はじめに:名詞で「探し」、形容詞で「選ぶ」
MEO対策において、多くの店舗オーナーは「名詞」に固執します。
「居酒屋」「美容室」「歯医者」「ジム」……。
確かにこれらは検索ボリュームが大きいメインキーワードです。しかし、ユーザーの立場になって考えてみてください。
スマホで「居酒屋」とだけ検索して、上位に出た店に何も考えずに行くでしょうか?
おそらく違います。多くのユーザーは、そこからさらに自分の「今の気分」や「懐事情」、「利用シーン」に合わせて、言葉を足して絞り込みます。
- 「給料日前だから、安い 居酒屋がいい」
- 「久しぶりのデートだから、おしゃれな 居酒屋がいい」
- 「大事な話があるから、静かな 居酒屋がいい」
この時に追加される「安い」「おしゃれ」「静かな」といった言葉こそが「二次キーワード(形容詞)」です。
名詞(業種)は「市場」を表しますが、形容詞(ニーズ)は「決定打」を表します。
二次キーワードで検索しているユーザーは、すでに「どんな店に行きたいか」が明確であるため、その条件に合致さえすれば、即座に来店(予約)につながる極めて成約率の高いユーザーなのです。
第1章:二次キーワードが持つ「フィルタリング機能」
なぜ二次キーワード対策が重要なのか。それは、Googleマップ上での戦いが「表示回数の奪い合い」から「質の高いマッチング」へとシフトしているからです。
1. ユーザーの「失敗したくない」心理
現代の消費者は、失敗(ハズレの店を引くこと)を極端に嫌います。
そのため、検索段階で「フィルタリング(選別)」をかけようとします。
例えば「美容室」だけで検索すると、1,000円カットから高級サロンまで全てが表示されてしまいます。
しかし、「美容室 メンズ 得意」や「美容室 髪質改善 専門店」と入力すれば、自分に合わない店を最初から除外できます。
この「形容詞・修飾語」に対応できていない店は、たとえ名詞単体で順位が高くても、クリックされずにスルーされる運命にあります。
2. ビッグワードの「圏外」でも、複合なら「1位」になれる
「新宿 居酒屋」というキーワードは、大手チェーンやポータルサイトがひしめく超レッドオーシャンです。ここで個人の飲食店が上位表示されるのは至難の業です。
しかし、視点を変えてみましょう。
- 「新宿 居酒屋 日本酒が豊富」
- 「新宿 居酒屋 タバコが吸える」
- 「新宿 居酒屋 座敷あり」
このように形容詞や特徴(二次キーワード)を掛け合わせると、競合数はガクンと減ります。
「全体での1番」を目指すのではなく、「その条件を求めている人にとってのオンリーワン」になること。
これが、中小店舗がMEOで勝つための鉄則です。
第2章:4つのカテゴリー別「勝てる形容詞」リスト
では、具体的にどのような形容詞が検索されているのでしょうか。
業種によって異なりますが、大きく4つのカテゴリーに分類できます。
自社の強みがどこに当てはまるか、チェックしてみてください。
① 価格・コスパ系(Price)
最も検索ボリュームが多いカテゴリーです。安さだけでなく「お得感」も含みます。
| キーワード例 | 安い、格安、激安、コスパ、無料(相談/駐車場)、飲み放題、食べ放題、学割、クーポン |
| 対策のポイント | 単に「安い」と書くだけでなく、「〇〇円〜」と具体的な価格を明示することでクリック率が上がります。 |
② 雰囲気・空間系(Atmosphere)
利用シーン(デート、接待、一人など)に直結する重要なキーワードです。
| キーワード例 | おしゃれ、個室、静かな、隠れ家、レトロ、落ち着く、賑やか、絶景、夜景、インスタ映え |
| 対策のポイント | 文字だけでなく、「写真」との一致が不可欠です。「おしゃれ」と書いてあるのに写真が雑然としていれば、逆に信頼を損ないます。 |
③ 品質・評価系(Quality & Status)
失敗したくないユーザーや、本物を求めるユーザーが使うキーワードです。
| キーワード例 | 美味しい、絶品、有名、人気、老舗、本場の、専門(店)、痛くない(医療系)、丁寧な |
| 対策のポイント | 自称するよりも、「口コミ(第三者の声)」の中でこれらの言葉が使われていることが重要です。 |
④ 利便性・状況系(Convenience)
「今すぐどうにかしたい」という緊急性の高いニーズです。
| キーワード例 | 深夜(営業)、早朝、24時間、駅近、駐車場あり、電源/Wi-Fiあり、子供連れ、ペット可、喫煙可 |
| 対策のポイント | Googleビジネスプロフィールの「属性(詳細情報)」設定を漏れなく行うだけで、検索に引っかかるようになります。 |

第3章:「形容詞」はどこで見つけるのか?
「うちは『おしゃれ』な店だ」「『安い』のが売りだ」
オーナーであるあなたがそう思っていても、お客様が別の言葉で検索していたら、そのMEO対策は空振りに終わります。
重要なのは、「売り手の言葉」ではなく「買い手の言葉」を使うことです。
1. 口コミ(レビュー)こそが形容詞の宝庫
最も確実な答えは、すでに投稿されている「お客様の口コミ」の中にあります。
Googleマップやグルメサイトのレビューを読み返してみてください。
- 店側の認識:「健康的な定食屋」
- 客の声:「ボリューミーで満腹になる」「家庭的な味」
この場合、MEOで狙うべき形容詞は「健康的」よりも、「ボリューミー」や「家庭的」である可能性が高いです。
お客様が感動して使った言葉こそが、次の見込み客が検索するキーワードになります。
2. 共起語(サジェスト)検索ツールの活用
Google検索窓にキーワードを入れた時に表示される予測変換(サジェスト)もヒントになります。
「(業種名) あ」〜「(業種名) わ」まで入力して調べるのも手ですが、「ラッコキーワード」などの無料ツールを使えば、その業種と一緒に検索されている形容詞を一括で取得できます。
これらを見ることで、「世の中の人が、その業種に対してどんな形容詞を求めているか(=市場のニーズ)」を把握できます。
第4章:形容詞をGoogleに認識させる実装テクニック
狙うべき形容詞が決まったら、それをGoogleビジネスプロフィール(GBP)に実装します。
ただし、やり方を間違えるとGoogleのガイドライン違反(ペナルティ)になるため注意が必要です。
【重要】ビジネス名(店名)には絶対に入れない
最もやってはいけない間違いが、店名へのキーワード詰め込みです。
- NG例:「新宿で一番安い居酒屋 〇〇水産」
- OK例:「〇〇水産」
正式名称以外の修飾語をビジネス名に入れることは、Googleのガイドラインで禁止されています。
一時的に順位が上がることもありますが、通報されればアカウント停止(垢BAN)のリスクがあります。形容詞は店名以外でアピールしましょう。
説明文と投稿への自然な盛り込み方
ビジネス説明文(750文字)の中であれば、形容詞を自由に盛り込めます。
ただし、単語の羅列はNGです。文章として自然に組み込みます。
【良い実装例】
「当店は、学生さんでも通いやすい安い価格設定と、女性のお客様に好評のおしゃれで落ち着く内装が自慢です。深夜2時まで営業しており、個室も完備しているため、様々なシーンでご利用いただけます。」
このように書くことで、GoogleのAIは「この店は『安い』『おしゃれ』『深夜』などの属性を持っている」と理解し、それぞれの検索に対して表示させるようになります。
「写真」で形容詞を証明する
「おしゃれ」や「絶景」といった視覚的な形容詞は、文字情報の100倍、写真が重要です。
- おしゃれ: インテリアのディテール、照明の雰囲気、盛り付けの美しさ。
- 安い: メニュー表(価格がはっきり見えるもの)、ボリューム感のある料理。
- 個室・静か: 部屋の全体像、扉が閉まる様子、席間隔の広さがわかる写真。
Googleの画像解析AIは優秀です。写真そのものからも「高級感」や「カジュアルさ」を読み取っています。
狙いたい形容詞とマッチした写真をアップロードし続けましょう。
第5章:「安い」vs「高級」ブランディングの分岐点
最後に、どの形容詞を選ぶかという「戦略」の話をします。
特に「価格」に関する形容詞は、集まる客層を決定づけるため慎重に選ぶ必要があります。
安易に「安い」を使うリスク
「安い」「格安」というキーワードは検索ボリュームが膨大です。
しかし、ここを対策して上位表示されると、当然ながら「価格にシビアな顧客」が集まります。
薄利多売のビジネスモデルなら正解ですが、もしあなたが「質の高いサービスを適正価格で提供したい」と考えているなら、「安い」というキーワードで集客するのは逆効果です。
クレームが増え、リピート率が下がり、現場が疲弊する原因になります。
高単価店こそ「排除の論理」で形容詞を使う
逆に、高単価な店や専門性の高い店は、あえて客層を絞り込む(来ないでほしい客を弾く)ために形容詞を使います。
- 「完全予約制」
- 「会員制」
- 「本格懐石」
- 「自費診療専門」
これらのキーワードは検索数こそ少ないですが、入力するユーザーは「お金を払ってでも良いサービスを受けたい」という意識が高い層です。
MEO対策とは、単にアクセスを増やすことではありません。「自社の価値観に合った顧客」とマッチングすることです。
あなたの店にとって、理想のお客様が使いそうな「形容詞」はどれでしょうか?
それを突き詰めることが、利益率の高い経営につながります。

終章:「どんな店か」を一言で言えるか
ここまで、MEO対策における「二次キーワード(形容詞)」の重要性について解説してきました。
最後にお伝えしたいのは、これは単なる検索テクニックの話ではないということです。
「どの形容詞で検索されたいか」を決めることは、「あなたの店は、お客様にどう記憶されたいか」を決めることと同義です。
- 「あの美味しい店」
- 「あのおしゃれな店」
- 「あの安い店」
- 「あの親切な店」
もし、あなたの店が「ただの居酒屋」や「普通の美容室」として認識されているなら、MEOでの戦いは苦しいものになります。
しかし、特定の形容詞(強み)とセットで認知されれば、競合比較の泥沼から抜け出すことができます。
あなたの店を表す「最強の形容詞」を一つ決めてください。
そして、Googleマップの説明文、投稿、写真、すべての情報をその形容詞に向けてチューニングしてください。
お客様が友人にあなたの店を紹介する時、「〇〇駅にある、すごく××な店だよ」と、あなたが狙った通りの形容詞を使ってくれたなら。
その時こそ、あなたのMEO対策、そしてブランディングは完成したと言えるでしょう。