SEO/MEO対策

検索ボリュームの調べ方:MEOでも使えるキーワードプランナー活用術

はじめに:MEOは「勘」ではなく「データ」で勝つ

「このキーワードなら、みんな検索しているはずだ」
「うちは居酒屋だから、とりあえず『居酒屋』で対策しよう」

もしあなたが、このような「肌感覚」だけでMEO対策(Googleマップ対策)のキーワードを決めているとしたら、それは非常に危険な賭けをしています。
なぜなら、「あなたが検索する言葉」と「お客様が実際に検索している言葉」は、往々にしてズレているからです。

MEO対策で確実に成果を出すために必要なのは、勘や度胸ではなく、「客観的な数値(データ)」です。
本記事では、Google公式の最強ツール「キーワードプランナー」を使い、特定の地域・エリアにおける検索ボリュームを正確に把握し、ライバルが見落としている「勝てるキーワード」を発掘する方法を解説します。

【この記事で得られること】
  • 「日本全国」ではなく「あなたの商圏(市区町村)」だけの検索数がわかる。
  • 競合が対策していない、収益性の高いニッチキーワードが見つかる。
  • Googleマップの投稿や説明文に盛り込むべき言葉が明確になる。

第1章:Googleキーワードプランナーの導入と基礎

まずはツールの準備です。キーワードプランナーは、本来Google広告(リスティング広告)を出稿する人のためのツールですが、MEO対策においてもこれ以上のツールは存在しません。

1. 無料版と有料版(広告出稿)の違い

キーワードプランナーはGoogle広告アカウントさえあれば無料で利用できます。
しかし、完全に広告費を使わない「無料版」の状態では、検索ボリュームの表示が「あいまい表示」になってしまうという制限があります。

状態 表示されるデータの例
完全無料(広告費0円) 「100〜1000」「1000〜1万」
※ざっくりとした範囲しか分からない。
少額出稿(数百円〜) 「320」「1,600」
※実数に近い細かい数値が表示される。

【MEO担当者へのアドバイス】
「範囲表示」でも傾向は掴めますが、本気で対策するなら月に数百円でも良いので広告を回し、詳細なデータを見られる状態にすることを強く推奨します。
(※広告キャンペーンを作成し、実際に配信されて課金が発生した段階で詳細表示に切り替わります)

2. キーワードプランナーへのアクセス手順

  1. Google広告にログインする。
  2. 画面右上(または左メニュー)の「ツールと設定」アイコンをクリック。
  3. メニューの中から「プランニング」>「キーワードプランナー」を選択。

これで準備完了です。メイン画面には主に2つの入り口が表示されますが、MEO対策では主に「新しいキーワードを見つける」を使用します。


第2章:MEO特化!「地域(エリア)」を絞り込む技術

ここからが本題です。
多くの人が犯す間違いは、デフォルト設定の「日本(全国)」のまま検索ボリュームを見てしまうことです。

あなたが東京・渋谷で美容室を経営しているとして、「美容室」というキーワードが日本全体で月間100万回検索されていようが、それは何の意味もありません。
知りたいのは「渋谷区(および周辺)にいる人が、どれくらい検索しているか」です。

1. 位置情報設定を「市区町村」レベルに変更する

キーワードプランナーの画面で、以下の手順でエリアを限定します。

【エリア絞り込みの手順】

  1. 「新しいキーワードを見つける」をクリック。
  2. キーワード入力欄の上部にある「日本」というアイコンをクリック。
  3. 地図画面が表示されるので、検索窓にターゲットとする「市区町村名(例:横浜市、新宿区)」を入力。
  4. 候補に出てきた地域名の横にある「ターゲット」をクリック。
  5. 元の「日本」を「×」で削除し、「保存」を押す。

これで、表示される検索ボリュームは「指定したエリア内にいるユーザーによる検索数」に限定されます。
これにより、全国的なビッグワードではなく、「地域内で実際に需要があるキーワード」が浮き彫りになります。

2. 「地域名を含むキーワード」と「含まないキーワード」の違い

エリアを絞り込んだ状態で、以下の2つを比較してみてください。

  • A:「居酒屋」(地域指定:渋谷区)
  • B:「渋谷 居酒屋」(地域指定:渋谷区)

MEO対策において重要なのは、実はAの「地域名を入れない単体キーワード」のボリュームです。
なぜなら、渋谷にいる人はわざわざ「渋谷 居酒屋」と入力せず、単に「居酒屋」とだけ検索してGoogleマップを開く(ローカル検索する)ケースが圧倒的に多いからです。

この「特定のエリア内での、地名なし検索のボリューム」こそが、MEOで獲得可能な最大パイ(市場規模)を示しています。

第3章:「新しいキーワードを見つける」機能の活用

エリア設定ができたら、いよいよ具体的なキーワード探しです。
ここでは、あなたが思いついたキーワードを広げる「正攻法」と、ライバルからアイデアを借りる「裏技」の2つを紹介します。

1. 軸キーワードから連想ゲームをする(正攻法)

「キーワードから開始」のタブを選び、あなたのビジネスを表す代表的な単語(軸キーワード)をいくつか入力します。

  • 入力例:「整体」「腰痛」「マッサージ」「骨盤矯正」

「結果を表示」を押すと、これらの単語に関連するキーワードが大量に表示されます。
ここで注目すべきは、自分では思いつかなかった「複合キーワード」です。

例えば、「整体」と入れた結果の中に「産後 骨盤 矯正 いつから」「整体 おすすめ 安い」といったキーワードが見つかるかもしれません。
これらは全て、指定したエリア内で実際に検索されている「ユーザーのリアルな悩み」です。

2. 競合サイトのURLからキーワードを抜き出す(裏技)

これこそがキーワードプランナーの真骨頂です。
「ウェブサイトから開始」のタブに切り替え、競合他社(地域でMEO順位が高いライバル店)のWebサイトのURLを入力してみてください。

【ここがポイント!】

Googleは、その競合サイトを解析し、「このサイトはどのようなキーワードで集客しているか」を丸裸にして表示してくれます。
ライバルが意識して対策しているキーワードや、取りこぼしているニッチなキーワードが一覧で手に入ります。

また、個別の店舗だけでなく、ホットペッパービューティーや食べログなどの「ポータルサイトのエリアページ(例:〇〇駅の居酒屋一覧)」のURLを入れるのも非常に有効です。
そのエリアで検索されるあらゆる関連キーワードを網羅的に抽出できます。


第4章:データの正しい読み方(ボリューム・競合性・CPC)

大量のキーワードが表示されましたが、全ての対策をするのは不可能です。
表示された指標(数字)を正しく読み解き、優先順位をつける必要があります。

1. 月間平均検索ボリューム:MEOなら「小」でも勝てる

SEO(ブログ等)では「月間1万以上」のビッグワードが良しとされますが、商圏が限られるMEOでは基準が異なります。

地域を絞った状態であれば、「月間10〜100」「100〜1000」程度でも十分な集客効果があります。
「10」と聞くと少なく感じるかもしれませんが、それは「そのエリアで、その悩みを抱えて検索した人が毎月10人いる」ということです。
その10人全員が来店すれば、店舗ビジネスにとっては大きな売上になります。

2. 競合性:これは「広告」のライバル数だが…

「競合性(低・中・高)」という項目がありますが、これはあくまで「Google広告を出稿しているライバルが多いか」を示しています。
MEO(マップ)の競合度とは直接関係ありません。

しかし、「競合性が高い = 多くの企業が広告費を払ってでも取りたいキーワード」であることを意味します。
つまり、収益に繋がりやすい「美味しいキーワード」である可能性が高いです。

3. ページ上部に掲載された入札単価(CPC)

最も注目すべきは、この「入札単価(CPC)」です。
これは、そのキーワードで広告をクリックしてもらうために、企業が1回あたりいくら払っているか(クリック単価)の目安です。

  • キーワードA: 単価 50円
  • キーワードB: 単価 800円

この場合、キーワードBは「1クリック800円払っても元が取れる」ほど、成約率(来店率)が高い、あるいは客単価が高いキーワードであると推測できます。
MEO対策では、この「単価が高いキーワード」を狙うことで、冷やかしではない「本気のお客様」を集めることができます。


第5章:MEOで狙うべき「お宝キーワード」の選定基準

これまでのデータ分析を踏まえ、実際にGBP(Googleビジネスプロフィール)の投稿や説明文に盛り込むべきキーワードを選定します。

狙い目①:「ボリューム小 × CPC高」のニッチワード

多くの人は「ボリューム大(ビッグワード)」ばかり狙いますが、そこは大手チェーン店などの強豪がひしめいています。

個人店や中小店舗が狙うべきは、「検索数は少ないが、単価が高いキーワード」です。
例えば、「インプラント」単体ではなく、「インプラント 失敗しない 〇〇市」「オールオン4 費用」のような具体的で悩みが深いキーワードです。

これらはMEO競合が少ない割に、来店すれば高単価な売上に直結します。

狙い目②:「地域名なし」+「詳細ニーズ」

第2章でも触れましたが、「地域名」を含まないキーワードこそ、MEOの主戦場です。
キーワードプランナーで見つけた「場所を含まない複合語」をピックアップしましょう。

  • 「個室 デート ディナー」
  • 「子供連れ ランチ 座敷」
  • 「深夜 充電できる カフェ」

これらは、ユーザーが「今いる場所の近く」で探しているニーズそのものです。
これらの言葉をGBPの「投稿」や「商品・サービス」説明文に散りばめることで、そのニーズを持ったユーザーにピンポイントで表示されるようになります。

季節トレンドを先読みする

キーワードプランナーでは、過去12ヶ月などの推移グラフも見ることができます。
特定の月だけ検索数が跳ね上がるキーワード(例:「送別会」「花粉症」「クリスマス」)を見つけたら、そのピークが来る1〜2ヶ月前からMEO対策を仕込みましょう。

ライバルが動き出す前に投稿や写真を充実させておくことで、需要のピーク時にマップ順位のトップを独占することが可能です。

第6章:データを行動に変える:GBPとサイトへの実装

せっかく「勝てるキーワード」を見つけても、それを使わなければ宝の持ち腐れです。
抽出したキーワードを、Googleのアルゴリズムに認識させるための具体的な配置場所を解説します。

1. Googleビジネスプロフィール(GBP)への反映

MEO対策において、キーワードを盛り込むべき箇所は以下の通りです。

【キーワード設置の優先順位】
  • ビジネス説明文: 文脈の中で自然に、ターゲットとなる複合キーワード(例:「個室」「接待」)を含める。
  • 商品・サービス登録: ニッチなキーワードごとに個別のメニューを作成する。(例:「産後骨盤矯正コース」)
  • 投稿(最新情報): 季節トレンドのキーワード(例:「忘年会」「花粉症」)を含めた記事を毎週投稿する。
  • Q&A(質問と回答): 「駐車場はありますか?」などのよくある質問の中に、地名やキーワードを交えて自作自演で回答する。

2. Webサイト・ブログでのコンテンツ化

キーワードプランナーで見つけた「悩み系キーワード(例:iphone 水没 直し方)」は、GBPに書くだけでなく、自社サイトのブログ記事ネタとしても最適です。

そのキーワードをタイトルに入れた記事を書き、その記事の最後で「当店なら修理可能です」とクロージングします。
これにより、Web検索(SEO)からの流入も期待できるだけでなく、Googleに対して「この店はこのトピックの専門家である」という権威性をアピールでき、結果としてマップ順位も上昇します。


終章:MEOは「リサーチ」が9割

ここまで、Googleキーワードプランナーを使ったMEO向けの市場調査について解説してきました。

多くのビジネスオーナーは、何を発信すればいいか分からず、闇雲に日記のような投稿を繰り返してしまいます。
しかし、ツールを使えば答えは全てそこにあります。

  • ユーザーはどこにいるのか?(地域設定)
  • ユーザーはに困っているのか?(関連キーワード)
  • ユーザーはどれくらい本気なのか?(CPC単価)

これらを知った上で対策を行うのと、知らずに行うのとでは、雲泥の差が生まれます。

ぜひ今日から、あなたの商圏エリアのデータを丸裸にし、ライバルが気づいていない「お宝キーワード」で、賢く、効率的に集客を加速させてください。
MEOは、勘ではなくデータで勝てるゲームなのです。

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