SEO/MEO対策

地域ポータルサイト(食べログ、ホットペッパー等)とMEOの順位相関

序章:「MEO成功=ポータルサイト不要」は大間違い

MEO対策(Googleマップ集客)に力を入れるオーナー様の多くが、最終目標として掲げるのが「脱・媒体」です。

「毎月数万円〜数十万円もかかるホットペッパーや食べログの掲載費を削減し、自社でコントロールできるGoogleマップとホームページだけで集客したい」
その経営判断は、コストカットの観点からは正解です。

しかし、「だからポータルサイトの契約を切り、ページを削除してもらおう」とまで考えているなら、それはMEO的に大間違いです。

Googleはポータルサイトを「答え合わせ」に使っている

Googleの検索エンジンは、あなたの店が「実在しているか」「人気があるか」「情報は正確か」を確認するために、ネット上のあらゆる情報を巡回しています。
その中でも、Googleが特に信頼を置いているのが、「食べログ」「ホットペッパービューティー」「楽天トラベル」といった大手ポータルサイトのデータです。

もし、あなたがポータルサイトから完全に情報を消してしまうと、Googleは「あれ?この店、信頼できる大手サイトのどこにも載っていないぞ?本当に実在する人気店なのか?」と疑いを持ち、マップの掲載順位を落とすリスクがあります。

MEOで勝ち続けるためには、ポータルサイトを「集客の主役」から引きずり下ろしつつも、「MEOを支える脇役(踏み台)」として利用し続ける戦略が必要です。


第1章:ポータルサイトがMEO順位を上げる2つのメカニズム

なぜ、ポータルサイトに掲載されていることがGoogleマップの順位アップ(MEO)につながるのか。
そこには、Googleのアルゴリズムにおける明確な2つの理由があります。

①最強のサイテーション(言及)効果

前回の記事でも触れましたが、GoogleはWeb上での「サイテーション(店名・住所・電話番号の記述)」の数を評価しています。

ここで重要なのは、「誰が言及しているか」です。
個人の無名なブログで100回紹介されるよりも、日本を代表する巨大サイトである「食べログ」や「ホットペッパー」の中に、正確な店舗情報が1つ掲載されている方が、Googleからの信頼度(Authority)は何倍も高くなります。

ポータルサイトにページがあるということは、Googleに対して「この店は、審査のある大手メディアにも掲載されている、社会的に信用のある店です」という強力な身分証明書を提示しているのと同じ効果があります。

②ドメインパワーの恩恵(被リンク)

SEOの世界には「ドメインパワー(ドメインの強さ)」という概念があります。
数値化(0〜100)すると、一般的な個人店のホームページは「10〜20」程度ですが、大手ポータルサイトは桁違いです。

【主要ポータルサイトのドメインパワー(目安)】
  • YouTube: 99(神レベル)
  • 食べログ: 91(最強クラス)
  • ホットペッパービューティー: 88(超強力)
  • 楽天トラベル: 90(超強力)

ポータルサイトの店舗ページには、必ず「公式ホームページ」のリンクを貼る欄があります。
ここに自社サイトのURLを登録することで、「ドメインパワー90の超巨大サイトからリンクをもらう」という、個人では通常不可能なSEO効果を得ることができます。

これにより、自社サイトの評価が上がり、連携しているGoogleマップの順位も引っ張り上げられるのです。


第2章:Googleマップに表示される「Web上のレビュー」

ポータルサイトの影響力は、裏側のアルゴリズムだけではありません。
Googleマップの検索結果画面(ユーザーの目に見える場所)にも、ポータルサイトの情報は表示されています。

ナレッジパネルに出る「他サイトの評価」

Googleでお店を検索した際、店舗情報の詳細(ナレッジパネル)の中ほどに、以下のような表示を見たことがありませんか?

ウェブ上のレビュー

4.2/5 Hot Pepper Beauty – 120票
3.8/5 Facebook – 50票

Googleは、自社の口コミだけでなく、ホットペッパーやFacebookなどの外部サイトの口コミスコアも収集し、まとめて表示しています。
ユーザーはこれを見て「Googleでは星4.5だけど、ホットペッパーでも星4.2なら、本当に良い店なんだな」と確信を得ます。

ポータルサイトの「点数」はMEO順位に関係する?

よくある質問ですが、「食べログの点数が3.0だと、MEOも下がりますか?」という懸念。
結論から言うと、直接的な影響はほぼありません。

Googleは「外部サイトでの点数」そのものをランキング要因にはしていません(媒体によって採点基準が違いすぎるため)。
Googleが重視しているのは、点数の中身よりも「多くの口コミが集まっている(話題になっている)」という事実と、「そこに含まれるキーワード(美味しい、丁寧、など)」です。

したがって、ポータルサイトの点数が低くても気にする必要はありませんが、「口コミが0件」よりは「件数がある」方が、MEO的にはプラスに働きます。

第3章:「有料プラン」と「無料プラン」でMEO効果は変わるか?

ポータルサイトの営業担当者はこう言います。
「プランを下げると露出が減って、Google検索でも表示されなくなりますよ」

これは半分正解で、半分間違いです。
ポータルサイト内での順位は確かに下がりますが、MEO(Googleマップ)に対する効果は、有料プランでも無料プランでも基本的に変わりません。

Googleは「いくら払っているか」なんて見ていない

Googleのクローラーは、そのページが「月額10万円のプラチナプラン」なのか「月額0円の無料プラン」なのかを判別していません。
見ているのは、以下の情報が存在するかどうかだけです。

  • 店名、住所、電話番号(NAP)が記載されているか
  • 公式サイトへのリンク(被リンク)があるか
  • 口コミや写真などのコンテンツがあるか

これらの情報は、多くのポータルサイトにおいて無料会員(店舗準会員など)でも掲載・編集が可能です。
つまり、MEOの「被リンク・サイテーション効果」を得るためだけであれば、無理して高い掲載費を払い続ける必要はないのです。

ただし「ネット予約連携(Reserve with Google)」には注意

一つだけ例外があります。
Googleマップには「席を予約する」ボタン(Googleで予約)が表示される機能がありますが、これはポータルサイトや予約台帳システムの有料契約と紐付いているケースが多いです。

もし、ポータルサイトを有料から無料に切り替えたことで、Googleマップ上の「予約ボタン」が消滅してしまうなら、それはMEO(というよりコンバージョン率)にとってマイナスです。
プラン変更をする前に、現在の予約ボタンがどのシステム(ポータルサイト経由か、別契約の予約システムか)経由で表示されているかを確認してください。


第4章:業種別・ポータルサイトとの付き合い方(共存戦略)

業種によって、ポータルサイトの影響力や依存度は異なります。
ここでは主要な3業種における、MEO時代に合わせた賢い使い分け(コスト削減案)を提示します。

飲食店(食べログ/Retty):無料プランで維持し、予約はGoogleへ

飲食店の場合、食べログやぐるなびの有料プランを解約し、「無料の店舗会員」に移行するのがトレンドです。

  • ポータル側の設定: 無料会員としてページは残す(削除しない)。公式情報の編集権限は維持する。
  • 導線設計: ネット予約機能はポータル(送客手数料がかかる)を使わず、Googleマップや自社HP(TableCheckやトレタなど)へ誘導する。

これにより、ポータルサイトのSEOパワー(被リンク)は維持しつつ、ランニングコストをゼロにし、手数料のかからない直予約を増やすことができます。

美容室(ホットペッパー):SEO用と割り切る

美容業界において、ホットペッパービューティーの影響力は絶大です。
予約管理システム(サロンボード)として依存している場合、完全無料化は難しいかもしれません。

しかし、新規集客の軸をMEOに移行できれば、掲載プランを「最下位プラン」まで落とすことは可能です。
「ホットペッパー内での露出」は減りますが、「Googleマップからの流入」でカバーできます。
重要なのは、ホットペッパーのページを削除せず、Googleからの「信頼の担保(被リンク元)」として残しておくことです。

宿泊・観光(TripAdvisor/楽天):インバウンド向けに必須

ホテルや旅館の場合、OTA(楽天トラベル、じゃらん、Booking.comなど)は絶対に外せません。
なぜなら、Googleマップのホテル検索結果には、これらのOTAの価格が横断的に表示される(Googleホテル広告)仕組みになっているからです。

ここで情報が出てこないと、Googleマップ上で「空室なし(価格不明)」と扱われてしまいます。
宿泊業に関しては、MEOとOTAは「切っても切れない関係」であると認識し、在庫連携システム(サイトコントローラー)を使って常に最新情報を同期させておく必要があります。


第5章:絶対にやってはいけない「情報の不一致」

ポータルサイトを「無料プラン」や「放置」にする際に、最も犯しやすいミスがあります。
それは、情報の更新忘れ(NAPの不一致)です。

Googleは「矛盾」を最も嫌う

例えば、Googleマップでは「営業時間:17:00〜23:00」となっているのに、放置された食べログのページでは「17:00〜24:00」のままになっていたとします。

GoogleのAIはこう考えます。
「Googleの情報と、信頼できる食べログの情報が食い違っている。どちらが正しいのか分からない。
誤った情報をユーザーに提供するわけにはいかないから、この店の検索順位を下げて、表示回数を減らそう

これが、ポータルサイトの情報を放置することで起きる「隠れペナルティ」です。

「メニュー価格が違う」が招くクレーム

MEO順位だけでなく、リアルなクレームにも繋がります。
Googleマップを見て来店したお客様が、古い情報のままのポータルサイトを見て「こっちのサイトにはビール300円って書いてあったのに、なんで500円なんですか?」と言い出すケースです。

ポータルサイトのプランを下げたとしても、「営業時間」「定休日」「価格改定」などの重要情報が変わった時は、面倒でも必ず全てのサイトを更新してください。
それがMEOの順位を守り、お客様の信頼を守る最低限のルールです。

終章:ポータルサイトは「集客の柱」から「MEOの踏み台」へ

ここまで、大手ポータルサイトとMEO(Googleマップ)の相関関係について解説してきました。

最後に、これからの時代の「正しい予算配分」について提言します。
かつては、売上の5%〜10%をポータルサイトの掲載費に充てるのが当たり前でした。
しかし今は、その予算を少しずつ「自社の資産(Googleマップ・ホームページ・SNS)」へシフトしていくべき過渡期です。

【これからのポータルサイト活用 3ヶ条】

  1. 解約ではなく「減額」せよ:
    ページ自体を消すと、Googleからの信頼(被リンク・サイテーション)も消える。「無料プラン」や「最安プラン」でページを維持するのが正解。
  2. 情報は「マスターデータ」と同期せよ:
    「更新していないから古い情報のまま」は許されない。営業時間の変更などは、全媒体で一斉に行うこと。
  3. 集客の主導権を取り戻せ:
    ポータルサイトはあくまで「MEO順位を上げるための踏み台(ツール)」と割り切る。浮いた予算で、プロカメラマンに料理写真を撮ってもらったり、MEO対策ツールを導入したりする方が、長期的には資産になる。

Googleは、ポータルサイトを「敵」とは見ていません。
「情報の正しさを裏付けるための証人」として見ています。

だからこそ、私たちもポータルサイトを敵視して切り捨てるのではなく、
「今まで高い掲載費でお世話になったけど、これからは無料で被リンクをもらうSEOパートナーとして付き合っていこう」
という、したたかな戦略を持ってください。

この「柔よく剛を制す」スタンスこそが、コストを抑えながら地域一番店を目指すための、最短ルートになるはずです。

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