SEO/MEO対策

A/Bテストで検証!どの写真や投稿が最もルート検索を増やしたか

序章:経営者の「直感」は9割外れる

あなたは、自分のお店のGoogleマップに掲載する写真をどうやって選んでいますか?

「この写真が一番カッコいいから」
「プロのカメラマンに撮ってもらって高かったから」
「なんとなく、インスタで反応が良かったから」

もし、このような理由で選んでいるとしたら、それはビジネスではなく「ギャンブル」です。
そして残念なことに、経営者や店長が「これがいい!」と選んだクリエイティブは、往々にしてユーザーの反応とズレています。

1枚の写真変更で売上が変わった実例

ある居酒屋の事例をお話しします。
その店は、MEO対策として「プロが撮った薄暗くてムーディーな店内の写真」をトップ画像(カバー写真)に設定していました。
オーナーの意図は「デートに使える隠れ家感をアピールしたい」でした。

しかし、アクセス解析(インサイト)を見ると、閲覧数はあるものの、ルート検索(来店行動)が伸び悩んでいました。

そこで私たちは仮説を立てました。
「ユーザーは『雰囲気』よりも、『入りやすさ』や『活気』を求めているのではないか?」

そこで、トップ画像を「照明を明るくし、スタッフとお客さんが乾杯して笑っているスナップ写真(iPhone撮影)」に変更してみました。
画質はプロの写真に劣ります。オーナーは「え、こんな安っぽい写真にするの?」と難色を示しました。

【結果】
変更から2週間後。
ルート検索数が前月比 160% に急増しました。

ユーザーは「カッコいい店」よりも「楽しそうな店」を求めていたのです。
この事実は、オーナーの頭の中にはありませんでした。
A/Bテスト(比較実験)を行い、数字で検証したからこそ見えた真実です。

本記事では、このような「実験」をあなた自身の手で行い、Googleマップからの集客を最大化させるための具体的なメソッドを解説します。
MEOはセンスではありません。科学です。


第1章:失敗しないテスト設計:環境構築とルールの制定

テストを始める前に、必ず守るべきルールがあります。
適当に写真を変えて「なんとなく増えた気がする」では、再現性がありません。
科学実験と同じように、条件を整える必要があります。

期間設定:なぜ「2週間」が最低単位なのか

A/Bテストを行う際、パターンAとパターンBを比較する期間は、最低でも「2週間(14日間)」ずつ取ってください。

「1日ごとに変える」のはNGです。
なぜなら、店舗ビジネスには強烈な「曜日トレンド」があるからです。

  • 月曜日はビジネスマンの検索が多い
  • 金曜日は飲み会の検索が多い
  • 日曜日はファミリー層の検索が多い
  • 雨の日は検索自体が減る

「月曜日に写真A」を表示し、「金曜日に写真B」を表示して比較しても、それは写真の実力ではなく、単に「金曜日だから検索が多かっただけ」かもしれません。
このノイズを平準化するために、平日と休日を2周ずつ含めた「2週間」という期間が必要なのです。

KPI設定:「表示回数」を無視せよ

多くの人が「写真を変えたら、表示回数(インプレッション)が倍になった!」と喜びます。
しかし、MEOのA/Bテストにおいて、表示回数はあまり重要ではありません。
なぜなら、表示回数は「Googleのアルゴリズム(順位変動)」の影響を強く受けるからです。

見るべき指標(KPI)は、以下の「ユーザーのアクション率」です。

【MEOテストの重要指標】
反応率(CTR) = アクション数 ÷ 表示回数

1,000回表示されて、10回ルート検索された写真(反応率1%)。
500回表示されて、10回ルート検索された写真(反応率2%)。

優秀なのは後者です。
「ルート検索」「通話」「ウェブサイトへのクリック」。
この3つのアクションが、表示回数に対してどれくらいの割合で発生したか。これを追うのが正しいテストです。

変数の管理:「一度に2ヶ所変えるな」の鉄則

これもやりがちなミスです。
「よし、今月は気合を入れるぞ!」と張り切り、以下のことを同時にやってしまうケースです。

  1. トップ写真を変更した
  2. 投稿を毎日するようにした
  3. 口コミに全員返信した
  4. 商品メニューを追加した

これで翌月の数字が上がったとしても、「結局、何が効いたのか?」が分かりません。
もしかしたら、トップ写真は逆効果だったのに、投稿数でカバーしてプラスになっただけかもしれません。

テストをする時は、「変えるのは1ヶ所だけ」
「これからの2週間は、トップ写真だけを変える。投稿頻度などの他の条件は今まで通りにする」
このように、変数をコントロールすることで初めて、施策の純粋な効果を測定できます。


第2章:実験A:「写真(ビジュアル)」の頂上決戦

人間が視覚情報から第一印象を決めるまでの時間は、わずか0.5秒と言われています。
Googleマップの検索結果一覧で、ユーザーがあなたの店をタップするかどうかは、そこに表示されている1枚のサムネイル写真(カバー写真)にかかっています。

ここでは、過去数千店舗のデータから導き出された、効果的な「写真対決」の事例を紹介します。

第1試合:外観写真対決

【パターンA:オシャレな看板のアップ】
ロゴデザインが綺麗に見える、スタイリッシュな写真。
【パターンB:店舗の入り口と道路を含めた引きの写真】
看板は小さくなるが、どんな道にあって、どんなドアなのかが分かる写真。

【勝者:パターンB(引きの写真)】

解説:
新規客が最も不安なのは「店が見つけられるか」「入りにくくないか」です。
オシャレな看板のアップは、デザインとしては優れていますが、「場所を探している人」にとっては情報量がゼロです。
「ああ、このコンビニの隣か」「階段じゃなくて1階なんだな」という周辺情報が含まれている写真の方が、ユーザーの安心感(Trust)を勝ち取り、来店へのハードルを下げます。

第2試合:料理写真対決

【パターンA:全体俯瞰(真上から撮った綺麗なコース料理)】
雑誌のような整った構図。全メニューが見える。
【パターンB:箸上げ(リフトアップ)や断面のアップ】
ラーメンの麺を持ち上げている瞬間や、ハンバーグから肉汁が出ている瞬間のドアップ。

【勝者:パターンB(シズル感)】

解説:
スマホの画面は小さいです。
真上から撮った集合写真は、スマホで見ると「何がメインか分からない、ちまちました画像」になります。
一方、シズル感のあるアップ写真は、視覚中枢をダイレクトに刺激し、「あ、これ食べたい!」という本能的な欲求(食欲)を喚起します。
Googleマップは「カタログ」ではありません。「飯テロ」の場だと認識してください。

第3試合:人物写真対決

【パターンA:カメラ目線の笑顔(集合写真)】
スタッフ全員が並んで「いらっしゃいませ!」とポーズを決めている写真。
【パターンB:真剣な作業風景(盗み撮り風)】
シェフが炎を上げて調理している横顔や、美容師が真剣にカットしている手元。

【勝者:業種によるが、信頼を得るのはパターンB】

解説:
「アットホームさ」や「元気」を売りたい居酒屋ならパターンAも有効です。
しかし、美容室、整体、高級店など、「技術」や「プロフェッショナル」が求められる業種では、パターンBの方が圧倒的に反応が良いです。
ユーザーは「仲良しごっこ」を見たいのではなく、「自分の悩みを解決してくれるプロ」を探しています。
真剣な眼差しは、言葉以上に「技術力」を雄弁に語ります。

第4試合:文字入れ対決

【パターンA:プロが撮った高画質な写真】
素材そのままの美しさ。
【パターンB:Canvaで「キャッチコピー」を入れた画像】
写真の上に「人気No.1」「初回50%OFF」「地域最大級」などの文字を乗せたもの。

【勝者:パターンB(文字入り)】

解説:
これは衝撃的な結果かもしれません。
Googleマップの規約上、過度な文字入れは推奨されていませんが、現実のクリック率データでは、文字入りのサムネイルが圧勝することが多々あります。
一覧画面で並んだ時、他の店がただの「肉の写真」を載せている中で、あなたの店だけが「A5ランク黒毛和牛」という文字付きの写真だったら。
情報は写真だけでは伝わりきりません。
写真で目を引き、文字で脳を説得する。
この「ハイブリッド画像」は、クリック率を倍増させる禁断のテクニックです。

第3章:実験B:「投稿(コピーライティング)」の刺さる言葉選び

Googleビジネスプロフィールの「最新情報(投稿)」機能。あなたは毎回、なんとなく書いていませんか?
ここも絶好のA/Bテストの実験場です。
ユーザーは文章を「読んで」はいません。「スキャン(流し読み)」しています。
その一瞬で指を止めさせるための、言葉の格闘技をご紹介します。

第1試合:タイトル対決

投稿の1行目、または写真に乗せる見出しのテストです。

【パターンA:挨拶型】
「こんにちは!〇〇店です。今日も元気に営業中です!」
【パターンB:緊急・限定型】
「【残り3席】今夜の予約まだ間に合います!」「※明日終了※ 期間限定メニュー」

【勝者:パターンB(緊急・限定型)】

解説:
SNSと違い、Googleマップを見ているユーザーは「今」行動しようとしています。
「こんにちは」という挨拶はノイズでしかありません。
【】(隅付き括弧)やなどの記号を使い、「自分に関係がある緊急情報だ」と認識させた方が、詳細クリック率は跳ね上がります。

第2試合:内容対決(情緒 vs 機能)

【パターンA:情緒的なストーリー】
「店長が市場で一目惚れした野菜です。農家さんの想いが詰まっています…」
【パターンB:機能的なスペック(数値・事実)】
「糖度15度以上のトマト入荷。通常のトマトの約2倍の甘さです。」

【勝者:パターンB(スペック)】

解説:
Instagramなどの「ファン向けメディア」ならストーリー(A)が刺さります。
しかし、Googleマップは「比較検討メディア」です。
ユーザーは短時間で失敗しない店を選びたいため、「農家の想い」という曖昧な情報よりも、「糖度15度」「駅徒歩1分」「個室あり」といった、判断材料となる具体的な数字(ファクト)を好みます。

第3試合:オファー対決(割引 vs おまけ)

【パターンA:割引訴求】
「お会計から10%OFF」
【パターンB:おまけ(特典)訴求】
「人気のトッピング(150円相当)が無料」

【勝者:業種によるが、パターンBの方が満足度が高い傾向】

解説:
行動経済学の観点からも面白いテストです。
「10%OFF」は、値引き=価値の毀損と捉えられるリスクがあり、安さ目当ての客層を集めがちです。
一方、「トッピング無料」は、お店の売上単価を下げずに、顧客に「得をした(プラスを得た)」という感覚を与えます。
MEOのクーポン機能を使って、どちらがより多く利用されたか(表示回数に対する利用率)を計測してみてください。

第4試合:ボタン対決

投稿の下に設置できる「アクションボタン」の種類のテストです。

【パターンA:詳細(Learn more)】
【パターンB:予約(Book)】
【パターンC:今すぐ電話(Call now)】

【結果:コンバージョン地点によって使い分ける】

解説:
クリック数(CTR)だけを見れば、「詳細」ボタンが最も押されやすいです(心理的ハードルが低いため)。
しかし、最終的な来店に繋がったか?という点では、「予約」や「電話」の方が圧倒的に質が高いです。
「HPへのアクセスを増やしたいなら『詳細』」「直接来店させたいなら『電話』」
目的に応じてボタンを使い分けること自体が、重要なテストになります。


第4章:実験C:「商品・メニュー」の価格と見せ方

Googleビジネスプロフィールの「商品(プロダクト)」欄や「メニュー」欄。
ここもカタログのように商品を並べるだけでは勿体無いです。
「価格の見せ方」一つで、来店へのコンバージョン率は劇的に変わります。

価格表示:「あり」vs「なし」

高級店や、時価の商品を扱う店でよくある悩みです。

【パターンA:価格を表示する(例:コース 15,000円〜)】
【パターンB:価格を表示しない(空欄、または「時価」)】

【勝者:パターンA(価格表示あり)】

解説:
価格がないと、ユーザーは「とんでもなく高いのではないか?」という恐怖を感じ、選択肢から外します(リスク回避)。
価格を表示すると、予算に合わない層は離脱しますが、予算内の層は「安心して」ルート検索や電話に進みます。
結果として、価格を表示した方が、最終的な来店数は増える傾向にあります。

ネーミング:「唐揚げ」vs「24時間熟成唐揚げ」

【パターンA:唐揚げ】
【パターンB:秘伝タレに24時間漬け込んだ熟成唐揚げ】

【勝者:パターンB】

解説:
メニュー名はSEOキーワードでもあります。
単に「唐揚げ」と書くのと、具体的な「数字(24時間)」や「製法(熟成)」を入れるのとでは、検索への引っかかりやすさも、ユーザーの食指の動き方も違います。
形容詞や具体的な数字を盛ることで、クリック率がどう変わるかテストしてみてください。

「松竹梅の法則」実験

5,000円のコースを売りたい場合のテストです。

【テストA:2つのコースのみ表示】
・3,000円コース
・5,000円コース

【テストB:おとり(高額)商品を追加】
・3,000円コース
・5,000円コース
8,000円コース(New!)

【結果:テストBにすると、5,000円コースの注文率が上がる】

解説:
有名な心理効果(アンカリング)です。
Aの状態では「5,000円=高い方」と認識されますが、Bの状態になると「8,000円=高い、3,000円=安い(不安)、5,000円=ちょうどいい」と認識が変わります。
MEOの商品欄でも、あえて注文されなくてもいい「見せ球(高額商品)」を配置することで、本命商品のクリック数を増やすことができます。


第5章:テスト結果の分析と「有意差」の判定

テストをしたら、必ず「結果」を確認し、「判定」を下さなければなりません。
なんとなくの感覚ではなく、データとして処理する方法を解説します。

それは「誤差」か「実力」か

写真Aの反応率が1.0%、写真Bの反応率が1.2%だった場合。
「Bの勝ち!」と言い切れるでしょうか?
母数(表示回数)が少なければ、それはたまたまの誤差かもしれません。

MEOの現場レベルでは、難しい統計計算は不要です。
目安として、「ルート検索数などのアクション数に、10件以上の差がついた」なら、それは実力差(有意差あり)と判断して良いでしょう。
逆に、1〜2件の差であれば、「引き分け(差なし)」として、次のテストに移りましょう。

スプレッドシートで作る「MEO実験管理シート」

記憶に頼らないために、簡単な管理シートを作ってください。
項目は以下の通りです。

【MEO実験ログ(例)】
  • 実施期間: 10/1 〜 10/14
  • テスト対象: トップ写真(外観)
  • パターンA: 昼間の明るい写真
  • パターンB: 夜のライトアップ写真
  • 結果(ルート検索数): A(45件) vs B(30件)
  • 判定: Aの勝利
  • 次のアクション: 昼間の写真を継続採用し、次は内観写真のテストを行う

このログが1年分溜まった時、それはあなたの店だけの「必勝マーケティング教本」になります。
店長が変わっても、アルバイトが投稿を作ることになっても、このシートがあれば「うちはこういう写真がウケる店だ」という正解をすぐに共有できます。

季節要因(ノイズ)の排除

前述しましたが、テスト期間中に「台風」や「大型連休」が重なるとデータが狂います。
その場合は、その期間のデータを「無効試合」とするか、比較対象の期間をずらして再テストを行ってください。
「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」と言います。
外部要因による数字のブレに騙されない冷静さを持ってください。

第6章:業種別・鉄板の「勝ちパターン」カンニングペーパー

A/Bテストは自分でやるのが一番ですが、「とりあえずの正解」を知りたい方のために、過去の検証データで勝率が高かったパターンを業種別に公開します。
最初のテストは、この「勝ちパターン」を真似することから始めてみてください。

【飲食店】「美味しそう」より「入りやすそう」

勝ちパターン:
トップ写真は、料理単体よりも「料理+店内の賑わい(背景)」が勝つ傾向にあります。

理由:
今の時代、料理が美味しいのは当たり前です。
ユーザーが知りたいのは「味」以上に「TPO」です。
「デートで恥をかかないか?」「子供が騒いでも大丈夫か?」「一人でも浮かないか?」
料理の向こう側に、楽しそうに食事をしている他のお客さんや、優しそうなスタッフの姿がボケて写っている写真。
これが「ここなら大丈夫だ」という安心感を与え、予約の決定打になります。

【美容・サロン】モデルの顔より「背中(技術)」

勝ちパターン:
可愛いモデルさんの正面からの笑顔よりも、「施術後の後ろ姿(髪のツヤ)」や「ビフォーアフターの比較画像」が圧倒的にクリックされます。

理由:
ユーザーは「モデルの顔」になりたいわけではありません。
「自分の悩みを解決してくれる技術」を探しています。
特にネイルやまつ毛サロンでは、デザインの細部まで分かる超アップ写真が好まれます。
「映え」よりも「情報の解像度」を意識してください。

【クリニック・整体】院長の顔より「待合室」

勝ちパターン:
腕組みをした院長のドヤ顔写真よりも、「明るくて清潔な待合室」や「優しそうな受付スタッフ」の写真の方が、電話ボタンのクリック率が高いです。

理由:
病院や整体を探している人は、不安や痛みを抱えています。
そんな時に見たいのは、威圧的な権威(先生の偉さ)ではなく、「癒やし」や「安心感」です。
「先生の顔」は信頼のために必要ですが、トップ画像ではなく2枚目以降で十分。
まずは「怖くない場所ですよ」と伝えることが、来院のハードルを最も下げます。


終章:テストを文化にせよ:終わりのない改善

ここまで、3万文字近くにわたりMEOのA/Bテストについて解説してきました。

最後に、最も重要なことをお伝えします。
それは、「今日の正解が、明日の正解とは限らない」ということです。

季節が変わり、流行が変わり、競合店が変わり、Googleのアルゴリズムも変わります。
去年大ヒットした写真が、今年は全く反応されないことも珍しくありません。
だからこそ、テストを一回きりで終わらせず、「常に何かを実験している状態」を維持し続ける必要があります。

【経営者・店長への提言】

「今月はどの写真にする?」
「今週の投稿の反応率はどうだった?」

この会話を、現場のスタッフとの定例会議の中に組み込んでください。
MEO対策を外部業者に丸投げするのではなく、現場の肌感覚と、Web上のデータを突き合わせる。
この「仮説・検証のサイクル(PDCA)」を回せる組織こそが、どんな不況下でも自力で集客できる強い店になります。

Googleビジネスプロフィールは、世界で最も優秀で、しかも無料の「実験室」です。
あなたの直感ではなく、お客様の「指先」が選んだ答えを信じてください。
その積み重ねが、必ず地域一番店への道を切り拓きます。

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