列を貼り付けるのが安全です。
4-2. エラーが出た際の対処法
一括アップロード時にエラーが出る主な原因は「住所の不一致」や「店舗コードの重複」です。特別営業時間をアップロードする前に、必ず最新の店舗リストをエクスポートし、その「店舗コード」をキーにしてデータを結合させてください。
第5章:一括管理SaaSを利用している場合の最短ルート
CanlyやYextなどのMEO一括管理ツールを導入している場合、CSVの作成すら不要になるケースがあります。
5-1. カレンダーUIでの一括設定
多くのツールでは、カレンダー画面で日付を選び「全店舗を選択 > 一括適用」とするだけで設定が完了します。Googleビジネスプロフィールだけでなく、AppleマップやYahoo!プレイスなど、複数の媒体を同時に更新できるため、作業時間が10分の1以下に短縮されます。
5-2. 反映失敗を防ぐ「同期チェック機能」
ツールの利点は、Google側で反映が拒否された場合に「アラート」が出る点です。手動運用では気づきにくい「Googleによる情報の差し戻し」を即座に把握し、再修正できるのは多店舗展開における大きな安心材料となります。
「最新情報」の投稿機能を併用して周知を完璧にする
営業時間の項目を書き換えるだけでは、ユーザーの目には留まりにくいものです。特に年末年始は、ユーザーも「本当に営業しているのか?」と半信半疑です。
6-1. 視覚的に伝える「年末年始営業のご案内」投稿
全店舗のGoogleビジネスプロフィールに、「年末年始の営業スケジュール一覧」の画像を添付した投稿を一斉配信します。 「最新情報(投稿)」として表示されることで、店舗を検索したユーザーに「この店はちゃんと情報を更新している(=信頼できる)」という安心感を与え、競合他社への流出を防ぎます。
第7章:サイテーションの整合性:公式サイト・他媒体との同時修正
MEOの基本は「情報の整合性」です。Googleマップの情報だけが新しく、公式サイトやポータルサイトの情報が古いまま(あるいはその逆)だと、サイテーション(情報の引用)の信頼度が下がり、順位に悪影響を及ぼす可能性があります。
7-1. 「情報のハブ」をスプレッドシートに置く
NAP管理表(第20章参照)に「特別営業時間」の列を追加し、そこを起点に全媒体へ情報を展開します。
修正順序の鉄則:
- 公式サイト(最優先)
- Googleビジネスプロフィール
- ポータルサイト(食べログ、ホットペッパー等)
- SNS(Instagram、X等のプロフィール欄や固定投稿)

【本記事の構成(Part 3・完結)】
- 第8章:実施後の「サンプリング監査」:反映漏れを執念深く探す
- シークレットモードでの目視確認が最強の防御
- 主要なハブ店舗と、設定ミスが起きやすい「変則営業店」を狙い撃つ
- 第9章:連休明けの「通常復帰」確認:自動復帰を過信しない
- 「特別営業」期間終了後の表示ステータスをチェックする
- 祝日明けに多い「Googleによる勝手な情報修正」への対応
- 第10章:多店舗MEO担当者のための「連休前最終チェックリスト」
- これだけ見れば安心して休める!全10項目の点検表
- よくある質問(Q&A)と総括
第8章:実施後の「サンプリング監査」:反映漏れを執念深く探す
データのインポートが完了し、管理画面上で「公開済み」になっても安心は禁物です。Googleの検索結果に実際に反映されるまでには、データの整合性によるタイムラグが発生します。
8-1. シークレットモードでの目視確認
ログイン状態のブラウザではキャッシュが残っている可能性があるため、必ずブラウザのシークレットモード(プライベートブラウズ)で検索してください。「店舗名 + 年末年始」などで検索し、ビジネスプロフィールの「営業時間」欄に「〇月〇日は営業時間が異なる可能性があります」または「(設定した正確な時間)」が表示されているかを確認します。
8-2. 「変則店」を重点的にチェック
全店共通のスケジュールではない店舗(ビルイン店舗で館の休館日に合わせる店など)は、CSV作成時にミスが発生しやすいポイントです。全店舗を見るのが難しい場合は、こうした「イレギュラー店舗」を5〜10件ピックアップして監査するだけで、システム的なミス(列のズレなど)を早期発見できます。
第9章:連休明けの「通常復帰」確認:自動復帰を過信しない
「特別営業時間」の最大のメリットは自動復帰ですが、稀にGoogleがユーザーからの「修正提案」や「他媒体の情報」を拾ってしまい、勝手に営業時間を書き換えてしまう(オレンジ色の文字で修正案が出る状態)ことがあります。
9-1. 仕事始めの「管理画面一括チェック」
連休明け最初の業務として、管理画面の「情報の修正」ステータスを一括確認します。もしGoogleによる勝手な修正案(オレンジ色の表示)が出ていれば、速やかに「破棄」または「承認」を行い、正しい通常営業の状態を確定させます。これを放置すると、誤った営業時間が定着してしまうリスクがあります。
第10章:多店舗MEO担当者のための「連休前最終チェックリスト」
本部の担当者が安心して休暇に入るための、最終点検リストを作成しました。これらに全てチェックがつけば、準備は完璧です。
- □ 特別営業時間(Special hours)で設定し、通常時間を直接書き換えていないか
- □ 12/31〜1/3など、該当日付がすべて網羅されているか
- □ 「休業」と「短縮営業」が混同されていないか(特に24時間営業店)
- □ 「最新情報(投稿)」で営業時間案内の画像を全店配信したか
- □ 公式サイトの「お知らせ」とGoogleマップの情報は一致しているか
- □ 緯度経度や電話番号など、他の重要NAPを誤って上書きしていないか
- □ 管理画面に「Googleによる修正(オレンジ文字)」が残っていないか
- □ サンプリングによる目視確認を3〜5店舗以上行ったか
- □ 連休中にトラブルがあった際の、現場から本部への連絡ルートは確定しているか
- □ CSVのマスターデータ(正解データ)はバックアップしてあるか
営業時間一括変更 よくある質問(Q&A)
A. これはエラーではなく、Googleが「祝日なので通常とは違うかもしれませんよ」とユーザーに注意喚起している仕様です。あなたが正しく設定していれば、その警告文の下に、あなたが入力した正確な営業時間が表示されます。未設定の場合はこの警告だけが出て、ユーザーを不安にさせます。
A. 判明した時点で即座に特別営業時間を上書きしてください。一括管理ツールがあれば数分で完了しますが、ない場合はCSVを再作成してインポートします。反映が間に合わない可能性がある場合は、店舗名に一時的に「(本日休館)」と入れる裏技もありますが、ガイドライン違反のリスクがあるため、まずは「投稿」と「特別営業時間」で対応するのが正攻法です。
【総括】 正確な情報は、現場への最大の思いやり。
年末年始の営業時間管理は、単なるデータ更新作業ではありません。
正しい情報を発信することは、寒い中足を運んでくださる「お客様」への誠実さであり、同時に、誤った情報によるクレーム対応に追われる「店舗スタッフ」を守る盾でもあります。
「特別営業時間」を軸にした鉄壁のワークフローを一度構築してしまえば、それは毎年、そしてGWや盆休みにも使える「組織の資産」になります。
仕組みでミスを封じ込め、すべての店舗とユーザーが、気持ちよく連休を過ごせる環境を作り上げましょう。