なぜ、ある動画は「なんとなく信頼できる」と感じ、別の動画は「なんだか怪しい」と感じるのでしょうか。なぜ、同じ内容の動画でも、色調を変えるだけで視聴者の印象がまったく変わるのでしょうか。
その答えは「色彩心理学」にあります。人間は色から無意識のうちに感情的な影響を受けており、動画の色使いは視聴者の感情、記憶、そして行動に直接働きかけます。青は信頼感と安心感を、赤は情熱と緊急性を、緑は安らぎと成長を──色にはそれぞれ固有の心理的効果があるのです。
この記事では、動画編集における色彩心理学の活用方法を徹底解説します。各色が持つ心理的効果から、業種別の最適な配色、実際のカラーグレーディングテクニックまで、すべてを網羅。この記事を読み終える頃には、あなたも「色で視聴者の感情をコントロールする」プロの編集者に近づいているはずです。
色彩心理学とは?動画編集に活かす基本概念
まず、色彩心理学の基本概念と、なぜ動画編集において重要なのかを理解しましょう。
色彩心理学の定義と歴史
色彩心理学とは、色が人間の心理や行動に与える影響を研究する学問分野です。色が感情、認知、生理反応に影響を与えることは古くから知られており、古代エジプトや中国でも色を使った治療(カラーセラピー)が行われていました。
近代的な色彩心理学は、ゲーテの「色彩論」(1810年)に端を発します。ゲーテは色が人間の感情に与える影響を体系的に論じ、「暖色は興奮を、寒色は落ち着きを与える」といった基本原則を示しました。
20世紀以降、色彩心理学はマーケティングやデザインの分野で実践的に活用されるようになりました。企業のロゴ、広告、パッケージデザインに至るまで、色の心理効果は商業的に重要視されています。そして今、動画コンテンツが主流となった時代において、動画の色調設計は視聴者の心を動かす最も強力なツールの一つとなっています。
なぜ動画編集で色彩が重要なのか
動画は視覚メディアであり、視聴者は映像から大量の情報を受け取ります。その中でも「色」は、言語化される前に無意識レベルで処理される情報です。
研究によると、人間は初対面の相手や初めて見る商品に対して、90秒以内に印象を形成し、その判断の62〜90%は色だけに基づいていると言われています。つまり、視聴者があなたの動画を「好き」か「嫌い」か、「信頼できる」か「怪しい」かを判断する際、色は決定的な役割を果たしているのです。
また、色は記憶との結びつきが強いという特性があります。特定の色を見ると、過去の経験や感情が呼び起こされます。例えば、青い海を見た時の爽快感、赤い夕焼けを見た時の感傷──こうした記憶と結びついた感情反応を、動画編集で意図的に呼び起こすことができるのです。
色の三属性──色相・明度・彩度
色彩心理学を動画編集に活かすためには、色の三属性を理解しておく必要があります。
「色相」は、赤・青・黄といった色の種類を指します。色相環と呼ばれる円形の図で表され、隣り合う色は類似色、対角にある色は補色の関係にあります。
「明度」は、色の明るさを指します。明度が高い色(明るい色)は軽快さや開放感を、明度が低い色(暗い色)は重厚感や高級感を与えます。
「彩度」は、色の鮮やかさを指します。彩度が高い色は活気や華やかさを、彩度が低い色(くすんだ色)は落ち着きや上品さを与えます。
動画編集では、この三属性を調整することで、同じ「青」でも「爽やかな水色」にも「重厚な紺色」にも変化させることができます。カラーグレーディングとは、まさにこの三属性を操る技術なのです。
暖色と寒色──基本的な心理効果
色は大きく「暖色」と「寒色」に分類されます。この分類は、色彩心理学の最も基本的な概念です。
暖色(赤、オレンジ、黄色など)は、太陽や火を連想させ、温かさ、活力、興奮を呼び起こします。暖色は視覚的に「進出色」と呼ばれ、前に飛び出してくるように見えます。そのため、注目を集めたい要素に使うと効果的です。
寒色(青、青緑、紫など)は、水や氷を連想させ、冷静さ、落ち着き、信頼を呼び起こします。寒色は視覚的に「後退色」と呼ばれ、奥に引っ込んで見えます。背景や落ち着いた雰囲気を作りたい時に適しています。
動画編集では、この暖色と寒色のバランスを意識することで、視聴者の感情をコントロールできます。例えば、冒頭で暖色を使って注目を集め、説明パートでは寒色で落ち着かせ、CTAで再び暖色を使って行動を促す──こうした設計が可能になります。
青色(Blue)──信頼・安心・知性を伝える色
ビジネス動画で最も多用される色が「青」です。なぜ青が選ばれるのか、その心理効果と効果的な使い方を詳しく解説します。
青が与える心理的効果
青色は、人間にとって最も「好まれる色」の一つです。世界各国の調査で、「好きな色」の第1位は常に青です。この普遍的な好意は、青が空や海という、人類が常に見てきた自然の色であることに起因すると考えられています。
青が与える主な心理効果は以下の通りです。「信頼感」は、青の最も重要な心理効果です。青を見ると、人は無意識に「信頼できる」「安定している」と感じます。「安心感・落ち着き」として、青は心拍数を下げ、リラックス効果をもたらすことが研究で示されています。「知性・専門性」の印象も、青は「頭が良さそう」「専門的」という印象を与えます。「清潔感」として、水を連想させる青は、清潔で衛生的な印象も与えます。
これらの効果から、青は企業のコーポレートカラーとして最も多く採用されています。Facebook、Twitter(現X)、LinkedIn、IBM、Samsung、Ford──世界的な企業の多くが青をブランドカラーとしているのは偶然ではありません。
青が最適な動画ジャンル・業種
青の心理効果を活かすべき動画ジャンルと業種を紹介します。
「金融・保険」の業界は、信頼が命です。銀行、証券会社、保険会社の動画では、青を基調とすることで「お金を預けても安心」という印象を与えられます。
「IT・テクノロジー」の業界も、青との相性が良いです。先進性と信頼性の両方を伝えられます。特にBtoB向けのSaaS、クラウドサービス、セキュリティ関連の動画に最適です。
「医療・ヘルスケア」の業界では、清潔感と専門性を伝える青が重宝されます。病院、クリニック、製薬会社の動画に適しています。
「コンサルティング・士業」も、専門性と信頼性をアピールしたい業種です。弁護士、税理士、経営コンサルタントの紹介動画には青が効果的です。
「教育・スクール」の業界では、知性や学びのイメージを伝える青が活用できます。オンライン講座、塾、大学の動画に適しています。
動画編集での青の使い方
動画編集で青を効果的に使う具体的な方法を紹介します。
「背景・ベースカラーとして」使う方法が最も一般的です。動画全体の色調を青寄りに調整する、青い背景を使う、青いグラデーションをオーバーレイする──こうした方法で、動画全体に信頼感を纏わせます。
「テロップ・図解の色として」使う方法もあります。特に、データや数字を表示する際に青を使うと、情報の信頼性が高まります。グラフやチャートも青系統でまとめると、プロフェッショナルな印象になります。
「アクセントカラーとして」使う場合は、暖色系の動画の中に青を入れることで、「信頼できるポイント」を強調できます。例えば、セール動画の中で「安心の保証付き」を青で表示するなど。
青を使う際の注意点
青を使う際には、いくつかの注意点があります。
「冷たい印象になりすぎないように」注意しましょう。青を使いすぎると、「冷たい」「感情がない」「人間味がない」という印象を与えることがあります。特に、人物が登場する動画では、顔色が悪く見えないように肌の色味を調整してください。
「食品・飲食には不向き」という点も覚えておきましょう。青は食欲を減退させる色として知られています。青い食品は自然界にほとんど存在せず、人間は「青い食べ物=腐っている」と本能的に認識するためです。飲食店やフード系の動画では、青の使用は控えめにしましょう。
「明度・彩度で印象が変わる」ことも意識してください。明るい水色は爽やかさと親しみやすさを、濃い紺色は重厚感と権威を与えます。目的に応じて、青のトーンを使い分けましょう。
赤色(Red)──情熱・緊急性・エネルギーを伝える色
青とは対照的に、赤は最も強烈な印象を与える色です。その強さゆえに使い方には注意が必要ですが、効果的に使えば視聴者の行動を大きく動かすことができます。
赤が与える心理的効果
赤は、人間の注意を最も強く引きつける色です。これは進化の過程で、血や火という「生存に関わるシグナル」を見逃さないために発達した本能だと考えられています。
赤が与える主な心理効果は以下の通りです。「情熱・エネルギー」として、赤は興奮、活力、熱意を呼び起こします。やる気を引き出したい場面に最適です。「緊急性・重要性」として、赤は「今すぐ行動すべき」というメッセージを伝えます。セールや期間限定の告知に効果的です。「愛情・欲望」の象徴として、赤はバレンタインやロマンスを連想させます。恋愛・ウェディング関連のコンテンツに適しています。「食欲増進」の効果もあり、赤やオレンジは食欲を刺激します。マクドナルド、KFC、コカ・コーラなど、飲食ブランドに赤が多いのはこのためです。
研究によると、赤を見ると心拍数が上がり、アドレナリンが分泌されることが確認されています。つまり、赤は文字通り「視聴者の身体を動かす」色なのです。
赤が最適な動画ジャンル・業種
赤の心理効果を活かすべき動画ジャンルと業種を紹介します。
「セール・キャンペーン告知」は、赤の最も得意とする分野です。「今だけ」「限定」「急げ」といったメッセージを、赤で強調することで緊急性を演出できます。
「飲食・フード」の業界では、赤は食欲を刺激する最強の色です。料理の撮影では、赤みを強調することで「美味しそう」な印象が高まります。
「スポーツ・フィットネス」の業界では、エネルギッシュなイメージを伝える赤が効果的です。ジム、スポーツ用品、エナジードリンクの動画に適しています。
「エンターテインメント」の分野でも、興奮や熱狂を伝える赤は、ライブ、イベント、ゲームなどの動画に最適です。
「恋愛・ウェディング」関連では、愛情を象徴する赤は、結婚式場、マッチングアプリ、恋愛系コンテンツに使われます。
動画編集での赤の使い方
動画編集で赤を効果的に使う具体的な方法を紹介します。
「CTAボタン・アクション喚起に」使うのが最も効果的です。「今すぐ購入」「申し込みはこちら」などのボタンを赤にすると、クリック率が向上することが複数の研究で示されています。
「強調・警告として」使う方法もあります。特に重要な情報、注意喚起、デッドラインなどを赤で表示することで、視聴者の目を引きます。
「アクセントカラーとして」使う場合、動画全体を赤にするのではなく、ポイントで赤を入れることで、その部分に視線を誘導できます。青や緑を基調とした動画の中に赤を入れると、非常に目立ちます。
赤を使う際の注意点
赤は強力な色であるがゆえに、使い方を誤ると逆効果になります。
「使いすぎると疲れる」という点に注意しましょう。赤は興奮を促す色なので、長時間見続けると視聴者は疲れてしまいます。動画全体を赤で統一するのではなく、ポイント使いに留めましょう。
「攻撃性・危険のイメージ」にも注意が必要です。赤は「危険」「禁止」「エラー」のシグナルとしても使われます。穏やかな信頼感を伝えたい動画には不向きです。医療やセキュリティ関連で赤を多用すると、「危険」という誤ったメッセージを送ってしまう可能性があります。
「文化的な意味の違い」も考慮すべきです。赤は文化によって意味が異なります。中国では幸運と繁栄を象徴しますが、一部の国では喪を表すこともあります。グローバル向けの動画では、赤の使用に慎重になりましょう。
黄色(Yellow)──楽観・注目・警告を伝える色
黄色は、最も明るく、最も目立つ色です。ポジティブな印象と注目効果を両立できる一方、使い方を誤ると安っぽい印象を与えることもあります。
黄が与える心理的効果
黄色は太陽の色であり、人間に「明るさ」「希望」「活力」を連想させます。
黄色が与える主な心理効果は以下の通りです。「楽観・ポジティブ」として、黄色は幸福感、楽しさ、前向きな気持ちを呼び起こします。「注目・視認性」の面では、黄色は最も視認性が高い色です。道路標識や工事現場の看板に黄色が使われるのはこのためです。「知性・創造性」のイメージもあり、アイデアや革新を象徴することもあります。「警告・注意」としても、黄色は「気をつけて」というシグナルとしても機能します。
黄色は「子どもっぽさ」や「カジュアルさ」を連想させることもあります。そのため、フォーマルな企業動画には不向きですが、親しみやすさを出したい場面では効果的です。
黄色が最適な動画ジャンル・業種
黄色の心理効果を活かすべき動画ジャンルと業種を紹介します。
「子ども向け・ファミリー」のコンテンツには、明るく楽しいイメージの黄色が最適です。おもちゃ、子ども服、ファミリーレストランの動画に適しています。
「クリエイティブ・デザイン」の業界では、創造性や革新を象徴する黄色が使えます。デザイン会社、広告代理店、アート関連の動画に効果的です。
「DIY・ホームセンター」関連では、工具や作業を連想させる黄色(黒との組み合わせ)がよく使われます。
「セール・値引き告知」でも、赤と同様に、黄色も「お得」「特価」を強調するのに効果的です。特に「黒×黄」の組み合わせは、注意を引く最強の配色として知られています。
動画編集での黄色の使い方
動画編集で黄色を効果的に使う具体的な方法を紹介します。
「強調・ハイライトとして」使うのが最も一般的です。テロップの一部を黄色にすることで、その部分を強調できます。白や黒を基調とした動画に黄色を入れると、非常に目立ちます。
「ポジティブな感情の演出に」使う方法もあります。明るい未来、成功、幸福感を伝えたい場面で、黄色いグラデーションやフィルターを使うと効果的です。
「警告・注意喚起に」使う場合、「ここ重要!」「注意してください」といったメッセージを黄色で表示すると、視聴者の注意を引きやすくなります。
黄色を使う際の注意点
黄色には、いくつかの注意点があります。
「可読性に注意」が必要です。黄色は明るいため、白い背景に載せると見えにくくなります。黄色のテロップには、黒い縁取りや暗い背景が必須です。
「安っぽく見える可能性」も考慮しましょう。黄色を多用すると、「チープ」「安売り」という印象を与えることがあります。高級感を出したい動画には不向きです。
「目の疲れ」にも注意してください。黄色は明るい色なので、大面積で使うと目が疲れます。アクセントカラーとして使う程度に留めましょう。
緑色(Green)──安らぎ・成長・環境を伝える色
緑は自然を象徴する色であり、安らぎと成長の両方を伝えることができます。
緑が与える心理的効果
緑は、人間にとって最も「目に優しい」色です。人間の目は緑の波長を最も効率的に処理でき、長時間見ていても疲れにくいとされています。
緑が与える主な心理効果は以下の通りです。「安らぎ・リラックス」として、緑は森や草原を連想させ、心を落ち着かせます。「成長・発展」のイメージもあり、植物の成長を連想させることから、ビジネスの成長や個人の成長を象徴します。「健康・自然」として、オーガニック、エコ、ヘルスケアを連想させます。「安全・許可」としても、信号の「進め」の色であり、「OK」「安全」というメッセージを伝えます。「お金・富」の象徴として、アメリカではドル紙幣が緑であることから、富や繁栄を連想させることもあります。
緑が最適な動画ジャンル・業種
緑の心理効果を活かすべき動画ジャンルと業種を紹介します。
「健康・ウェルネス」の業界では、健康、自然、オーガニックを連想させる緑は、サプリメント、健康食品、フィットネスの動画に最適です。
「環境・エコ」関連では、環境保護、サステナビリティ、再生可能エネルギーを扱う動画に緑は必須です。
「農業・食品(自然派)」の分野では、オーガニック野菜、自然派化粧品、ナチュラルフードの動画に緑が効果的です。
「金融(成長・投資)」の業界でも、資産の成長、投資のリターンを表現する際に緑が使われます。株価の上昇を緑で示すのは世界共通のルールです。
「不動産・住宅」関連では、快適な住環境、緑に囲まれた暮らしをアピールする際に緑が活用できます。
動画編集での緑の使い方
動画編集で緑を効果的に使う具体的な方法を紹介します。
「自然映像との組み合わせ」が最も効果的です。森、植物、草原の映像に緑のカラーグレーディングを施すことで、自然の美しさを強調できます。
「成長・ポジティブな変化の表現に」使う方法もあります。グラフが上昇する場面、ビジネスが成功する場面で緑を使うと、ポジティブな印象が強まります。
「リラックス・安らぎの演出に」使う場合、ヒーリング系の動画、瞑想、ヨガなどのコンテンツで緑系のカラーグレーディングを施すと、視聴者のリラックスを促せます。
緑を使う際の注意点
緑を使う際には、いくつかの注意点があります。
「彩度を高くしすぎない」ことが重要です。鮮やかすぎる緑(蛍光グリーン)は、人工的で安っぽい印象を与えます。自然で落ち着いた緑を選びましょう。
「赤との組み合わせは注意」が必要です。緑と赤は補色の関係にあり、強いコントラストを生みます。クリスマス感が出てしまったり、視覚的にうるさくなったりする可能性があります。
「ネガティブな緑の印象」にも注意しましょう。「青ざめた顔」「腐った食品」「嫉妬」など、緑にはネガティブな連想もあります。文脈によっては避けた方が良い場合もあります。
オレンジ(Orange)──親しみ・活力・楽しさを伝える色
オレンジは、赤の情熱と黄色の明るさを併せ持つ色です。親しみやすさとエネルギーを両立できる、使い勝手の良い色です。
オレンジが与える心理的効果
オレンジは、暖かみがありながらも赤ほど強烈ではない、バランスの取れた色です。
オレンジが与える主な心理効果は以下の通りです。「親しみやすさ・フレンドリー」として、オレンジは人懐っこい、親しみやすい印象を与えます。「活力・元気」のイメージもあり、エネルギッシュで前向きな印象を与えます。「食欲増進」の効果があり、赤と同様に、オレンジも食欲を刺激します。「創造性・冒険」を連想させることもあります。「コストパフォーマンス」として、「お買い得」「手頃な価格」という印象も与えます。Amazonのロゴがオレンジなのは、この効果を狙っています。
オレンジが最適な動画ジャンル・業種
オレンジの心理効果を活かすべき動画ジャンルと業種を紹介します。
「飲食・フード」の業界では、食欲を刺激するオレンジは、レストラン、カフェ、食品の動画に最適です。特に、温かみのある料理(焼き物、パンなど)との相性が良いです。
「EC・小売」の分野では、親しみやすさとお買い得感を伝えるオレンジは、オンラインショップの動画に効果的です。
「人材・求人」関連では、フレンドリーで活気のある職場をアピールする採用動画にオレンジが活用できます。
「旅行・レジャー」の業界では、冒険、楽しさ、ワクワク感を伝える動画にオレンジが適しています。
「子ども向け」のコンテンツでも、黄色と同様に、オレンジも明るく楽しい印象を与えるため、子ども向けコンテンツに使えます。
動画編集でのオレンジの使い方
動画編集でオレンジを効果的に使う具体的な方法を紹介します。
「暖かみ・親しみの演出に」使うのが効果的です。人物が登場する動画で、オレンジ系のカラーグレーディングを施すと、温かく親しみやすい印象になります。夕焼けのような色調が代表的です。
「CTAボタン・アクション喚起に」使う方法もあります。赤ほど強烈ではないものの、オレンジのCTAボタンも高いクリック率を示すことがあります。「フレンドリーに行動を促す」イメージです。
「ティール&オレンジ」というカラーグレーディング技法があります。映画でよく使われる「ティール(青緑)&オレンジ」の組み合わせは、肌の色を美しく見せながら、映画的な雰囲気を演出できます。
紫色(Purple)──高貴・神秘・創造性を伝える色
紫は、歴史的に「高貴」「特別」を象徴する色です。独自性や高級感を出したい場合に効果的です。
紫が与える心理的効果
紫は、赤と青を混ぜた色であり、両方の特性を持ちながらも独自の心理効果があります。
紫が与える主な心理効果は以下の通りです。「高貴・高級」として、歴史的に紫の染料は非常に高価だったため、王族や貴族だけが身につけることができました。この歴史が、現代でも「高級感」のイメージにつながっています。「神秘・スピリチュアル」のイメージもあり、紫は宗教、魔法、超自然的なものを連想させます。「創造性・芸術」として、独創的、革新的なイメージを与えます。「女性的」な印象もあり、特にラベンダーのような淡い紫は、女性向けの商品やサービスによく使われます。
紫が最適な動画ジャンル・業種
紫の心理効果を活かすべき動画ジャンルと業種を紹介します。
「美容・化粧品(高級ライン)」では、高級感と女性らしさを伝える紫は、ラグジュアリーな美容ブランドの動画に最適です。
「アート・クリエイティブ」の業界では、創造性と独自性を象徴する紫は、アーティスト、デザイナー、クリエイティブ系企業の動画に効果的です。
「スピリチュアル・ヒーリング」関連では、神秘的なイメージの紫は、瞑想、ヨガ、スピリチュアル系コンテンツに適しています。
「テクノロジー(革新的)」の分野でも、Twitch、Yahoo!など、IT企業でも紫をブランドカラーにしているところがあります。革新性を強調したい場合に使えます。
動画編集での紫の使い方
動画編集で紫を効果的に使う具体的な方法を紹介します。
「高級感の演出に」使うのが効果的です。ラグジュアリーな商品、プレミアムサービスの動画で、紫を基調としたカラーグレーディングを施すと、高級感が増します。
「神秘的・ドラマチックな雰囲気に」使う方法もあります。映画的な演出、ミステリアスな雰囲気を出したい場合に紫が活用できます。夜景やイルミネーションの映像に紫を足すと、幻想的な印象になります。
「女性向けコンテンツに」使う場合、淡い紫(ラベンダー)は、女性をターゲットとした動画に適しています。美容、ファッション、恋愛系コンテンツに効果的です。
紫を使う際の注意点
紫を使う際には、いくつかの注意点があります。
「好み分かれやすい」という点があります。紫は「好き」と「嫌い」がはっきり分かれる色です。万人受けを狙う動画には向かない場合があります。
「使いすぎると不自然」になることにも注意しましょう。紫は自然界にあまり存在しない色なので、多用すると人工的で不自然な印象を与えます。
「男性向けには注意」が必要です。紫は女性的なイメージが強いため、男性をメインターゲットとする動画では使い方に注意が必要です。
白・黒・グレー──無彩色が持つ力
色彩心理学では、白、黒、グレーなどの「無彩色」も重要な役割を果たします。
白が与える心理効果
白は「色がない」状態であり、純粋さ、清潔さ、シンプルさを象徴します。
白の主な心理効果は以下の通りです。「清潔・純粋」として、白は汚れがない状態を示し、清潔感や純粋さを連想させます。「シンプル・ミニマル」のイメージもあり、Apple製品のように、白を基調としたデザインは洗練されたミニマルな印象を与えます。「広がり・開放感」として、白は空間を広く見せる効果があります。
動画編集では、白い背景、白いテロップ、白いグラデーションなどを使うことで、クリーンでプロフェッショナルな印象を与えられます。特に、医療、テクノロジー、ミニマルなブランドの動画に適しています。
黒が与える心理効果
黒は、最も暗い色であり、高級感、力強さ、神秘性を象徴します。
黒の主な心理効果は以下の通りです。「高級・洗練」として、黒は高級ブランド、ラグジュアリー製品に多用されます。シャネル、プラダなど、ハイブランドのロゴは黒が多いです。「力・権威」のイメージもあり、黒は強さ、権威、プロフェッショナリズムを連想させます。「神秘・ドラマチック」な印象を与えることもできます。
動画編集では、黒い背景、黒いテキスト、シャドウの強調などを使うことで、重厚感や高級感を演出できます。ただし、黒を使いすぎると暗く重い印象になるため、バランスが重要です。
グレーが与える心理効果
グレーは、白と黒の中間であり、中立性、バランス、洗練を象徴します。
グレーの主な心理効果は以下の通りです。「中立・バランス」として、グレーは特定の感情を強く刺激せず、落ち着いた印象を与えます。「洗練・モダン」のイメージもあり、グレーを基調としたデザインは、洗練されたモダンな印象を与えます。「プロフェッショナル」な印象として、ビジネスの場面でグレーはプロフェッショナリズムを象徴します。
動画編集では、グレーは背景、サブテキスト、図解の基調色として使われます。主張しすぎず、他の色を引き立てる役割を果たします。
カラーグレーディングの実践テクニック

色彩心理学の知識を、実際のカラーグレーディング(色調補正)にどう活かすかを解説します。
カラーグレーディングとは
カラーグレーディングとは、動画の色調を調整して、意図した雰囲気や感情を演出する編集技術です。撮影時の色をそのまま使うのではなく、編集段階で色相、明度、彩度を調整し、動画全体のトーンを決定します。
カラーグレーディングは、大きく2つのステップに分かれます。「カラーコレクション」は、撮影時のホワイトバランスや露出の問題を修正し、「正しい色」に戻す作業です。「カラーグレーディング」は、修正した映像に対して、意図的に色調を加え、雰囲気を演出する作業です。
この記事で解説している色彩心理学は、主に後者のカラーグレーディングに活かされます。
業種別のカラーグレーディング設定例
業種ごとに、推奨されるカラーグレーディングの方向性を紹介します。
「コーポレート・ビジネス」の動画では、青みを少し強調し、彩度を抑えめにすると、信頼感とプロフェッショナリズムが出ます。コントラストは中程度に設定し、落ち着いた印象に仕上げます。
「飲食・フード」の動画では、暖色(オレンジ、黄色)を強調し、彩度を高めにすると、美味しそうな印象になります。特に料理の「湯気」や「ツヤ」が際立つように調整します。
「美容・ファッション」の動画では、肌の色がきれいに見えるよう、暖色を適度に足しつつ、彩度は高すぎないようにします。ハイライトを強調し、華やかさを演出します。
「自然・アウトドア」の動画では、緑と青を強調し、彩度を高めにすると、自然の美しさが際立ちます。コントラストを高めにすると、ドラマチックな印象になります。
「高級・ラグジュアリー」の動画では、彩度を抑えめにし、コントラストを高くすると、洗練された高級感が出ます。黒を締めて、シャドウを深くすることで重厚感が増します。
主要な編集ソフトでのカラーグレーディング
主要な動画編集ソフトでのカラーグレーディング機能を紹介します。
「Adobe Premiere Pro」では、Lumetriカラーパネルを使ってカラーグレーディングを行います。基本補正、クリエイティブ、カーブ、カラーホイールなど、詳細な調整が可能です。LUT(ルックアップテーブル)を適用することで、一発でプロフェッショナルな色調を得ることもできます。
「DaVinci Resolve」は、カラーグレーディングに特化したソフトとして知られています。無料版でも非常に高度なカラーグレーディング機能が使えます。プライマリー、セカンダリー、ノードベースの調整が可能で、プロの映画制作にも使われています。
「Final Cut Pro」では、カラーボードやカラーホイールを使ってカラーグレーディングを行います。直感的なインターフェースで、初心者でも扱いやすいです。
LUT(ルックアップテーブル)の活用
LUT(Look Up Table)とは、カラーグレーディングの設定をパッケージ化したファイルです。LUTを適用するだけで、一瞬で特定の色調を動画に反映できます。
LUTには、映画風、フィルム風、ヴィンテージ風、ティール&オレンジなど、様々なスタイルがあります。無料で配布されているLUTも多く、有料のハイクオリティなLUTパックも販売されています。
LUTを使う際の注意点として、LUTは「万能」ではありません。撮影条件によっては、LUTを適用しただけでは不自然な色になることがあります。LUT適用後に、明度や彩度を微調整する作業が必要です。
テロップ・図解の色使い
動画内のテロップや図解の色使いも、視聴者の印象に大きく影響します。
テロップの色の基本原則
テロップの色を決める際の基本原則を紹介します。
「可読性を最優先」にしましょう。どんなに良い色でも、読めなければ意味がありません。背景とのコントラストを十分に確保し、縁取りや影をつけて可読性を高めます。
「ブランドカラーとの一貫性」も重要です。企業動画の場合、テロップの色は企業のブランドカラーと合わせることで、統一感が生まれます。
「感情に合わせた色選び」を心がけましょう。伝えたいメッセージの感情に合わせて、テロップの色を選びます。ポジティブな内容は暖色、客観的な情報は青や白、警告は赤や黄色など。
強調・ハイライトの色使い
テロップの中で特定のキーワードを強調する際の色使いを紹介します。
「基本色+強調色」のルールを設定しましょう。例えば、基本のテロップは白、強調したいキーワードは黄色、という具合にルールを決めます。強調色は1動画につき1〜2色に絞ると、視聴者が混乱しません。
「補色を使った強調」も効果的です。青い背景に黄色の強調、緑の背景に赤の強調など、補色を使うと非常に目立ちます。ただし、目がチカチカするほどの強い補色は避けましょう。
「段階的な強調」として、最も重要なキーワードは大きく・色を変えて、次に重要なキーワードは色だけ変えて、という具合に、強調の度合いをつけることもできます。
図解・インフォグラフィックの配色
図解やインフォグラフィックを動画に入れる際の配色ルールを紹介します。
「色数を絞る」ことが基本です。図解に使う色は、3〜5色程度に絞りましょう。多すぎると見にくくなります。
「同系色でまとめる」方法があります。青系統だけで濃淡をつける、暖色系だけでまとめるなど、同系色でまとめると統一感が出ます。
「意味と色を対応させる」ことも重要です。ポジティブ=緑、ネガティブ=赤、中立=グレーなど、意味と色を一貫させると、視聴者が直感的に理解できます。
色覚多様性への配慮
すべての人が同じように色を認識しているわけではありません。色覚多様性(かつて「色盲」と呼ばれていた)に配慮した動画制作について解説します。
色覚多様性とは
色覚多様性とは、色の見え方が一般的な人と異なる状態を指します。日本では男性の約5%、女性の約0.2%が何らかの色覚多様性を持つと言われています。
最も多いのは「赤緑色覚多様性」で、赤と緑の区別が難しい状態です。例えば、赤と緑のグラフを見せても、両者の区別がつきにくい人がいます。
動画は不特定多数に見られるため、色覚多様性を持つ視聴者にも配慮した色使いが求められます。
配慮した色使いのポイント
色覚多様性に配慮した動画制作のポイントを紹介します。
「色だけに頼らない」ことが最も重要です。情報を伝える際、色だけでなく、形、パターン、テキストも併用しましょう。例えば、グラフで「増加=緑、減少=赤」だけでなく、「増加=緑+上向き矢印、減少=赤+下向き矢印」とすれば、色が区別できなくても理解できます。
「赤と緑の組み合わせを避ける」ことも有効です。最も多い色覚多様性は赤緑タイプなので、赤と緑を対比させる配色は避けましょう。代わりに、青とオレンジ、青と黄色など、区別しやすい組み合わせを使います。
「コントラストを十分に取る」ことで、明度の差を大きくすれば、色相が区別できなくても見分けがつきやすくなります。
「シミュレーターで確認する」方法もあります。Adobe PhotoshopやFigmaには、色覚多様性をシミュレートする機能があります。完成した動画を、これらのツールで確認することで、問題に気づくことができます。
業種別・目的別の色使い総まとめ
ここまで解説した内容を、業種別・目的別にまとめます。自社の動画制作の参考にしてください。
業種別の推奨カラー
各業種で推奨される色と、その理由を一覧にします。
「金融・保険」では、青(信頼・安定)、紺色(権威・専門性)、緑(成長・繁栄)が推奨されます。避けるべき色は、赤(リスク・損失を連想)、黄色(安っぽさ)です。
「IT・テクノロジー」では、青(信頼・先進性)、白(クリーン・シンプル)、紫(革新性)が推奨されます。最近は、緑(成長)やオレンジ(親しみやすさ)を使う企業も増えています。
「医療・ヘルスケア」では、青(清潔・信頼)、緑(健康・安心)、白(清潔・純粋)が推奨されます。避けるべき色は、赤(血・危険を連想)、黒(死を連想)です。
「飲食・フード」では、赤(食欲増進・温かみ)、オレンジ(食欲増進・親しみ)、黄色(明るさ・元気)が推奨されます。避けるべき色は、青(食欲減退)、紫(不自然)です。
「美容・ファッション」では、ピンク(女性らしさ)、紫(高級感)、白(清潔感)、黒(洗練)が推奨されます。ターゲットの性別・年齢によって調整が必要です。
「教育・スクール」では、青(知性・信頼)、緑(成長)、オレンジ(親しみ・活力)が推奨されます。子ども向けは黄色やオレンジ、大人向けは青や緑が適しています。
「不動産・住宅」では、緑(快適・自然)、青(信頼・安定)、茶色(木・温かみ)が推奨されます。高級物件は黒やグレーで洗練さを演出します。
目的別の推奨カラー
動画の目的別に、推奨される色を紹介します。
「ブランディング・認知向上」が目的の場合、企業のブランドカラーを一貫して使用することが重要です。色の選択よりも、一貫性が重要です。
「信頼構築・安心感の醸成」が目的の場合、青を基調とし、落ち着いたトーンに仕上げます。彩度は控えめにし、プロフェッショナルな印象を与えます。
「購買促進・コンバージョン」が目的の場合、CTAには赤やオレンジを使い、行動を促します。緊急性を出したい場合は赤、親しみやすさを出したい場合はオレンジが効果的です。
「感情喚起・エンゲージメント」が目的の場合、伝えたい感情に合わせた色を選びます。興奮なら赤、安らぎなら緑、楽しさならオレンジや黄色など。
「情報伝達・教育」が目的の場合、可読性を最優先し、青や白を基調とします。図解やグラフは、意味と色を対応させ、理解しやすくします。
よくある失敗と回避策
最後に、動画の色使いでよくある失敗と、その回避策をまとめます。
失敗1:色を使いすぎる
最も多い失敗は、色を使いすぎて「カラフルで落ち着かない」動画になることです。
回避策は「3色ルール」を守ることです。メインカラー、サブカラー、アクセントカラーの3色に絞り、それ以外の色は使わないようにします。
失敗2:ブランドカラーと合っていない
企業動画なのに、企業のブランドカラーと関係ない色使いをしてしまう失敗です。
回避策は、動画制作前にブランドガイドラインを確認することです。使用できる色、できない色を明確にしてから編集を始めましょう。
失敗3:可読性が低い
オシャレさを追求するあまり、テロップが読みにくくなる失敗です。
回避策は、常に「コントラスト」を意識することです。背景と文字の明度差を十分に取り、必要に応じて縁取りや背景ボックスを追加します。
失敗4:文化的な配慮が足りない
グローバル向けの動画で、特定の文化でネガティブな意味を持つ色を使ってしまう失敗です。
回避策は、ターゲット地域の色の意味を事前にリサーチすることです。特に、白、黒、赤、黄色は、文化によって意味が大きく異なります。
失敗5:感情と色がミスマッチ
伝えたい感情と、使っている色が合っていない失敗です。例えば、落ち着きを伝えたいのに赤を多用する、緊急性を出したいのに青を使うなど。
回避策は、この記事で解説した色彩心理学の基本を理解し、意図した感情に合った色を選ぶことです。
まとめ──色で視聴者の心を動かす
この記事では、動画編集における色彩心理学の活用方法を詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
第一に、色は視聴者の感情に直接働きかける。言語化される前に、無意識レベルで処理される色の情報は、視聴者の印象形成に決定的な影響を与えます。
第二に、各色には固有の心理効果がある。青は信頼、赤は情熱、黄色は注目、緑は安らぎ、オレンジは親しみ、紫は高貴──これらの効果を理解し、意図的に活用しましょう。
第三に、業種・目的に合わせた色選びが重要。金融には青、飲食には赤やオレンジ、美容には紫やピンクなど、業種に適した色があります。動画の目的(信頼構築、購買促進など)によっても、最適な色は変わります。
第四に、カラーグレーディングで全体のトーンを統一する。撮影した映像をそのまま使うのではなく、カラーグレーディングで意図したトーンに仕上げることで、プロフェッショナルな印象になります。
第五に、色覚多様性に配慮する。色だけに頼らず、形やテキストも併用することで、すべての視聴者に情報が伝わる動画を作りましょう。
色彩心理学は、一朝一夕でマスターできるものではありません。しかし、この記事で学んだ基本を意識しながら動画を編集していくことで、徐々に「色で感情をコントロールする」スキルが身についていきます。ぜひ、次の動画編集から実践してみてください。
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