動画編集/撮影

映画のような質感(シネマティック)を作る「24fps」と「モーションブラー」の法則



映画のような質感(シネマティック)を作る「24fps」と「モーションブラー」の法則

映画のような質感(シネマティック)を作る「24fps」と「モーションブラー」の法則

映画館で観る映像と、テレビのニュース番組やホームビデオの映像。同じ「動画」なのに、なぜこれほど印象が異なるのでしょうか。高価な機材の違いだけではありません。その答えの核心にあるのが「24fps」というフレームレートと、「モーションブラー」という残像効果の絶妙な組み合わせです。

YouTubeやSNSで「シネマティック」という言葉が溢れる現代。映画のような質感を自分の映像にも取り入れたいと考えるクリエイターは増え続けています。しかし、なぜ24fpsが映画らしさを生むのか、モーションブラーとはそもそも何なのかを正確に理解している人は意外と少ないものです。本記事では、100年以上の映画史が培ってきた「シネマティック」の本質を解き明かし、あなたの映像制作に活かせる具体的な知識と技術をお伝えします。

フレームレートとは何か ― 動画の基本を理解する

フレームレート(Frame Rate)とは、1秒間に何枚の静止画を連続して表示するかを示す数値です。単位は「fps」(frames per second=フレーム毎秒)で表されます。パラパラ漫画を想像してください。紙の枚数が多ければ多いほど、めくったときの動きは滑らかに見えます。60fpsであれば1秒間に60枚、24fpsであれば1秒間に24枚の画像が連続して表示されるわけです。

一般的には、フレームレートが高いほど映像は滑らかに見えます。ゲームの世界では60fps、ときには120fpsや240fpsといった高フレームレートが求められます。一瞬の判断が勝敗を分けるFPSゲームでは、フレームレートの高さがそのままプレイヤーの反応速度に直結するからです。テレビ放送も日本では30fps(正確には29.97fps)が標準で、スポーツ中継などでは動きをより鮮明に捉えるために高いフレームレートが重宝されています。

では、技術的には高いフレームレートで撮影できる現代において、なぜ映画は「あえて」24fpsという低いフレームレートを使い続けているのでしょうか。そこには深い理由があります。

なぜ映画は24fpsなのか ― 歴史が生んだ「偶然の美学」

映画の歴史は19世紀末に遡ります。最初期の映画、いわゆるサイレント映画の時代には、フレームレートは16fps程度が一般的でした。カメラマンが手でクランクを回してフィルムを動かしていた時代であり、フレームレートを上げればフィルムの消費量が増え、製造コストも運搬コストも跳ね上がります。また、上映中にフィルムが切れたり絡んだりするリスクも高まりました。低いフレームレートは、技術的制約とコスト削減の両面から選ばれた妥協点だったのです。

転機が訪れたのは1920年代後半。映画に音声が加わる「トーキー」の時代が始まりました。音声はフィルムの横に波形で印字されており、16fpsでは高音部をうまく再現できないという問題が発生しました。しかし、フレームレートを上げすぎるとカメラや映写機のモーターが追いつかず、フィルムの消費量も膨大になります。実験の結果、良好な音質を確保しながらフィルムコストを最小限に抑える最適なレートとして「24fps」が選ばれました。1927年、世界初の本格的トーキー映画『ジャズ・シンガー』の公開とともに、24fpsは映画の標準規格として定着していきます。

つまり24fpsという数字は、芸術的な理由から選ばれたわけではありません。音声技術との兼ね合いとコスト効率という、極めて実務的な理由から生まれた「たまたまの産物」だったのです。しかし、この偶然が生んだ24fpsという数字は、約100年の歳月を経て、人々の脳に「映画らしさ」として深く刻み込まれることになりました。

24fpsが生み出す「非日常」の感覚

私たちの脳は、24fpsの映像に対して独特の反応を示します。30fpsや60fpsで撮影された映像は、人間が肉眼で見ている世界に近い滑らかさを持ちます。そのため、脳は「日常と変わらない」と感じ、特別な新鮮味を覚えません。一方、24fpsの映像には、わずかなカクつきや残像があります。この微妙な違和感が、脳に「これは現実とは異なる世界である」というシグナルを送るのです。

映画が24fpsで撮影され続ける理由の一つに、この「非日常感」があります。映画制作者たちは、60fpsが持つ「現実感がありすぎる」という特性を避け、故意に24fpsを選んでいます。高フレームレートの映像は、架空の世界や物語の世界への没入を妨げ、映画の魅力的なフィクション的要素を損なう可能性があるからです。

実際、2012年に公開された『ホビット 思いがけない冒険』は48fpsで制作され、大きな話題を呼びました。しかし、多くの観客から「不自然」「現実的すぎる」「まるでゲームのよう」という反応が寄せられました。2019年の『ジェミニマン』は4K120fpsという最新鋭のスペックで撮影されましたが、多くの批評家から「映画らしさが失われている」という評価を受けています。技術の進歩が必ずしも「より良い映画体験」につながるわけではないのです。

「ソープオペラ効果」― 高フレームレートへの違和感の正体

テレビで映画を観ているとき、妙に映像がヌルヌルして違和感を覚えたことはないでしょうか。これは「ソープオペラ効果」(Soap Opera Effect)と呼ばれる現象です。現代のテレビには「モーションスムージング」「フレーム補間」などと呼ばれる機能が搭載されており、24fpsの映画を60fpsや120fpsに変換して表示します。メーカーによって「TruMotion」(LG)、「Auto Motion Plus」(Samsung)、「MotionFlow」(Sony)など様々な名称で呼ばれ、多くの場合デフォルトで有効になっています。

この機能は、スポーツ中継やゲームでは効果的ですが、映画に適用すると「安っぽいドラマのように見える」という問題が発生します。「ソープオペラ」という名称は、アメリカの昼ドラ(Soap Opera)が低予算ゆえに30fpsや60fpsのビデオカメラで撮影されていたことに由来します。つまり、高フレームレートの映像は「安価な制作」を連想させてしまうのです。

2018年、俳優トム・クルーズと映画監督クリストファー・マッカリーは、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』のBlu-ray発売に際して、視聴者に向けて「テレビのモーションスムージング機能をオフにしてほしい」と呼びかける公式声明を発表しました。映画制作者たちが意図した24fpsの質感を、テレビの機能が台無しにしてしまうことへの危機感の表れです。

モーションブラーとは何か ― 残像が生むリアリティ

フレームレートと並んで、シネマティックな映像を語る上で欠かせない概念が「モーションブラー」(Motion Blur)です。モーションブラーとは、動いている物体を撮影した際に生じる「ブレ」や「残像」のことです。カメラのシャッターが開いている間に被写体が動くと、その動きがブレとして写り込みます。

日常生活でも、電車の窓から外を見ると景色がブレて見えたり、手を素早く振ると残像が見えたりします。人間の目にも、動くものはある程度ブレて見えるのです。私たちの脳は、このモーションブラーがある映像を「自然」と感じ、逆にモーションブラーがない映像を「不自然」と感じる傾向があります。

ここで重要なのは、フレームレートとモーションブラーの関係です。フレームレートが高いほど、1コマあたりの露光時間は短くなり、結果としてモーションブラーは少なくなります。60fpsで撮影された映像は、各フレームがパキッとシャープに映り、動いている物体もほとんどブレません。一方、24fpsで撮影された映像は、各フレームの露光時間が長いため、動いている物体に自然なブレが生じます。

この「適度なブレ」が、前後のフレームを滑らかにつなぎ、映画特有の「フィルムライク」な質感を生み出しているのです。ゲームが30fpsだとカクカクして見えるのに、映画やアニメが24fpsでも自然に見える理由の一つが、このモーションブラーにあります。ゲームのCGは各フレームが完全に静止した画像の連続であり、自然なブレがないため、低フレームレートでは違和感が生じやすいのです。

180度シャッタールール ― 映画の黄金律

シネマティックな映像を撮影する上で、最も重要な法則の一つが「180度シャッタールール」です。これは、シャッタースピードをフレームレートの2倍の分母に設定するという規則で、映画撮影の基本中の基本とされています。

具体的には、24fpsで撮影する場合、シャッタースピードは1/48秒(カメラの設定上は1/50秒)に設定します。30fpsなら1/60秒、60fpsなら1/120秒という具合です。この設定により、各フレームに「ちょうどよい量」のモーションブラーが加わり、人間の目が自然と感じる動きの流れが再現されます。

「180度」という名称は、映画撮影用の機械式カメラのシャッターの形状に由来します。映画用カメラでは、シャッターは360度の円盤状になっており、その半分(180度)が遮光部分です。シャッターが1回転する間の半分の時間だけ光がフィルムに当たるため、「180度シャッター」と呼ばれるようになりました。デジタルカメラでも、この原理に基づいてシャッタースピードを設定することで、フィルム時代と同じ質感を再現できます。

シャッタースピードを速くしすぎると(例えば24fpsで1/200秒)、モーションブラーがほとんどなくなり、映像がカクカクした不自然な印象になります。『プライベート・ライアン』の冒頭、ノルマンディー上陸作戦のシーンでは、スティーヴン・スピルバーグ監督があえて高速シャッターを使い、戦場の生々しさと緊張感を表現しました。逆に、シャッタースピードを遅くしすぎると(例えば24fpsで1/20秒)、モーションブラーが強くなりすぎて、夢のようなぼんやりとした映像になります。ホラー映画やミュージックビデオでは、この効果が意図的に使われることもあります。

シャッタースピードによる映像表現の違い

180度シャッタールールは基本ですが、創造的な目的のために意図的にこのルールを破ることも、映像表現の一つです。シャッタースピードの違いが映像にどのような影響を与えるか、具体的に見ていきましょう。

まず、シャッタースピードを速くする(例:24fpsで1/96秒以上)と、モーションブラーが減少し、動きがシャープに見えます。格闘シーンやスポーツの撮影では、この設定により一つ一つの動きを鮮明に捉えることができます。しかし、前述の通り「映画らしさ」は薄れ、ビデオ的な印象になる傾向があります。

次に、シャッタースピードを遅くする(例:24fpsで1/24秒以下)と、モーションブラーが増加し、動きに強い残像が生まれます。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』では、主人公がドラッグの影響で視界がぼやけるシーンで、12fpsで360度のシャッターアングル(つまり極端に遅いシャッタースピード)を使用し、酩酊状態を視覚的に表現しました。フラッシュバックや悪夢のシーン、幻想的な雰囲気を出したい場面では、この手法が効果的です。

重要なのは、これらの変化を「意図して」使うことです。何も考えずにシャッタースピードを間違えると、単なる技術的な失敗になりますが、180度シャッタールールを理解した上で意図的に変化をつければ、強力な映像表現のツールになります。

撮影時の設定 ― シネマティック映像の基本セットアップ

一眼レフやミラーレスカメラでの基本設定は、フレームレート24fps(または23.976fps)、シャッタースピード1/50秒です。これにより自然なモーションブラーが得られます。屋外の明るい場所では露出オーバーになりやすいため、NDフィルター(減光フィルター)で光量を減らしながら180度シャッタールールを守ります。

F値(絞り)は開放値に近い設定(F1.8〜F2.8程度)でボケ感を大きくすると、背景がぼけて被写体が際立ち、映画のような立体感のある映像になります。必ずマニュアルモードで撮影し、シャッタースピードを固定して絞りやISO感度で露出を調整しましょう。

編集でモーションブラーを追加する方法

撮影時に適切なシャッタースピードで撮影できなかった場合や、CG・アニメーションにモーションブラーを加えたい場合は、編集ソフトでポストプロダクション処理を行うことができます。

After Effectsでは、タイムラインパネル上部のモーションブラーマークをオンにし、各レイヤーのモーションブラースイッチもオンにするだけで、動きのあるオブジェクトに自動でブラーが適用されます。コンポジション設定の「高度」タブでシャッター角度やサンプル数を調整可能です。撮影済みの映像には「ピクセルモーションブラー」エフェクトを使用し、よりプロフェッショナルな仕上がりにはサードパーティ製「ReelSmart Motion Blur(RSMB)」が業界標準として使われています。

Premiere Proでは、「トランスフォーム」エフェクト(ビデオエフェクト→ディストーション内)を素材に適用し、「シャッター角度」を200〜300程度に設定することで類似の効果を得られます。DaVinci Resolveでは、カラーページのモーションエフェクトパレット、またはResolve FX Transformの「変形」エフェクトでモーションブラーを適用できます。

スマートフォンでシネマティック映像を撮る

iPhone 13シリーズ以降の「シネマティックモード」は、自動でボケ感やピントを調整し、映画のような動画を手軽に撮影できます。被写体にピントを合わせ続けながら背景をぼかし、話し始めた人物に自動でフォーカスを送るといった表現が簡単に実現できます。ただしフレームレートは30fps固定のため、厳密な24fps撮影には「FiLMiC Pro」などのアプリか、標準カメラの4K/24fps設定を使用します。

スマートフォンでシネマティックに撮るポイントは、グリッド表示で構図を意識すること、手ブレ補正で滑らかなカメラワークを心がけること、逆光やサイド光で立体感を出すことです。

24fps以外の選択肢 ― フレームレートの使い分け

24fps(23.976fps)は、映画、ミュージックビデオ、シネマティックVlogなど物語性を重視する映像に最適で、独特の「映画らしさ」を生み出します。30fps(29.97fps)はテレビ放送の標準で、インタビューやドキュメンタリーなど日常的なシーンに適しています。60fpsはスポーツやゲーム実況など動きの速い映像向けで、24fpsタイムラインに配置すれば約2.5倍のスローモーションも作成可能です。120fps以上は主にスローモーション撮影用で、水滴や髪のなびきなど肉眼では捉えられない動きを美しく表現できます。

カラーグレーディングとの相乗効果

シネマティックな映像を完成させるには、フレームレートとモーションブラーに加えて、カラーグレーディング(色補正・色演出)も欠かせません。24fpsとモーションブラーが動きの質感を司るなら、カラーグレーディングは映像全体の雰囲気や世界観を決定づけます。

Log撮影やRAW撮影に対応したカメラでは、編集時にシネマティックな色表現が可能です。彩度を抑えた色調、ティール&オレンジと呼ばれるハリウッド映画定番の配色、フィルムエミュレーションによるビンテージ感など、様々なルックを適用できます。フレームレート、モーションブラー、カラーグレーディング、アスペクト比、レンズ選び、音響デザインなど、複数の要素が組み合わさって真にシネマティックな映像が完成するのです。

よくある失敗と対処法

「24fpsで撮影したのに映画らしく見えない」という問題は、多くの場合シャッタースピードが原因です。オートモードではシャッタースピードが自動調整され、180度シャッタールールから外れます。マニュアルモードで1/50秒に固定し、絞りやISO感度で露出を調整しましょう。

「モーションブラーをかけすぎて不自然になる」場合は、シャッター角度を調整して「自然に見える範囲」を探ります。「60fpsを24fpsに変換したらカクカクする」問題は、編集ソフトの「オプティカルフロー」や「フレームブレンド」機能で解決できますが、元々24fpsで撮影するのがベストです。「テレビで再生するとヌルヌルする」のはソープオペラ効果なので、テレビのモーションスムージング機能をオフにしましょう。

実践的なワークフロー

撮影前は、フレームレートを24fps、シャッタースピードを1/50秒に設定します。明るい屋外ではNDフィルターを用意。撮影時は三脚やジンバルで安定したカメラワークを心がけ、三分割法を基本に構図を組みます。逆光やサイド光で立体感のある映像を目指しましょう。

編集時は、タイムラインのフレームレートを24fpsに設定してから素材を取り込みます。カット編集で物語を構築し、必要に応じてモーションブラーを追加。カラーグレーディングで最終ルックを仕上げ、書き出し時も24fpsを維持します。

まとめ ― シネマティックの本質を理解する

24fpsとモーションブラーは、シネマティック映像を構成する技術的な要素ですが、その本質は単なる数字や設定ではありません。100年以上の映画史の中で培われてきた「映画らしさ」の文化であり、観客の脳に深く刻み込まれた視覚的な言語です。

技術の進歩により、今や誰でも高フレームレートで美しい映像を撮影できるようになりました。しかし、「滑らかで鮮明な映像」が必ずしも「良い映像」とは限りません。映画制作者たちが24fpsを使い続ける理由は、それが観客を物語の世界に引き込む最も効果的な方法だと知っているからです。

シネマティックな映像を作りたいのであれば、まずは基本に忠実に。24fpsで撮影し、180度シャッタールールを守り、適切なモーションブラーを得る。その上で、カラーグレーディングや構図、音響など、他の要素も総合的に磨いていく。技術を理解した上で、時には意図的にルールを破る創造性も大切です。

フレームレートとモーションブラーの関係を深く理解することは、映像表現の可能性を大きく広げます。あなたの作品が、観る人の心を動かすシネマティックな映像になることを願っています。

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