「2分30秒あたりのテロップを直してほしいんだけど……」
「えっと、どのテロップですか?」
「だから、あの……青い文字の……」
こんなやり取り、心当たりはありませんか?
動画の修正指示は、テキストや画像のフィードバックより格段に難しいものです。「どの場面の」「何を」「どう直すのか」を正確に伝えるのは、想像以上に手間がかかります。
さらに、フィードバックの伝え方によっては、相手のモチベーションを下げてしまったり、関係性を悪くしてしまうリスクもあります。
この記事では、Frame.ioなどの動画レビューツールを活用した効率的なフィードバック方法と、角が立たない修正指示の伝え方を解説します。修正回数を減らし、チームの関係性も良好に保つコミュニケーション術をお伝えします。
動画フィードバックの課題

なぜ動画の修正指示は難しいのか
動画のフィードバックには、他のコンテンツにはない特有の難しさがあります。
1. 時間軸がある
動画は「時間」の中で展開するコンテンツです。「どの瞬間の」「どの要素を」修正するのか、タイミングを正確に伝える必要があります。
「冒頭のあたり」「中盤くらい」といった曖昧な指示では、編集者は該当箇所を探すだけで時間を浪費します。
2. 複数の要素が同時に存在
動画には、映像、音声、テロップ、BGM、効果音など、複数の要素が同時に存在しています。「ここを修正して」と言われても、何を修正すべきか分かりません。
3. 言語化が難しい
「なんとなく違和感がある」「もう少しスピード感がほしい」といった感覚的なフィードバックは、具体的な修正指示に落とし込むのが困難です。
4. 認識のズレが起きやすい
フィードバックを出す人と受け取る人の間で、イメージの認識がズレることがよくあります。「明るくして」と言っても、「色を明るく」なのか「雰囲気を明るく」なのか、解釈が異なります。
非効率なフィードバックがもたらす問題
フィードバックが非効率だと、さまざまな問題が発生します。
1. 修正回数の増加
曖昧な指示 → 意図と違う修正 → 再度修正依頼……このループで、本来1回で済む修正が3回、4回と増えていきます。
2. 時間とコストの浪費
修正回数が増えれば、納期の遅延、人件費の増加につながります。外注の場合は、追加料金が発生することもあります。
3. モチベーションの低下
何度も修正を繰り返すと、編集者のモチベーションが下がります。特に、曖昧な指示や後出しの修正が続くと、やる気を失ってしまいます。
4. 関係性の悪化
「言った・言わない」のトラブル、感情的なやり取りが続くと、チームの関係性が悪化します。最悪の場合、優秀な編集者が離れてしまうことも。
5. 品質の低下
締め切りに追われて妥協したり、意思疎通がうまくいかないまま進めたりすると、最終的な動画の品質が低下します。
効率的なフィードバックのメリット
一方、効率的なフィードバック体制を構築すれば、以下のメリットが得られます。
1. 修正回数の削減
1回の指示で意図が正確に伝われば、修正回数を大幅に減らせます。
2. 制作スピードの向上
やり取りの往復が減り、納品までのスピードが上がります。
3. チームの士気向上
明確で建設的なフィードバックは、編集者のモチベーション向上につながります。
4. 信頼関係の構築
スムーズなコミュニケーションは、チーム内の信頼関係を強化します。
5. 品質の向上
十分な時間とエネルギーをクリエイティブな作業に充てられ、動画の品質が向上します。
動画レビューツールの活用
動画レビューツールとは
動画レビューツールは、動画に対するフィードバックを効率的に行うための専用ツールです。
主な機能:
- タイムコード付きコメント:動画の特定の瞬間にコメントを付けられる
- 画面上への描画:矢印や囲みで指摘箇所を明示
- バージョン比較:修正前後の動画を比較
- 承認ワークフロー:OK/NGのステータス管理
- 通知機能:コメントへの返信、ステータス変更を通知
これらの機能により、「2分30秒のテロップ」といった曖昧な指示が、正確で視覚的な指示に変わります。
Frame.io
Frame.ioは、動画レビューツールの代表格です。2021年にAdobeに買収され、Creative Cloudとの連携が強化されています。
主な機能:
- タイムコードベースのコメント:フレーム単位で正確にコメント
- 画面への描画:矢印、囲み、フリーハンドで視覚的に指示
- @メンション:特定のメンバーに通知
- バージョン管理:複数バージョンをスタック表示、比較
- 承認ステータス:承認待ち、承認済み、要修正などのステータス
- Premiere Pro / After Effects連携:編集ソフトから直接コメントを確認
- モバイルアプリ:スマートフォンからもレビュー可能
料金:
- Free:2GB、2プロジェクト
- Starter:100GB、月額$15
- Pro:250GB、月額$25
- Team:500GB、月額$35/ユーザー
- Enterprise:カスタム
Adobe Creative Cloud契約者は、Frame.ioの基本機能を追加料金なしで利用できます(100GBまで)。
おすすめの使い方:
Premiere ProやAfter Effectsで編集している場合、Frame.ioパネルから直接アップロード・コメント確認ができるため、ワークフローがシームレスになります。
Dropbox Replay
Dropbox Replayは、Dropboxに統合された動画レビュー機能です。
主な機能:
- タイムコードベースのコメント
- 画面への描画
- バージョン比較:サイドバイサイドで比較可能
- Dropboxとの連携:既存のファイル管理と統合
- Premiere Pro / DaVinci Resolve連携
料金:
- Dropbox Plus/Professional/Business契約者は追加料金なしで利用可能
- Replay Add-on:月額$10〜
おすすめの使い方:
すでにDropboxでファイル管理をしているチームなら、追加ツールなしでレビュー機能を使えるのが大きなメリット。Frame.ioほど高機能ではありませんが、多くの場合は十分です。
Vimeo Review
Vimeoにも、動画レビュー機能が備わっています。
主な機能:
- タイムコードベースのコメント
- パスワード保護:限定公開でセキュリティ確保
- ダウンロード制限:ダウンロードを禁止可能
- バージョン管理
料金:
- Starter:年額$12/月〜
- Standard:年額$25/月〜
- Advanced:年額$65/月〜
おすすめの使い方:
完成動画の公開先としてVimeoを使っている場合、レビューから公開まで一貫して管理できます。
Wipster
Wipsterは、チーム向けの動画レビュープラットフォームです。
主な機能:
- タイムコードベースのコメント
- 承認ワークフロー
- 複数バージョンの比較
- チーム管理機能
- ブランディング:ロゴや色をカスタマイズ
料金:
- Free:3プロジェクト
- Team:月額$19.95/ユーザー〜
おすすめの使い方:
クライアントへのプレゼンテーションを重視する場合、ブランディング機能でプロフェッショナルな印象を与えられます。
Google ドライブ + コメント
専用ツールがなくても、Googleドライブの動画プレビュー + コメント機能で簡易的なレビューは可能です。
方法:
- 動画をGoogleドライブにアップロード
- 動画を再生し、コメントしたい箇所で一時停止
- 右クリック → 「コメントを追加」
- コメントにタイムコードを手動で記載(例:「2:30 テロップの誤字を修正」)
メリット:
- 追加コストなし
- Googleアカウントがあれば誰でも参加可能
デメリット:
- タイムコードとコメントが自動連携しない
- 画面への描画ができない
- 専用ツールに比べて効率が落ちる
おすすめの使い方:
予算が限られている場合や、フィードバックの頻度が低い場合の簡易的な代替手段として。
ツール選定の指針
| 状況 | おすすめツール |
|---|---|
| Adobe製品メイン、本格的なワークフロー | Frame.io |
| Dropboxでファイル管理している | Dropbox Replay |
| Vimeoで動画公開している | Vimeo Review |
| クライアント向けのプレゼン重視 | Wipster |
| 予算がない、簡易的でOK | Googleドライブ + コメント |
効率的なフィードバックの基本
タイムコードを明示する
動画フィードバックで最も重要なのは、タイムコードを明示することです。
悪い例:
「冒頭のあたりのテロップを修正してください」
良い例:
「0:15〜0:20のテロップを修正してください」
さらに良い例(レビューツール使用):
0:15のフレームにコメントを付けて、「このテロップの『お問合せ』を『お問い合わせ』に修正してください」
レビューツールを使えば、コメントとタイムコードが自動的に紐づくため、編集者は該当箇所を即座に確認できます。
対象を明確にする
動画には複数の要素があるため、何を修正するのかを明確に伝えます。
悪い例:
「ここを直してください」
良い例:
「このシーンのBGMの音量を下げてください」
「画面右下のテロップのフォントを変更してください」
「このカットの色味を暖かくしてください」
対象を特定する言葉:
- 映像:カット、シーン、フレーム、構図、色味、明るさ
- 音声:ナレーション、BGM、効果音、音量、音質
- テロップ:文字、フォント、サイズ、色、位置、表示時間
- エフェクト:トランジション、アニメーション、モーション
具体的な修正内容を伝える
「どう直すのか」を具体的に伝えます。
悪い例:
「なんか違和感があるので直してください」
「もっと良い感じにしてください」
良い例:
「BGMの音量を現在の-6dBから-12dBに下げてください」
「テロップの表示時間を3秒から5秒に延ばしてください」
「このカットを次のカットの前に移動してください」
具体的に伝えるコツ:
- 数値で指定:音量はdB、時間は秒、サイズはピクセルなど
- 参考を示す:「前のシーンと同じように」「参考動画のように」
- 選択肢を示す:「AかBのどちらかにしてください」
理由を添える
修正の「理由」を添えると、編集者の理解が深まり、より良い修正につながります。
悪い例:
「BGMを変えてください」
良い例:
「現在のBGMだと楽しい雰囲気になってしまうので、もう少し落ち着いた曲に変えてください。商品の高級感を出したいためです」
理由が分かれば、編集者は意図を汲んで最適な選択ができます。また、「なぜこの修正が必要なのか」が分かると、納得感が生まれます。
優先度を伝える
複数のフィードバックがある場合、優先度を明示しましょう。
優先度の例:
- 必須(Must):必ず修正が必要
- 推奨(Should):できれば修正してほしい
- 検討(Could):可能であれば検討してほしい
例:
「【必須】0:15 テロップの誤字を修正」
「【推奨】1:30 BGMの音量を少し下げる」
「【検討】2:00 カットのタイミングを調整」
優先度があれば、編集者は限られた時間内で何を優先すべきか判断できます。
ポジティブなフィードバックも忘れずに
修正点だけでなく、良かった点も伝えることが大切です。
悪い例:
「ここを直して」「これも直して」「あれも直して」(修正点のみ)
良い例:
「全体的にテンポが良くて見やすいです!以下の点を修正していただけますか」
「オープニングのアニメーション、すごくいい感じです。1点だけ、○○を修正お願いします」
ポジティブなフィードバックは、編集者のモチベーションを維持し、良好な関係性を築くのに役立ちます。
角が立たないフィードバックの伝え方
「ダメ出し」ではなく「ブラッシュアップ」
フィードバックは、「間違いを指摘する」のではなく、「より良くするための提案」という姿勢で伝えましょう。
ネガティブな表現:
「ここが間違っています」
「これはダメです」
「なぜこうなったんですか?」
ポジティブな表現:
「ここをこうすると、さらに良くなると思います」
「こちらの方が目的に合っていると思うのですが、いかがでしょうか」
「この部分の意図を教えていただけますか?」
言葉の選び方一つで、相手の受け取り方が大きく変わります。
「あなた」ではなく「作品」に焦点を当てる
フィードバックは、人ではなく作品に対して行います。
人に焦点を当てた表現(NG):
「あなたのセンスが……」
「なんでこんな編集をしたの?」
「もっと考えてください」
作品に焦点を当てた表現(OK):
「この部分のテンポをもう少し速くしたいです」
「このカットの意図を教えていただけますか?」
「ここをこう変えると、より伝わりやすくなると思います」
「あなたが悪い」ではなく「作品をより良くしたい」という共同作業の姿勢を示すことが大切です。
「Why」を責めない
「なぜ?」という質問は、責められていると感じさせることがあります。
責める印象を与える質問:
「なぜこの色にしたんですか?」
「どうしてこのBGMを選んだんですか?」
建設的な質問:
「この色を選んだ意図を教えていただけますか?」
「このBGMを選んだ理由をお聞きしてもいいですか?別の案も検討したいので」
「なぜ」を「意図を教えてください」に言い換えるだけで、対話の雰囲気が変わります。
サンドイッチ法を活用する
サンドイッチ法は、フィードバックを伝える定番のテクニックです。
構成:
- ポジティブ:良かった点を伝える
- 改善点:修正してほしい点を伝える
- ポジティブ:期待や感謝を伝える
例:
「全体的にとても見やすく、テンポも良いと思います(ポジティブ)。1点、2分30秒のテロップの表示時間が短いので、もう少し長くしていただけますか(改善点)。引き続きよろしくお願いします!完成が楽しみです(ポジティブ)」
改善点をポジティブな言葉で挟むことで、受け入れやすくなります。
「依頼」の形で伝える
命令形ではなく、依頼の形で伝えましょう。
命令形:
「直してください」
「変えてください」
依頼形:
「直していただけますか」
「変えていただけると助かります」
「ご検討いただけますでしょうか」
依頼形は、相手への敬意を示し、協力的な関係を築くのに役立ちます。
感謝の言葉を忘れずに
フィードバックの最後には、感謝の言葉を添えましょう。
例:
「お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします」
「いつも素敵な動画をありがとうございます」
「修正対応、ありがとうございました」
感謝の言葉は、良好な関係を維持する潤滑油です。
テキストでの伝え方の注意点
テキストでのフィードバックは、対面よりも冷たく感じられることがあります。
注意点:
- 絵文字や「!」を適度に使う:「お願いします!」「ありがとうございます😊」
- 短すぎる返答を避ける:「OK」だけだと冷たい印象に
- ネガティブな内容は特に丁寧に:修正依頼は言葉を選んで
ただし、社内の雰囲気や相手との関係性によって適切なトーンは異なります。相手に合わせた調整が必要です。
修正回数を減らすコミュニケーション術
事前の認識合わせを徹底する
修正回数を減らす最も効果的な方法は、編集を始める前の認識合わせを徹底することです。
事前に共有すべき情報:
- 目的:この動画で何を達成したいか
- ターゲット:誰に見てもらう動画か
- トーン&マナー:どんな雰囲気にするか
- 参考動画:イメージに近い動画
- 構成案:大まかな流れ
- 使用素材:必ず使う素材、使ってはいけない素材
- 納期:いつまでに必要か
- 予算:修正回数の上限など
ブランディング動画の第一歩:トーン&マナーを決める「ムードボード」の作り方も参考にしてください。
参考動画を共有する
言葉で説明するよりも、参考動画を見せる方が伝わりやすいです。
共有の仕方:
「このくらいのテンポ感で」→ 参考動画のURLを共有
「このテロップのデザインが好み」→ スクリーンショットを共有
「この曲の雰囲気で」→ 参考曲のリンクを共有
参考があれば、イメージのズレを大幅に減らせます。
ラフカット(粗編集)でのチェック
完成間近まで作り込んでから大幅な修正が入ると、手戻りが大きくなります。
段階的なチェックの流れ:
- 構成案の確認:編集を始める前に
- ラフカット(粗編集)の確認:構成、素材選び、全体の流れ
- ファインカット(仕上げ前)の確認:テロップ、BGM、細かい調整
- 完成版の確認:最終チェック
早い段階でフィードバックすることで、大幅な修正を防げます。
「後出し」を避ける
最も避けるべきなのは、「後出し」のフィードバックです。
後出しの例:
- 完成間近で「やっぱり全体の構成を変えたい」
- 2回目の修正で「最初から言ってなかったけど、このシーンはカットで」
- OK出した後に「やっぱりここも直して」
後出しを防ぐために:
- 事前に要件を明確にする
- チェック時に関係者全員の意見を集める
- 「これで最終確認です」と明示してから確認を依頼
- 確認期限を設ける:「○日までにフィードバックをお願いします。期限を過ぎた場合は現状のまま進めます」
フィードバックを一元化する
複数の関係者からバラバラにフィードバックが来ると、混乱が生じます。
問題:
- AさんとBさんのフィードバックが矛盾
- 誰のフィードバックを優先すべきか分からない
- 後から別の人が追加のフィードバック
解決策:
- 窓口を一人に決め、その人が意見を取りまとめる
- フィードバックの期限を設ける
- 矛盾するフィードバックは、窓口の人が調整してから伝える
修正回数の上限を決める
特に外注の場合、修正回数の上限を事前に決めておくことが重要です。
例:
「基本料金には2回までの修正が含まれます。3回目以降は○円/回の追加料金が発生します」
上限があれば、フィードバック側も慎重に確認するようになり、結果的に効率が上がります。
フィードバックのフォーマットとテンプレート

フィードバックシートのテンプレート
フィードバックを整理するためのテンプレートを用意しておくと便利です。
シンプルなフィードバックシート:
【プロジェクト名】○○動画
【バージョン】v02
【確認日】2025/01/20
【確認者】山田
■ 全体の感想
全体的にテンポが良く、見やすいです。
■ 修正点
| No | タイムコード | 対象 | 修正内容 | 優先度 |
|----|------------|------|---------|-------|
| 1 | 0:15 | テロップ | 「お問合せ」→「お問い合わせ」 | 必須 |
| 2 | 1:30 | BGM | 音量を少し下げる | 推奨 |
| 3 | 2:00 | カット | 間を詰める | 検討 |
■ 良かった点
・オープニングのアニメーションが素敵
・ナレーションのトーンがちょうど良い
■ その他
次回の確認期限:1/22
レビューツールでのコメントテンプレート
Frame.ioなどのレビューツールでコメントする際のテンプレートです。
コメントの形式:
【優先度】【対象】修正内容
理由(あれば)
例:
「【必須】【テロップ】『お問合せ』を『お問い合わせ』に修正してください」
「【推奨】【BGM】音量をもう少し下げていただけますか。ナレーションが聞き取りにくいためです」
「【検討】【カット】このシーンをもう少し短くできますか?全体の尺を3分に収めたいためです」
チェックリスト
フィードバックを行う前のセルフチェック用リストです。
フィードバック前チェックリスト:
□ タイムコードを明示したか
□ 対象(映像/音声/テロップなど)を明確にしたか
□ 具体的な修正内容を伝えたか
□ 理由を添えたか(必要に応じて)
□ 優先度を付けたか
□ 良かった点も伝えたか
□ 言葉遣いは適切か
□ 他の関係者の意見も確認したか
□ 矛盾するフィードバックはないか
コミュニケーションガイドライン
チームで共有するコミュニケーションガイドラインを作成しておくと、一貫性のあるフィードバックが可能になります。
ガイドラインに含める内容:
- フィードバックの伝え方の基本原則
- 使用するツール(Frame.io、Slack など)
- フィードバックシートのテンプレート
- 優先度の定義(必須/推奨/検討)
- 確認期限のルール
- 窓口担当者
- 修正回数の目安
レビューツールの具体的な使い方
Frame.ioの基本操作
Frame.ioの基本的な使い方を解説します。
1. 動画のアップロード
- Frame.ioにログイン
- プロジェクトを作成または選択
- ファイルをドラッグ&ドロップでアップロード
- アップロード完了を待つ(進捗バーが表示される)
2. コメントの追加
- 動画を再生
- コメントしたい箇所で一時停止(または再生しながら「C」キー)
- 画面右側のコメント欄にテキストを入力
- 必要に応じて画面上に描画(矢印、囲みなど)
- 「Post」ボタンでコメントを投稿
3. コメントへの返信
- コメントをクリック
- 「Reply」ボタンをクリック
- 返信を入力して投稿
4. ステータスの変更
- 動画を選択
- ステータスメニュー(「No status」など)をクリック
- 適切なステータスを選択(In Progress、Needs Review、Approved など)
5. バージョンの比較
- 同じアセットに複数バージョンをアップロード
- 「Version」タブで比較したいバージョンを選択
- サイドバイサイドまたはオーバーレイで比較
Dropbox Replayの基本操作
Dropbox Replayの基本的な使い方です。
1. Replayへのアクセス
- Dropboxにログイン
- 動画ファイルを選択
- 「Replayで開く」をクリック(または、replay.dropbox.comにアクセス)
2. コメントの追加
- 動画を再生
- コメントしたい箇所でクリック
- コメントを入力
- 必要に応じて画面上に描画
- 投稿
3. 共有
- 「共有」ボタンをクリック
- メールアドレスを入力、または共有リンクを作成
- 権限(コメント可能/閲覧のみ)を設定
4. バージョンの比較
- 同じファイルの新バージョンをアップロード
- 「バージョンを比較」機能で比較
レビューツール活用のコツ
1. 初回レビュー時に全体を通して見る
いきなり細かいコメントを付けるのではなく、まず全体を通して視聴しましょう。全体の印象を把握してから、細部のフィードバックを行います。
2. コメントは具体的に、短く
1つのコメントで複数の指示を出さず、1コメント1指示を心がけます。長文よりも、簡潔で具体的なコメントの方が伝わります。
3. 描画機能を活用
「ここの文字」と書くよりも、矢印や囲みで視覚的に示した方が明確です。特に画面上の位置を指定する場合は、描画が効果的です。
4. @メンションで担当者を指定
チームで使う場合、@メンションで担当者を指定すると、通知が届き、誰が対応すべきか明確になります。
5. 解決したコメントはクローズ
修正が完了したコメントは「解決済み」にマークし、残りのタスクを見やすくします。
チーム別のフィードバックフロー
社内チームの場合
社内チームでの動画制作におけるフィードバックフローです。
登場人物:
- ディレクター(企画・監修)
- 編集者
- 関係部署(マーケティング、営業など)
- 上長(最終承認)
フロー:
1. 企画・構成の確認
ディレクター → 編集者
2. ラフカットの確認
編集者 → ディレクター → 関係部署
(フィードバックをディレクターが取りまとめ)
3. 修正版の確認
編集者 → ディレクター
4. 最終確認
編集者 → ディレクター → 上長
5. 承認・公開
ポイント:
- 窓口はディレクターが担い、フィードバックを取りまとめる
- 関係部署からの意見は、ディレクターが調整してから編集者に伝える
- 上長の確認は最終段階のみ
外注(フリーランス)の場合
外部の編集者に依頼する場合のフィードバックフローです。
登場人物:
- 発注者(自社)
- 編集者(外注先)
フロー:
1. 発注・要件の共有
発注者 → 編集者
(企画書、構成案、参考動画、素材を共有)
2. ラフカットの確認
編集者 → 発注者
(Frame.ioなどで共有、フィードバック)
3. 修正版の確認(1〜2回)
編集者 → 発注者
4. 最終確認・検収
5. 納品・支払い
ポイント:
- 事前の要件共有を徹底し、認識のズレを防ぐ
- 修正回数の上限を契約時に明確にする
- フィードバックは文書化して記録に残す
- 期限を明確に設定する
クライアントワークの場合
クライアントから依頼を受けて動画制作を行う場合のフィードバックフローです。
登場人物:
- クライアント
- 制作会社(ディレクター、編集者)
フロー:
1. ヒアリング・要件定義
クライアント ← → 制作会社
2. 企画・構成の提案
制作会社 → クライアント(承認)
3. 撮影・編集
4. 初稿の確認
制作会社 → クライアント
(レビューツールで共有)
5. フィードバック収集
クライアント → 制作会社
(期限を設定)
6. 修正版の確認(1〜2回)
7. 最終確認・納品
ポイント:
- クライアント側の確認者を明確にする(誰がOKを出すのか)
- フィードバックの期限を設定し、遅延を防ぐ
- 追加修正の料金を事前に明示
- レビューツールを使い、コミュニケーションを記録に残す
リモートチームの場合
リモートワークでのフィードバックフローです。
ポイント:
- 非同期コミュニケーションを前提に設計(時差がある場合も)
- レビューツールですべてのフィードバックを文書化
- 定期的なビデオ会議で認識合わせ
- Slack、Teamsなどで即時の質問ができる環境
おすすめのツール構成:
- ファイル共有:Dropbox、Googleドライブ
- 動画レビュー:Frame.io、Dropbox Replay
- コミュニケーション:Slack、Microsoft Teams
- タスク管理:Asana、Trello、Notion
- ビデオ会議:Zoom、Google Meet
よくある課題と解決策
課題1:フィードバックが曖昧
状況:
「なんか違う」「もっと良い感じに」といった曖昧なフィードバックが来る。
解決策:
- 具体化を促す質問をする:「どの部分が違和感がありますか?」「参考になる動画はありますか?」
- 選択肢を提示する:「A案とB案、どちらが良いですか?」
- フィードバックシートを使って、項目ごとに回答してもらう
課題2:フィードバックが多すぎる
状況:
細かい指摘が大量に来て、どこから手を付けていいか分からない。
解決策:
- 優先度を付けてもらう:「必須」「推奨」「検討」に分類
- 影響度で絞り込む:「この修正は本当に必要か」を確認
- バッチ処理:同じ種類の修正(テロップ系、音声系など)をまとめて対応
課題3:フィードバックが遅い
状況:
確認依頼を出しても、なかなかフィードバックが返ってこない。
解決策:
- 期限を明確に設定:「○月○日までにフィードバックをお願いします」
- リマインドを送る:期限前にリマインダー
- 期限を過ぎた場合のルールを決めておく:「期限を過ぎた場合は現状で進めます」
- 確認しやすい環境を整える:レビューツールでワンクリックで確認できるように
課題4:関係者間でフィードバックが矛盾
状況:
Aさんは「テンポを上げて」と言い、Bさんは「もう少しゆっくり」と言う。
解決策:
- 窓口を一本化:窓口担当者が意見を調整してから伝える
- 意思決定者を明確に:最終的に誰の意見を優先するか決めておく
- 事前の認識合わせ:関係者間で方向性を合わせてからフィードバック
課題5:修正しても「やっぱり元に戻して」と言われる
状況:
指示通りに修正したのに、「やっぱり前の方が良かった」と言われる。
解決策:
- バージョン管理を徹底:過去のバージョンをすぐに参照できるように
- 修正前後を比較して確認してもらう(レビューツールのバージョン比較機能)
- 大きな変更は事前に確認:「こう変更しますが、よろしいですか?」
課題6:感情的なやり取りになってしまう
状況:
何度も修正が続き、イライラがコミュニケーションに出てしまう。
解決策:
- 文面を見直してから送信:感情的な言葉が含まれていないか確認
- 対面(ビデオ会議)で話す:テキストよりも誤解が生じにくい
- 根本原因を解決:事前の認識合わせ不足、プロセスの問題など
- 休憩を挟む:冷静になってからコミュニケーション
よくある質問(FAQ)

Q1:フリーランスの編集者にフィードバックするとき、特に気をつけることは?
A1:明確さと敬意のバランスが重要です。
社内の同僚と違い、フリーランスは複数のクライアントを抱えているため、曖昧な指示に対して何度も確認する時間がありません。できるだけ具体的で明確なフィードバックを心がけましょう。
また、フリーランスは自分の仕事に誇りを持っています。「ダメ出し」ではなく「より良くするための提案」という姿勢で伝えることが大切です。
契約時に修正回数の上限と追加料金を明確にしておくと、お互いにとって良い関係が築けます。
Q2:クライアントからのフィードバックが曖昧なとき、どう対応すべき?
A2:具体化を促す質問をしましょう。
例:
- 「もう少し詳しく教えていただけますか?」
- 「具体的にどの部分でしょうか?」
- 「参考になる動画があれば共有いただけますか?」
- 「A案とB案、どちらがイメージに近いですか?」
また、フィードバックシートを用意して、項目ごとに回答してもらう方法も効果的です。
Q3:Frame.ioは無料で使えますか?
A3:制限付きで無料利用可能です。
Frame.ioの無料プランは、2GB、2プロジェクトまでの制限があります。小規模なプロジェクトや、試しに使ってみる分には十分です。
また、Adobe Creative Cloud契約者は、Frame.ioの基本機能(100GBまで)を追加料金なしで利用できます。すでにCreative Cloudを契約しているなら、まずはこちらを試してみてください。
Q4:レビューツールを使わなくても、うまくフィードバックする方法は?
A4:タイムコードと対象を明示すれば、ツールなしでも可能です。
レビューツールがない場合は、以下の方法でフィードバックを整理しましょう。
方法1:スプレッドシート
タイムコード、対象、修正内容、優先度を列にしたシートを作成。
方法2:スクリーンショット + コメント
該当シーンのスクリーンショットを撮り、画像に矢印や囲みを追加してコメント。
方法3:画面録画
動画を再生しながら声でコメントを入れた画面録画を作成。実際に操作しながら説明できるため、伝わりやすい。
Q5:チーム内でフィードバックの質にばらつきがあります。どうすれば?
A5:ガイドラインとテンプレートを整備しましょう。
フィードバックの質がばらつく原因は、基準が共有されていないことが多いです。
対策:
- フィードバックガイドラインを作成し、チームで共有
- テンプレートを用意し、形式を統一
- 良いフィードバックの例を共有し、学習の機会を作る
- 定期的に振り返りを行い、改善点を話し合う
Q6:フィードバックを受ける側(編集者)として、気をつけることは?
A6:確認と報告を徹底しましょう。
確認:
- フィードバックの意図が不明確な場合は質問する
- 矛盾するフィードバックがあれば確認する
- 大きな変更の前に「こう理解しましたが合っていますか?」と確認
報告:
- 修正完了したら報告する
- 対応が難しいフィードバックには、理由と代替案を伝える
- 進捗が遅れる場合は早めに連絡
Q7:修正回数を契約で決めておく場合、何回が適切ですか?
A7:2〜3回が一般的です。
多くの制作会社やフリーランスでは、基本料金に2〜3回の修正を含め、それ以上は追加料金としています。
目安:
- シンプルな動画:2回
- 複雑な動画、多くの関係者がいる場合:3回
- 追加修正:1回あたり基本料金の10〜20%程度
修正回数を決めておくことで、フィードバック側も慎重に確認するようになり、結果的に効率が上がります。
Q8:ビデオ会議でフィードバックするのと、レビューツールでフィードバックするのと、どちらが良い?
A8:併用がベストです。
レビューツールの利点:
- タイムコードと紐づいた正確な記録が残る
- 非同期で確認できる
- 後から参照できる
ビデオ会議の利点:
- 複雑な内容を対話しながら説明できる
- ニュアンスが伝わりやすい
- 即座に認識を合わせられる
おすすめの使い分け:
- 細かい修正指示:レビューツール
- 方向性の相談、複雑な内容:ビデオ会議 → その後レビューツールで記録
まとめ:効率的で円滑なフィードバックを実現する
この記事のポイントを振り返り
動画フィードバックの方法について、詳しく解説してきました。重要なポイントを振り返りましょう。
1. 動画フィードバックの基本
- タイムコードを明示する
- 対象を明確にする(映像/音声/テロップなど)
- 具体的な修正内容を伝える
- 理由を添える
- 優先度を付ける
- 良かった点も伝える
2. 角が立たない伝え方
- 「ダメ出し」ではなく「ブラッシュアップ」
- 人ではなく作品に焦点を当てる
- 依頼形で伝える
- 感謝の言葉を添える
3. 修正回数を減らすコツ
- 事前の認識合わせを徹底
- 参考動画を共有
- 段階的なチェック(ラフカット → ファインカット)
- 後出しを避ける
- フィードバックを一元化
4. レビューツールの活用
- Frame.io:Adobe連携、高機能
- Dropbox Replay:Dropboxユーザーに最適
- Vimeo Review:Vimeoでの公開と連携
フィードバックチェックリスト
フィードバックを送る前のチェック:
□ タイムコードを明示したか
□ 対象(映像/音声/テロップなど)を明確にしたか
□ 具体的な修正内容を伝えたか
□ 理由を添えたか(必要に応じて)
□ 優先度を付けたか(必須/推奨/検討)
□ 良かった点も伝えたか
□ 言葉遣いは適切か(依頼形、感謝の言葉)
□ 他の関係者の意見も確認したか
□ 矛盾するフィードバックはないか
□ 期限を設定したか
さらなるスキルアップのために
動画制作のコミュニケーションをさらに向上させるために、以下の関連記事もぜひ参考にしてください。
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今日から始める第一歩
効率的なフィードバックは、動画制作の生産性と品質を大きく向上させます。
まずは、次のフィードバックから、この記事で紹介したポイントを意識してみてください。タイムコードを明示する、具体的に伝える、良かった点も伝える——小さな変化から始めましょう。
レビューツールを導入すれば、フィードバックの質と効率が劇的に向上します。Frame.ioやDropbox Replayは無料プランや試用期間があるので、まずは試してみることをおすすめします。
効率的で角が立たないフィードバックで、チームの関係性も良好に保ちながら、より良い動画を作り上げてください。